浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー 作:門矢心夜
俺と美咲は遥と一号がいる研究所に向かい、冷凍保存の準備が整うのを待っていた。
「裕太……」
掠れた声で、一号が俺と美咲を見て呟く。
俺は少し笑って告げた。
「悪い、バレちまった」
「そうなる予感はしていたがな……。美咲は大丈夫なのか?」
「大丈夫なわけ、ありませんわ。もっと早く告げていれば、私は貴方の傍にずっといましたのに……」
「……そんな事をしたら、二号の奴に負けてしまう。お前は知るべきではなかったんだ」
「……」
美咲は拳を握る。
俺が肩に手をポンと置いてから一号に近付き、もう一度問いかける。
「一号、本当に良いんだな? 俺と一緒で」
「……ああ。これから戦う時も、もう一度冷凍保存される時も、そして蘇る時も一緒だ」
「……なんか、そう言われると心細くなくなるな」
「俺もそう思う」
そんな会話の後、遥に言われる。
「準備が整った。脳波を裕太の身体に入れてくれ」
「分かりました」
俺は返事をしてから、掌を一号に向ける。
あの時……一号の命を奪おうとした時と同じように。
でも今度はナイフの先のような殺意ではなく、暖かいお風呂やお布団のように、優しく包み込む雰囲気をイメージして向ける。
暖かいお布団の中に包むように、一号の脳波を優しく自分の中に包み込むイメージを頭に浮かべた。
『裕太……』
俺の手から光が放たれ、やがて俺の中に入った一号の声が聞こえる。
それと同時に、俺の中で何かが見えた。
一号が、これまで美咲や俺達と過ごした時間、それに……彼の過去。
「一号、いや……上杉健斗(うえすぎ けんと)で良いのか? これで確信したよ。お前が悪い奴なんかじゃないってこと」
『……その名前で呼ばなくて良い。俺が罪を犯したのは事実だ』
「……」
『そんな俺でも、お前を支える事が出来て嬉しいぞ』
「……俺もだ」
※※※
遥が一号の身体に処置を行い、ものの一時間で冷凍処置を完了させる。
衰弱し、治療不可能とされた肉体はまるでマグロのように氷漬けにされ、カプセルの中に保存された。
遥が手袋を外して、保存室の扉を閉めて俺と美咲の前へ。
「えーっと、裕太か?」
「はい」
「終わったぞ」
「今、見ました」
「……」
遥が目を閉じる。
「あとは、仲間達の未来に賭ける他ないだろう」
「……」
「あの……遥さん」
美咲が口を開く。
「美咲?」
「私、頂点に立ちたい立ちたいと言ってる割に……具体的に何になりたいのか、言ってませんでしたわね」
「……」
「この場に、裕太さんもいる事ですし……私がついさっき決めた事を言いますの」
「ああ」
美咲は息を吸って告げる。
「私、科学者になりますの。この戦いが終わったら勉強して、遥さんや菫さんくらい頭が良くなれるように勉強しますの。そしていつかは、裕太さんを助ける方法を見つけますわ」
「美咲……」
「ですから遥さん、この戦いが終わったら……私のその夢に協力して欲しいですの。私に色々教えてくださいな」
美咲は真剣な目で遥を見据えた。
遥も静かに笑みを浮かべてから答える。
「……当たり前だ」
「遥さん……ありがとうございますわ」
「ただし、この道に進むのは容易じゃないぞ」
「お供の為ですもの。どんな困難でも、乗り越える覚悟ですわ」
美咲の言葉に、遥はこくりと頷いた。