浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー 作:門矢心夜
誰も走らない道路を、やや俯きながら運転する遥。
菫がどこにいるかは分からないが、まずは彼女がいた筈の研究所へ。
信号もお構いなしに、アクセルを踏み続け……進んでいたその時。
「!!」
突如、何者かが車の目の前に現れ……遥は急ハンドルでそれを回避。
電柱にぶつかる前に何とかブレーキで止めて、一応ロードドライバーを装着し。
『COMPLETE』
変身してから外へ。
警察の検問の可能性もあるかも知れないが、今回ばかりはそうだとしても強行突破する。
無論殺してでも。
「死にたくなければそこをどけ。私は急いでいるんだ」
その言葉に対し返って来たのは……。
「ママ……」
自分の一番大切な者の、泣きそうな声。
「え……嘘だろ……」
「ママ、ナンデ? ナンデヴィーダヲシンジテクレナイノ!?」
※※※
「……ヴィーダ」
「ヴィーダ、ゼッタイアイツニカツ! パパヲコロサセタヤツモ、ママヲキズツケタヤツモ、ヴィーダガタオシテオコッテアゲル!」
「……良いんだ。ヴィーダがそうする必要はない。それに……完成したアトミックの強さは、設計した私が一番よく知っている。それをあの強さの者が使っている今、勝ち目はほぼないに等しい。それを菫に強化などされてみろ……それでもお前は倒せるのか? 奴を……」
「デモ、ソノタメニママガヒトヲコロスナンテ……ダメダヨ。ソンナコトシタラ、ソノヒトガパパヤユウタヲコロサセタノトオンナジニナルンダヨ!」
「倒せるのかと聞いているんだ!」
遥はグングニルにそう叫ぶ。
「元々私は罪を犯した人間だ。そんな人間がいくら罪を重ねようと……罪人である事に変わりはないんだ。こんな事をしたって、あの子は喜ばない。分かってるさ。でも……お前を生み出さなければ、大勢の人を巻き込まなければ、その上で菫を止めなければ……私の気が済まなかった。私はそういう奴なんだ。自分の感情の為だけに、その子が何を欲しているかすら考えず……罪のない学生を巻き込んで、お前を作り出した……罪人なんだ」
「……ママ」
「……」
「ナンデソンナニ、ジブンガワルイッテキメツケルノ? マエニモヴィーダ、イッタ。ママハクルシカッタカモシレナイケド、ヴィーダハパパノカタキヲウツタメニウマレタ。デモソレダケジャナイヨ。ヴィーダハママノササエニナリタイ。ママガツライノハ、ヴィーダガイチバンワカッテルカラ。ダカラ……コレイジョウジブンノテヲヨゴサナイデ……。ママノツライキモチハ、ヴィーダモイッショニセオッテアゲルカラ」
「ダメだ!」
遥はそう叫ぶ。
「ヴィーダは、山内成音がいる。その優しさは彼女や、これから仲良くなる人間に使うべきだ」
「ママモイル! ダカラ……コッカラサキハイカセナイ!」
グングニルは槍を構える。
それを見た遥が呟く。
「どうしても行かせないというのか?」
「ドウシテモ、ドウシテモダヨ!」
「……分かった。ヴィーダ」
「エ……」
「私は意地でも、お前達を守る為に手を汚す。その為なら、お前相手でも戦う」
遥は剣を取り出す。
グングニルも後ずさらずに、少し躊躇いながらだが槍を構えた。
「お前も私を止める気なら、全力でくるんだ。私は恐らくお前には勝てない。だが死ぬまで、私は……自分の償いを諦めない」
「……」
「はあっ!」
動かないグングニルに向かって、遥は地を蹴って駆け出す。