浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第二百十一話

「悔しいですけど、今の私じゃ……一年も持たない寿命を何とかしてあげるのは難しいですわ」

 

 美咲は悔しそうに涙を流す。

 

「ごめん……」

「貴方の教師になりたいという夢、それに一号さんの菫さんと共にいたいという夢、すぐに叶えたかったですわ」

「確かに……冷凍保存されて復活した後に、これまでと同じように生きられるかどうかなんて分からないしな」

 

 正式な手続きをするわけではなく、個人で行うわけだから失踪したとして扱われるかも知れない。

 後々の事を考えると……今の自分が辛くなる。

 

「でも私は、裕太さんに生きて欲しいですわ。裕太さんは、どう思いますの? そういうリスクを背負っても、これから先も生きたいですの?」

「……」

 

 辛いと思う。

 でも……その時は。

 

「そう聞いてくれるなら、お前は絶対俺を支えようとするだろ?」

「当たり前ですわ」

「でも……それならお前があんまり歳取らないうちの方がよさそうだな。婆さんになってから蘇っても、俺がお前の介護する事になりそうだし」

「確かにそうですわね。では……十年以内、とかどうですの?」

「十年……」

 俺が今二十三歳、ただ十年経っても冷凍保存の影響で歳は取らない。

 勿論精神的にも。

 美咲は四月十九日生まれと聞いたから十八歳。

 その十年後は二十八歳。

 

「その時は、お前は俺より大人になってる事を祈るよ」

「それ、どういう意味ですの?」

「まあまあ、深く考えるなよ」

「いーえ! 貴方の事だから絶対馬鹿にしてますわ!」

「バレたか」

「まったく……」

 

 美咲が頬を膨らませてから、急に「ところで……」と聞く。

 

「ん?」

「一号さんの身体を冷凍するのは、この後ですの?」

「ああ。今日中に遥先生の研究所でやるらしいから、この後行くつもりだ」

「……」

 

 美咲は考え込んでから言う。

 

「決めましたわ。私も行きますわ」

「えっ?」

「私のお供は裕太さんだけじゃない。一号さんだって、貴方と同じくらい大切ですのよ。脳波移動する前に、まずはそれを隠していた事をお説教ですわ」

「ま、まあ程々にな……」

「さあ、行きますわよ」

「お、おい待てって!」

 

 あいつは多分研究所がどこにあるのかも分からないにも関わらず、俺を置いてくように走っていく。

 ついてこいと言わんばかりに。

 十年後……蘇った後どんな人生を送れるか、不安はまだ沢山あるけど、今大切なのはこの後の戦いで生き残る事だ。

 でも……。

 

「お前なら、その約束をどんな手を使っても守ろうとする。そうだろ? 美咲……」

 

 今俺に出来るのは、ひたすら努力を続ける彼女を信じる事だけだ。


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