浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第二十話

 

 数日後。

 蘇我高校科学部部室。

 

「精が出ているみたいだな、遥先公」

「……」

 

 明人の言葉に、返事はおろか、振り向きすらしない遥。

 遥は今、培養器の前で……それに繋がれたパソコンを操作している。

 培養器の中には、赤ん坊の姿が。

 

「その赤ん坊は何だ?」

「そうだな……二週間後の決戦の隠し玉、とでも言っておこう」

 

 明人はその言葉に眉を潜める。

 

「そんな話は聞いていないし、それは俺が負けると思っているという事か?」

「勘違いするな。元々私は、お前達を利用する為に来たに過ぎない。お前達の勝ち負けなど……私にはどうでも良い事だ。もしお前が負ければ、その時はこいつを使ってでも美咲……いや、誰かが白状しなければ全てを殺すかな……」

 

 光のない瞳で、遥は明人に告げた。

 

「先公、アンタが復讐とやらを成し遂げる為にここに来たのは知ってるさ。でも……俺はこれ以上、あいつらに卑怯な戦い方をさせたくない。正々堂々戦って勝ってこそ、他校を支配する価値がある。ここは俺達の学校だ……これ以上ここの生徒達をお前の卑怯なやり方に染めさせるな」

「……」

 

 遥は黙っていた。

 

「ちぃーっす!」

 

 そこに別の人物が現れる。

 軽いノリの女の声。

 

「一体何の用だ……前田(まえだ)」

「別にぃ? 面白そうだから来ただけだよぉ」

 

 ギャル風の女子生徒……前田は蘇我高校の中でも珍しい生徒と言える。

 腕っぷしはそこそこ良いが、気まぐれで協調性がない。

 統率や礼儀を重んじる明人が苦手なタイプだ。

 

「このベルトで怪人に変身出来るんだっけぇ?」

 

 前田が手にとったのは、ホースドライバー。

 全てのベルトの原型たるアーミードライバーと同じく汎用性があるベルトで、馬と常に一心同体で戦う騎兵型の怪人になる事が出来る。

 

「ここの部長でもある副会長ぉから聞いたけどぉ、今六角美咲とかって奴と戦ってるんでしょぉ? ヤらせて欲しいなぁ~」

 

 手を合わせてお願いされるが……明人は嘆息して。

 

「許可出来ん。あいつと山内には俺と俺が選んだ奴に戦ってもらう。お前の出番はない」

「ケチねぇ。でもぉ……そんなの私に関係ないからぁ」

 

『HORSE DRIVE READY?』

 

「変~身☆」

 

『COMPLETE』

 

 背後から実体のない馬が走ってくる。

 前田はジャンプしてからその馬に乗り込む。

 

「えへ☆」

 

 馬が実体化し、前田の身体が女性騎士の姿へと変わる。

 

「悪いがそっちもその気なら……」

「足利」

 

 変身しようとする明人を、遥が止める。

 

「面白い……前田、六角美咲を倒す自信があるのか?」

「分かんないけどぉ、ちょっと面白そうだなぁって」

「良いだろう。やれるだけやると良い」

「りょぉかぁい☆」

 

 前田は変身解除してから、スキップしつつ部屋を出た。

 

「何てことをしてくれたんだ」

「私の役に立つなら、何でも利用する。それだけの話。それに……もし私の探す突然変異体が美咲ではなく、お前達の中にいるなら……私はお前達の生徒だろうと容赦なく殺す」

「……」

 

 明人は拳を震わせる。

 

「どうやら……力づくでお前の野望を止めるしかないようだな」

 

『SWORD DRIVE READY?』

「……」

 

 端末を取り付ける。

 空から降りて来た剣の柄を握り、そこから明人の身体を怪人へと変化させた。

 

「それはこちらの台詞だ、足利」

 

 遥も立ち上がる。

 指揮官らしき帽子を被っている兵士……の形の端末が取り付けられたドライバーを着け、端末を操作。

 

『ROAD DRIVE READY?』

 

「変身」

 

 端末を取り付ける。

 

『COMPLETE』

 

 王者の証らしきマントが空から降り立ち、遥が纏う。

 様々な勲章を付けた軍服が、そのマントから光を伸ばし遥の身体を覆う。

 指揮官の怪人が……その場に姿を現す。

 

「さあ、始めようか」

 

 


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