浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第二百一話

 俺は解散後、ひとまず自室に戻る事にした。

 俺が負った傷は大した事はないが、疲労感が半端なく、少々車の運転をするのがきつかった。

 車を降りてからエレベーターで自室がある階まで上り、歩いて扉を開ける。

 一号に鍵を預けた故、勿論俺は持っていないし、鍵も開いていた。

 

「一号、ただいま……」

 

 俺は多分今も寝ているであろう一号に声を掛ける。

 だが、玄関で見たものに思わず目の色を変えた。

 

「……!」

 

 一号が血を流して倒れていた。

 誰かに刺された……という感じではない。

 身体に外傷はなく、ベルトをした状態で口から血を吐いて倒れている。

 

「一号! しっかりしろ、一号!」

 

 幸い、浅くはあったが呼吸はまだしていた。

 だが身体がやや冷たい……。

 俺達は彼が風邪を引いたと聞いて、無理をせず休むよう告げて出て行った。

 だが……どう考えてもこれは風邪なんかじゃない。 

 

「急いで連れてかないと……」

 

 俺は彼を背負って、来た道を走って引き返す。

 

※※※

 

 車に乗せてから、俺は一号を遥の所へと運び。

 寝台の上に寝かせてから、検査を行う。

 

「……」

「どうですか?」

 

 遥の表情は険しく……俺の問いかけに対して、顔も向けずにこう告げた。

 

「この状態は厳しいな。もう一か月も持たないだろう……」

「そんな……」

「お前の方は、まだ何ともないのか?」

 

 遥に問いかけられて、少しばかり自分も不安になる。

 取り敢えず今の所は……。

 

「取り敢えず俺は大丈夫です」

「……。こいつはお前の使っている身体よりも前に作られた。お前の身体にも、もしかしたら近いうちに変化が来るかも知れない」

「……やっぱり、死ぬんですか? こいつも……俺も……」

「そういう事になるかもな……」

 

 遥が諦めた表情を浮かべる。

 

「美咲にこの事は伝えるつもりなのか?」

「……」

 

 俺は少し迷ってから言う。

 

「あいつは俺達の寿命が短い事を知っていた。でも、絶対に俺を死なせないと言っていたんです。だから、この事を知ったら、絶対に優先順位を見失うかも知れない。自分で決めた事も守れないなど許せないって……」

「まあ、そうだろうな」

「だから、戦いが終わるまでは何としてもこの事は隠します。あいつの為にも……」

「……そうか」

 

 遥が静かにそう答える。

 間を開けてから、もう一度口を開く。

 

「私の知っている限り、どんな方法を使おうとも……今はその肉体の寿命を本来のそれより長くする事は出来ない。必死に探している美咲には悪いが、それが現実だ」

「……」

「ただ、今死なずに済む方法ならなくはない」

 

 


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