浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー 作:門矢心夜
遥とヴィーダが見た剣の怪人・改は一人ではなく、集団だ。
その十数体。
誰が変身しているのかも分からないが、二号か菫のどちらかが仕向けたのは明白だ。
「……ヴィーダ」
「ママ、サガッテテ」
ヴィーダがそう告げながら、もう一度バックルを腰に取り付ける。
成音から盗んできたフレイムシャワードライバーも取り付け、変身。
「ダイヘンシン」
『CHANGE FLAME SHOWER』
仮面ライダーグングニル フレイムシャワーフォームへと姿を変えて、ゾンビのようにゆっくりと向かってくる剣の怪人・改の集団へと歩いていく。
「ウギャアッ!」
中にいるのは人なのか、それすら怪しい剣の怪人・改がグングニルへと剣を振るう。
「ハアッ!」
その剣を、手にしている槍で何とか受け止めるグングニル。
だが……。
「オモイ……ッ!」
グングニルは重そうに、これまた何とか弾き飛ばす。
〇×女子高生徒会が使用していた量産型よりも、スペックが上がっているのか。
あるいは、オリジナルと同等の性能であるのか。
それに……。
「……! ヴィーダ、脳波の正体は分かるか!?」
「マッテ!」
グングニルがそう叫んでから、武器を弾いた相手に追い打ちを掛けていく。
何とか一体目にファイナルドライブを放ち、燃える槍を強く叩きつけて吹き飛ばす。
「エイッ!」
吹き飛ばされた剣の怪人・改が変身解除される。
すると……。
「ナカミ……アノトキタオシタミンナトオナジ。ソレ、ホカノミンナモ……」
また不完全な、戦闘用の人工脳波が使われている可能性は遥も想定していた。
だが、問題は脳波の入れ物……肉体だ。
操られた一般人ではない。
というか……普通の人間ですらない。
ヴィーダや、裕太達菫が作り出した肉体と同じ……人造物だ。
顔がないのだ。
頭こそあるが、目や鼻……口が存在しない。
見る為と呼吸する為の穴だけが顔に二つだけ存在している。
それが戦うためだけに生み出された事を、痛感させられる程醜い存在だった。
「菫……なんて事を!」
「ママ! ミンナヲタスケルヨ!」
「……ッ」
グングニルはそれに気付いてから、より激しく戦い始める。
「ハアッ!」
「ヴィーダ……」
同じ作られた人間として、思う所があるのだろう。
遥もヴィーダの気持ちを汲んで、倒れた身体を調べる。
「……」
心音が小さい。
それに、他の内臓も正しく機能していない。
肉体を生成する時に材料が足りていない証拠だ。
今救おうとしているヴィーダには酷な現実かも知れないが、この肉体は……。
「死ぬ……」
「エ……」
「ヴィーダ、もう良い。こいつらはもう死ぬ……ここは一旦退くぞ」