浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第二百九話

 

 美咲も中々筋が良く、俺が負けそうになった所がいくつもあった。

 だが何とか黒星を作らず、十戦目を終える。

 

「また負けましたわーッ!」

「よしッ!」

 

 俺は年甲斐もなくガッツポーズを決めた。

 昔勝った時と同じように。

 

「もう一戦やるか?」

「いえ……今回ばかりは負けを認めますわ……」

 

 美咲ががっくりしながらそう呟く。

 

「なんだつまんないなあ……」

 

 俺は少し調子に乗った態度で返す。

 

「でも次は負けませんわよ。いつまでもそんな態度させませんわよ!」

「悪いけどこれだけは負けるつもりはないぞ」

 

 美咲と俺は笑みを浮かべてそう答えた。

 その瞬間、ぐーと腹の音が鳴る。

 

「腹減ったな」

「そうですわね」

「まあ見れば分かると思うが俺はノープランだ。お前何食べたい?」

 

 堂々とノープランを宣言してから、美咲が腕を組んで告げる。

 

「久しぶりに大食いしたいですわね」

「大食いて……太ったら戦いづらくなるんじゃないか?」

「ふ、太ったりしないよう気を付けますわよ!」

「どっちかにしろや……」

「う、うるさいですわ!」

 

 美咲に背中を押される。

 

「お、おい!」

「早い時間帯に食べれば太りませんわ! だから早く!」

「えーッ! ちょっちょっ……」

 

※※※

 

 美咲が一度行ってみたかったという大食い専門店で、今度は大食い勝負。

 昔は大食いだったという美咲にはやはり勝てず、今日二度行った勝負は一勝一敗の引き分けとなった。

 他に何かないかとも考えたが、もう夜七時。

 そろそろ遥が提示したタイムリミットだ。

 

「ふーっ、明日から特訓をハードにしないとリバウンドしそうですわ」

 

 妙に恐れているようだ。

 まるで過去に一度激太りした事あるかのように。

 

「なんですの? 私が太った所とか考えましたの?」

「いや何も言ってねえだろ」

「ホントですの~?」

「んまあ過去に激太りでもした事あるのかなとかは考えたけど……」

「ないないない! ありませんわ! それは違いますわ! その記憶を絶版になさい!」

 

 激しく動揺する美咲。

 

「はいはい……」

「まったく……こう見えても太らないようにちゃんとしてるんですのに……」

 

 美咲は頬を膨らませてそうぼやく。

 

「ところで、この後どうするつもりですの?」

「家に帰るよ。明日から特訓で、しばらく帰れそうもないしな。それに、死んだら好きな事も出来ないかも知れないから、今日のうちにやりたい事をやっておくよ」

「そうですのね」

「ああ」

 

 何とかバレずに済みそうだ。

 俺は悟られないように、彼女の家の近くで唐突にこう告げた。

 

「そろそろ解散しようか。明日から大変だろうし、お前も休んだ方が良いだろ」

「……待ってくださいな」

 

 

 


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