浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第二百十三話

 美咲から家に来るように誘われ、研究所から遠い距離を車で移動中、俺の脳内で一号……健斗が話しかけてきた。

 

『裕太』

「なんだ? 健斗」

『その名を呼ばんで良いと、さっき言ったばかりだろう?』

「でも本名分かったんだし、もう一号呼びじゃなくてもよくないか?」

『……好きにしてくれ』

「んじゃあ健斗、なんだ?」

『お前の記憶や心をさっき覗いた。勿論昨日今日の出来事も全てな』

「いきなりだな……んで、それがどうしたんだよ」

『お前やはり美咲の事が好きだな?』

 

 キキーッ!!

 

「っぶね。おい、変な事言うなよ。そんなわけないだろ?」

『まあ心を覗かなくとも、俺と融合する前の最後の一日に彼女との時間を選んだんだ。大体の人が察するだろうな』

「俺としてはそんなつもりないんだぞ。ただ……」

『なんだ?』

「俺も分かんないよ。てか、健斗はどうなんだよ。菫さんとはどんな感じだったんだ?」

『……』

「なんだよ」

『それこそ、俺の口から言わせるな。見たいなら記憶を覗いてみろ』

「お前今口ないだ

『ほいっ』

「のわっ!」

 

 身体の所有権を取られてしまった。

 

「ほら、今からやるんだな」

『危ない健斗、前見ろ前!』

「え? うわあッ!」

 

 健斗が急ブレーキで車を止める。

 

「ペーパードライバーだったな、俺」

『危ないから運転中に変わるのだけはやめろよな』

「分かった分かった」

 

 健斗が引っ込んで俺と変わった。

 

「まったく……てかそれ言うなら、美咲も今日はおかしかったぞ」

『どういう事だ?』

「俺と遊ぶだけだってのにお洒落して、その上眼鏡まで選ばせて。なんか前までなら考えられないって言うか……」

『彼女もお前を好きという可能性が

「いやでもないな」

 

 それなら俺をこき使うわけないしな。

 

「てか……まだ寝てるな」

『そうだな』

 

 あんな無茶苦茶な運転されても寝てるとか。

 普段の戦いの時に見せる強さというか覇気を感じないというか……やっぱり寝顔も綺麗というか。

 

「……」

『どうした?』

「いや……なんつーかさ。俺達、俺が二十三で、お前が確か……」

『上杉健斗としては二十五歳だな』

「そうそう。んでこいつは十八だ……言いたい事は分かるよな?」

『……』

「俺ら、なんつーか情けないよな。いい歳して、女子高生に守ってもらえなきゃここまで来れなかったなんてさ」

『ああ……』

「俺達色々あるけど、正直この借りだけはどう返したらいいか分かんねえや」

『……俺もだ』

 

 健斗が笑みを浮かべたような気がした。 

 

「生き残ったら考えようぜ」

『ああ……』

 

 そして俺はもう一度アクセルを踏もうとしたが。

 

「あのーすみません、お兄さん?」

「はい」

「さっきから一人で喋ってるの見えたし、そこにいるの女子高生だよね?」

「……あ」

「ちょっと怪しいから署まで来てもらっていい?」

 

 なんでそーなるの?

 

『任せた』

「逃げんな」


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