浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第二百十話

「私、まだ聞いてませんわよ。貴方が何で今日私を誘ってくれたのか」

「……」

 

 心の中を見ようとするような態度で、美咲は俺を見据える。

 それでも何とか、最後まで誤魔化すのをやめない。

 

「戦いで生き残れるかどうかも分かんないし、もし死んだら今日が最後の自由時間だろ。その時間をお前と過ごすのに選んだ。それだけで十分だろ?」

「今日が最後……私がいる限りそんな事になんてさせませんわ。自分の身体が動く限り……いや、動かなくても、自分のしたい事に妥協なんてしませんわよ。私がそういう人なのは、裕太さんが知ってる筈ですわ」

「……」

 

 普通の人がこう言ったら、間違いなく暴論だ。

 だけど……彼女が言うと説得力があり過ぎる。

 だって実際に、彼女は何度も死んだ。

 本当に動かなくなった時も、仲間の力ありきとは言え、蘇った。

 その時確信した。

 彼女は死なない。そして、絶対に何があっても諦めない。

 でも……今不安なのは彼女の事ではない。

 自分自身。

 

「もしかして、寿命の事……気にしてますの?」

「……」

 

 俺はそう言われて、図星を突かれたような顔しか出来なかった。

 何とか誤魔化そうとしたが、もう遅い。

 

「そうですのね。でも、どうして急に? 遥さんに、そう言われたんですの?」

「……それもある。けど……」

 

 俺は諦めて、白状した。

 これ以上、彼女に嘘を吐き続けるなど無理だった。

 

「昨日、一号が調子悪いって言って来なかったろ?」

「……」

「俺、解散してマンション戻った時に見たんだ。血を吐いて気絶していたあいつを」

「っ……!」

「遥先生の所に連れてって、俺は先生から聞かされたよ。一号の寿命はあと一か月もないってさ」

「そんな……」

「俺はお前がどういう奴か知ってる。死なせないと決めた俺や一号がそんな状況に立たされているって分かったら、お前は全力でそれを何とかしようとする。一週間後の戦いの準備すら放り出してな」

「……」

「これから一号の身体を冷凍保存するつもりだ。俺の身体に一号の脳波を入れてから、そうする事になってる」

「そう、ですのね」

 

 美咲はそう呟いてから逆に聞く。

 

「でも、裕太さんはどうするつもりですの? この戦いが終わった後……」

「分からない。本当なら戦いが終わってから、お前と話し合って決めるつもりだった」

「……」

「すまない。全部隠そうとして。でも……」

 

 もう一度言い訳しようとする前に、美咲が口を開く。

 

「私こそ、すまなかったですわ。だって、二人がそんな目に遭っている事に……私は気付く事が出来なかった。本当なら貴方がそう告げる前に、気付くべきだった」

「……」

「二人とも、現状維持では時間がありませんのよね?」

「ああ……」

「裕太さん、私からもお願いしますわ。冷凍保存を」

「……!」


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