浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第二百二十九話

 グングニルは追いつめられていた。

 それもその筈、遥の攻撃を躱す事なく全て受け……反撃一つせずに遥が諦めるのを待つ。

 

「……ッ!」

 

 遥の一撃に、グングニルは大きく吹き飛ばされ……背中から地面に叩きつけられる。

 それでも……反撃はしない。

 

「戦え、戦わないなら……早くそこを退いてくれ!」

「ママ、アキラメル。ヴィーダガトオスノヲ、アキラメル!」

 

 そう言って、グングニルはもう一度立ち上がった。

 槍を構えず、遥の放つ攻撃をもう一度受けようとする。

 

「いい加減にしろ……」

 

 遥は拳を放つ。

 だが。

 

「……ッ!」

 

 その一撃は当てられなかった。

 

「そんな……ッ! えいッ!」

 

 遥はもう一度振るう。

 だけど、当たらない。

 

「……!」

 

 声を殺して、最後の一撃を振るう。

 普通の人間に放てば、心臓を貫くであろう一撃。

 それは……グングニルの胸の前で、止まる。

 いや、止めたのは遥だ。

 

「出来ない……」

「……」

 

 さっきまでは当てられたのに、遥にはもう拳を振るう事すら出来ず……ついには自ら変身を解除した。

 

「ダメだ。ダメな筈だ。私がヴィーダを生み出したのは、あの子を殺した奴を、菫を倒す為……。彼女がそれに逆らうなら、私は殺してでも止めるべきなんだ……なのに、何故……私には出来ない」

「……ママ」

「やめてくれ。その呼び方をするな……身体が動かない。もう一度、もう一度ッ!」

 

 そう呟きながらベルトを取り出し、装着する。

 バックルから端末を取り出し、開こうとした。

 しかし……端末はポロリと自分の手元から落ちる。

 ロードドライバーが、カシャッと音を立てて地面に叩きつけられ、コロコロと地面を転がっていく。

 

「……ッ!」

「……」

 

 グングニルはそれに対し、無言でバックルを操作。

 変身を解除した。

 遥が目を見開いて、それに対して告げる。

 

「何の真似だ……」

「ヴィーダ、ワカル。ママ……モウタタカエナイ。ダッテ、ママモヴィーダノコト」

「……」

「ママニヴィーダタオセナイ、ソレ……ワカッテタ。ダカラ、ハンゲキシナカッタ」

「じゃあ……私はどうすれば良い……。お前を倒せないなら、私はどうやって菫を止めれば良い……? 私のせいなんだ。こんな状況を生み出したのは、自分の弱さなんだ」

「ヴィーダ、ツヨクナル。ダッテ……ヴィーダハソノタメニ、パパノカタキヲトルタメニウマレタカラ」

「……ヴィーダ」

 

 そう呟き、抱き着いて涙を流そうとしたその時。

 

『……DRIVE READY?』

 

 ドライバーの音が聞こえ、その方向を向く。

 すると……。

 既に剣の怪人・改へと変身していた何者かが、遥とヴィーダに剣を向けていた。

 

「お前達は……!」


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