浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー 作:門矢心夜
「悔しいですけど、今の私じゃ……一年も持たない寿命を何とかしてあげるのは難しいですわ」
美咲は悔しそうに涙を流す。
「ごめん……」
「貴方の教師になりたいという夢、それに一号さんの菫さんと共にいたいという夢、すぐに叶えたかったですわ」
「確かに……冷凍保存されて復活した後に、これまでと同じように生きられるかどうかなんて分からないしな」
正式な手続きをするわけではなく、個人で行うわけだから失踪したとして扱われるかも知れない。
後々の事を考えると……今の自分が辛くなる。
「でも私は、裕太さんに生きて欲しいですわ。裕太さんは、どう思いますの? そういうリスクを背負っても、これから先も生きたいですの?」
「……」
辛いと思う。
でも……その時は。
「そう聞いてくれるなら、お前は絶対俺を支えようとするだろ?」
「当たり前ですわ」
「でも……それならお前があんまり歳取らないうちの方がよさそうだな。婆さんになってから蘇っても、俺がお前の介護する事になりそうだし」
「確かにそうですわね。では……十年以内、とかどうですの?」
「十年……」
さ
俺が今二十三歳、ただ十年経っても冷凍保存の影響で歳は取らない。
勿論精神的にも。
美咲は四月十九日生まれと聞いたから十八歳。
その十年後は二十八歳。
「その時は、お前は俺より大人になってる事を祈るよ」
「それ、どういう意味ですの?」
「まあまあ、深く考えるなよ」
「いーえ! 貴方の事だから絶対馬鹿にしてますわ!」
「バレたか」
「まったく……」
美咲が頬を膨らませてから、急に「ところで……」と聞く。
「ん?」
「一号さんの身体を冷凍するのは、この後ですの?」
「ああ。今日中に遥先生の研究所でやるらしいから、この後行くつもりだ」
「……」
美咲は考え込んでから言う。
「決めましたわ。私も行きますわ」
「えっ?」
「私のお供は裕太さんだけじゃない。一号さんだって、貴方と同じくらい大切ですのよ。脳波移動する前に、まずはそれを隠していた事をお説教ですわ」
「ま、まあ程々にな……」
「さあ、行きますわよ」
「お、おい待てって!」
あいつは多分研究所がどこにあるのかも分からないにも関わらず、俺を置いてくように走っていく。
ついてこいと言わんばかりに。
十年後……蘇った後どんな人生を送れるか、不安はまだ沢山あるけど、今大切なのはこの後の戦いで生き残る事だ。
でも……。
「お前なら、その約束をどんな手を使っても守ろうとする。そうだろ? 美咲……」
今俺に出来るのは、ひたすら努力を続ける彼女を信じる事だけだ。