浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー 作:門矢心夜
グングニルは追いつめられていた。
それもその筈、遥の攻撃を躱す事なく全て受け……反撃一つせずに遥が諦めるのを待つ。
「……ッ!」
遥の一撃に、グングニルは大きく吹き飛ばされ……背中から地面に叩きつけられる。
それでも……反撃はしない。
「戦え、戦わないなら……早くそこを退いてくれ!」
「ママ、アキラメル。ヴィーダガトオスノヲ、アキラメル!」
そう言って、グングニルはもう一度立ち上がった。
槍を構えず、遥の放つ攻撃をもう一度受けようとする。
「いい加減にしろ……」
遥は拳を放つ。
だが。
「……ッ!」
その一撃は当てられなかった。
「そんな……ッ! えいッ!」
遥はもう一度振るう。
だけど、当たらない。
「……!」
声を殺して、最後の一撃を振るう。
普通の人間に放てば、心臓を貫くであろう一撃。
それは……グングニルの胸の前で、止まる。
いや、止めたのは遥だ。
「出来ない……」
「……」
さっきまでは当てられたのに、遥にはもう拳を振るう事すら出来ず……ついには自ら変身を解除した。
「ダメだ。ダメな筈だ。私がヴィーダを生み出したのは、あの子を殺した奴を、菫を倒す為……。彼女がそれに逆らうなら、私は殺してでも止めるべきなんだ……なのに、何故……私には出来ない」
「……ママ」
「やめてくれ。その呼び方をするな……身体が動かない。もう一度、もう一度ッ!」
そう呟きながらベルトを取り出し、装着する。
バックルから端末を取り出し、開こうとした。
しかし……端末はポロリと自分の手元から落ちる。
ロードドライバーが、カシャッと音を立てて地面に叩きつけられ、コロコロと地面を転がっていく。
「……ッ!」
「……」
グングニルはそれに対し、無言でバックルを操作。
変身を解除した。
遥が目を見開いて、それに対して告げる。
「何の真似だ……」
「ヴィーダ、ワカル。ママ……モウタタカエナイ。ダッテ、ママモヴィーダノコト」
「……」
「ママニヴィーダタオセナイ、ソレ……ワカッテタ。ダカラ、ハンゲキシナカッタ」
「じゃあ……私はどうすれば良い……。お前を倒せないなら、私はどうやって菫を止めれば良い……? 私のせいなんだ。こんな状況を生み出したのは、自分の弱さなんだ」
「ヴィーダ、ツヨクナル。ダッテ……ヴィーダハソノタメニ、パパノカタキヲトルタメニウマレタカラ」
「……ヴィーダ」
そう呟き、抱き着いて涙を流そうとしたその時。
『……DRIVE READY?』
ドライバーの音が聞こえ、その方向を向く。
すると……。
既に剣の怪人・改へと変身していた何者かが、遥とヴィーダに剣を向けていた。
「お前達は……!」