浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第二百二十六話

 誰も走らない道路を、やや俯きながら運転する遥。

 菫がどこにいるかは分からないが、まずは彼女がいた筈の研究所へ。

 信号もお構いなしに、アクセルを踏み続け……進んでいたその時。

 

「!!」

 

 突如、何者かが車の目の前に現れ……遥は急ハンドルでそれを回避。

 電柱にぶつかる前に何とかブレーキで止めて、一応ロードドライバーを装着し。

 

『COMPLETE』

 

 変身してから外へ。

 警察の検問の可能性もあるかも知れないが、今回ばかりはそうだとしても強行突破する。

 無論殺してでも。

 

「死にたくなければそこをどけ。私は急いでいるんだ」

 

 その言葉に対し返って来たのは……。

 

「ママ……」

 

 自分の一番大切な者の、泣きそうな声。

 

「え……嘘だろ……」

「ママ、ナンデ? ナンデヴィーダヲシンジテクレナイノ!?」

 

※※※

 

「……ヴィーダ」

「ヴィーダ、ゼッタイアイツニカツ! パパヲコロサセタヤツモ、ママヲキズツケタヤツモ、ヴィーダガタオシテオコッテアゲル!」

「……良いんだ。ヴィーダがそうする必要はない。それに……完成したアトミックの強さは、設計した私が一番よく知っている。それをあの強さの者が使っている今、勝ち目はほぼないに等しい。それを菫に強化などされてみろ……それでもお前は倒せるのか? 奴を……」

「デモ、ソノタメニママガヒトヲコロスナンテ……ダメダヨ。ソンナコトシタラ、ソノヒトガパパヤユウタヲコロサセタノトオンナジニナルンダヨ!」

「倒せるのかと聞いているんだ!」

 

 遥はグングニルにそう叫ぶ。

 

「元々私は罪を犯した人間だ。そんな人間がいくら罪を重ねようと……罪人である事に変わりはないんだ。こんな事をしたって、あの子は喜ばない。分かってるさ。でも……お前を生み出さなければ、大勢の人を巻き込まなければ、その上で菫を止めなければ……私の気が済まなかった。私はそういう奴なんだ。自分の感情の為だけに、その子が何を欲しているかすら考えず……罪のない学生を巻き込んで、お前を作り出した……罪人なんだ」

「……ママ」

「……」

「ナンデソンナニ、ジブンガワルイッテキメツケルノ? マエニモヴィーダ、イッタ。ママハクルシカッタカモシレナイケド、ヴィーダハパパノカタキヲウツタメニウマレタ。デモソレダケジャナイヨ。ヴィーダハママノササエニナリタイ。ママガツライノハ、ヴィーダガイチバンワカッテルカラ。ダカラ……コレイジョウジブンノテヲヨゴサナイデ……。ママノツライキモチハ、ヴィーダモイッショニセオッテアゲルカラ」

「ダメだ!」

 

 遥はそう叫ぶ。

 

「ヴィーダは、山内成音がいる。その優しさは彼女や、これから仲良くなる人間に使うべきだ」

「ママモイル! ダカラ……コッカラサキハイカセナイ!」

 

 グングニルは槍を構える。

 それを見た遥が呟く。

 

「どうしても行かせないというのか?」

「ドウシテモ、ドウシテモダヨ!」

「……分かった。ヴィーダ」

「エ……」

「私は意地でも、お前達を守る為に手を汚す。その為なら、お前相手でも戦う」

 

 遥は剣を取り出す。

 グングニルも後ずさらずに、少し躊躇いながらだが槍を構えた。

 

「お前も私を止める気なら、全力でくるんだ。私は恐らくお前には勝てない。だが死ぬまで、私は……自分の償いを諦めない」

「……」

「はあっ!」

 

 動かないグングニルに向かって、遥は地を蹴って駆け出す。


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