浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第二百十二話

 俺と美咲は遥と一号がいる研究所に向かい、冷凍保存の準備が整うのを待っていた。

 

「裕太……」

 

 掠れた声で、一号が俺と美咲を見て呟く。

 俺は少し笑って告げた。

 

「悪い、バレちまった」

「そうなる予感はしていたがな……。美咲は大丈夫なのか?」

「大丈夫なわけ、ありませんわ。もっと早く告げていれば、私は貴方の傍にずっといましたのに……」

「……そんな事をしたら、二号の奴に負けてしまう。お前は知るべきではなかったんだ」

「……」

 

 美咲は拳を握る。

 俺が肩に手をポンと置いてから一号に近付き、もう一度問いかける。

 

「一号、本当に良いんだな? 俺と一緒で」

「……ああ。これから戦う時も、もう一度冷凍保存される時も、そして蘇る時も一緒だ」

「……なんか、そう言われると心細くなくなるな」

「俺もそう思う」

 

 そんな会話の後、遥に言われる。

 

「準備が整った。脳波を裕太の身体に入れてくれ」

「分かりました」

 

 俺は返事をしてから、掌を一号に向ける。

 あの時……一号の命を奪おうとした時と同じように。

 でも今度はナイフの先のような殺意ではなく、暖かいお風呂やお布団のように、優しく包み込む雰囲気をイメージして向ける。

 暖かいお布団の中に包むように、一号の脳波を優しく自分の中に包み込むイメージを頭に浮かべた。

 

『裕太……』

 

 俺の手から光が放たれ、やがて俺の中に入った一号の声が聞こえる。

 それと同時に、俺の中で何かが見えた。

 一号が、これまで美咲や俺達と過ごした時間、それに……彼の過去。

 

「一号、いや……上杉健斗(うえすぎ けんと)で良いのか? これで確信したよ。お前が悪い奴なんかじゃないってこと」

『……その名前で呼ばなくて良い。俺が罪を犯したのは事実だ』

「……」

『そんな俺でも、お前を支える事が出来て嬉しいぞ』

「……俺もだ」

 

※※※

 

 遥が一号の身体に処置を行い、ものの一時間で冷凍処置を完了させる。

 衰弱し、治療不可能とされた肉体はまるでマグロのように氷漬けにされ、カプセルの中に保存された。

 遥が手袋を外して、保存室の扉を閉めて俺と美咲の前へ。

 

「えーっと、裕太か?」

「はい」

「終わったぞ」

「今、見ました」

「……」

 

 遥が目を閉じる。

 

「あとは、仲間達の未来に賭ける他ないだろう」

「……」

「あの……遥さん」

 

 美咲が口を開く。

 

「美咲?」

「私、頂点に立ちたい立ちたいと言ってる割に……具体的に何になりたいのか、言ってませんでしたわね」

「……」

「この場に、裕太さんもいる事ですし……私がついさっき決めた事を言いますの」

「ああ」

 

 美咲は息を吸って告げる。

 

「私、科学者になりますの。この戦いが終わったら勉強して、遥さんや菫さんくらい頭が良くなれるように勉強しますの。そしていつかは、裕太さんを助ける方法を見つけますわ」

「美咲……」

「ですから遥さん、この戦いが終わったら……私のその夢に協力して欲しいですの。私に色々教えてくださいな」

 

 美咲は真剣な目で遥を見据えた。

 遥も静かに笑みを浮かべてから答える。

 

「……当たり前だ」

「遥さん……ありがとうございますわ」

「ただし、この道に進むのは容易じゃないぞ」

「お供の為ですもの。どんな困難でも、乗り越える覚悟ですわ」

 

 美咲の言葉に、遥はこくりと頷いた。


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