浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第二百三十話

 遥とヴィーダが見た剣の怪人・改は一人ではなく、集団だ。

 その十数体。

 誰が変身しているのかも分からないが、二号か菫のどちらかが仕向けたのは明白だ。

 

「……ヴィーダ」

「ママ、サガッテテ」

 

 ヴィーダがそう告げながら、もう一度バックルを腰に取り付ける。

 成音から盗んできたフレイムシャワードライバーも取り付け、変身。

 

「ダイヘンシン」

『CHANGE FLAME SHOWER』

 

 仮面ライダーグングニル フレイムシャワーフォームへと姿を変えて、ゾンビのようにゆっくりと向かってくる剣の怪人・改の集団へと歩いていく。

 

「ウギャアッ!」

 

 中にいるのは人なのか、それすら怪しい剣の怪人・改がグングニルへと剣を振るう。

 

「ハアッ!」

 

 その剣を、手にしている槍で何とか受け止めるグングニル。

 だが……。

 

「オモイ……ッ!」

 

 グングニルは重そうに、これまた何とか弾き飛ばす。

 〇×女子高生徒会が使用していた量産型よりも、スペックが上がっているのか。

 あるいは、オリジナルと同等の性能であるのか。

 それに……。

 

「……! ヴィーダ、脳波の正体は分かるか!?」

「マッテ!」

 

 グングニルがそう叫んでから、武器を弾いた相手に追い打ちを掛けていく。

 何とか一体目にファイナルドライブを放ち、燃える槍を強く叩きつけて吹き飛ばす。

 

「エイッ!」

 

 吹き飛ばされた剣の怪人・改が変身解除される。

 すると……。

 

「ナカミ……アノトキタオシタミンナトオナジ。ソレ、ホカノミンナモ……」

 

 また不完全な、戦闘用の人工脳波が使われている可能性は遥も想定していた。

 だが、問題は脳波の入れ物……肉体だ。

 操られた一般人ではない。

 というか……普通の人間ですらない。

 ヴィーダや、裕太達菫が作り出した肉体と同じ……人造物だ。

 顔がないのだ。

 頭こそあるが、目や鼻……口が存在しない。

 見る為と呼吸する為の穴だけが顔に二つだけ存在している。

 それが戦うためだけに生み出された事を、痛感させられる程醜い存在だった。

 

「菫……なんて事を!」

「ママ! ミンナヲタスケルヨ!」

「……ッ」

 

 グングニルはそれに気付いてから、より激しく戦い始める。

 

「ハアッ!」

「ヴィーダ……」

 

 同じ作られた人間として、思う所があるのだろう。

 遥もヴィーダの気持ちを汲んで、倒れた身体を調べる。

 

「……」

 

 心音が小さい。

 それに、他の内臓も正しく機能していない。

 肉体を生成する時に材料が足りていない証拠だ。

 今救おうとしているヴィーダには酷な現実かも知れないが、この肉体は……。

 

「死ぬ……」

「エ……」

「ヴィーダ、もう良い。こいつらはもう死ぬ……ここは一旦退くぞ」


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