浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第二十三話

「修行は明日からにするとして、今日の晩飯決めようぜ」

「夜は焼肉ですわ!」

 

 謎ポーズと共に宣言する美咲。

 

「カレー系!」

「カレーがいい」

「俺も」

「……どうしてですの」

 

 美咲が落ち込む。

 

「分かった分かった明日そうするから」

「アッハッハッハ!」

 

 急に笑い出したな美咲……怖え。

 

「取り敢えず俺が森の外でスーパー見つけてくるから、お前達まきを集めてくれるか?」

「了解ですわ」

「分かった」

「おけ!」

 

※※※

 

 取り敢えずカレーの材料を購入し、もう一度森へ。

 

「流石にあいつら三人でもまきはちゃんと集められたよな……」

 

 物凄く心配だが、取り敢えず大丈夫である事を祈りたい。

 もうすぐ夕方だし……。

 

「そこにいたのか」

「ん? うわッ!」

 

 俺は背後から切りかかられた。

 かすりではあるが、少し傷を負う。

 

「誰だ……?」

 

 振り向くと、そこには人がいた。

 黒いフードを被り……顔を隠している。

 

「そんな事どうでも良いだろ? 俺はお前の……福沢裕太の知らない誰か。強いてそれに答えるならそんな所だ」

 

 距離を詰め、もう一度剣を振るってくる。

 

「少しお前の顔が見たくなってな……会いに来てやったのさ」

「どういう事だ? お前は俺を知ってるのか?」

「知っている……という言葉で表せる関係ではないかもな」

 

 言葉の意味を察しようとしたが、まるでどういう関係か分からない。

 

「餞別だ……これを受け止めてみろ」

 

 刀を構える黒フード。

 俺は避ける準備をする。

 

「はあっ!」

 

 だが……避け切れず。

 刀が俺の首に近付く……その時。

 

「うわあああッ!!」

 

 咄嗟に振るった俺の拳が、黒フードの身体を大きく吹き飛ばした。

 

「これがお前の力……面白いじゃないか」

 

 黒フードは何とか立ち続けて笑う。

 

「え……」

 

 自分の実力に声も出なかった俺をよそに、黒フードは背を向けて立ち去る。

 

「また近いうちに会おう。じゃあな」

「……」

 

 フードの下に潜む瞳が、少しだけ見えた気がした。

 

※※※

 

「何だったんだあいつ……」

 

 蘇我高校の生徒かどうかは分からないが、俺を知っているような口ぶりだった。

 だが俺はあんな黒フードの男と会った記憶はない。

 それに声も、誰のものか分からない。

 

「それに……」

 

 俺自身の事も、少し気になった。

 俺は何か凄い力で、あの黒フードを吹き飛ばした。

 まるで突然変異体のように……。

 だが……俺が突然変異体なのはあり得ない。

 何せ突然変異体なら使える筈のボマードライバーはあの時使えず、俺は変身出来なかった。

 一体何が何だか……。

 

「……ッ」

 

 俺の頭が痛み……同時に一つのイメージが浮かぶ。

 

「これは……」

 

 俺が知らない場所で、急に倒れ……意識を失っている。

 最後に見たのは……俺と同じ顔の男?

 

「はあっ……はあ……」

 

 イメージはそこで終わる。

 痛みも引き……俺は木にしがみついて息を荒くしていた。

 

「俺は……一体……」

「どうしましたの?」

 

 いつの間にかいた美咲が声を掛けてくる。

 

「美咲……」

「楽になるまで少し待ちますわ」

 

 近くでそう言ってくれる美咲。

 

「ああ……ありがとう。美咲にも優しい所あるんだな……」

「優しいと言いなさいな」

 

 それは無理かな。

 

「聞こえてますわよ」

「何も言ってない!」

 

 俺と美咲のいつも通りの感じの会話で落ち着き、テントを置いた河原が見えてきたところで問いかける。

 

「美咲はさ、もし自分の記憶に迷いが生じたらどうするの?」

「どういう意味ですの?」

「どうやら俺……昔俺に似た誰かと顔を合わせて、そのまま倒れたらしいんだ。でもそんな事した覚えはないし……それに……」

「?」

「いや、なんでもない。やっぱりこの質問も無かった事にして」

 

 下を向く俺に、美咲は取り消した筈の質問への答えを告げた。

 

「私にとって、過去の記憶は所詮自分の一部。大事なのは今の自分ですわ。生徒会長として、ボマーとして、今の自分にすべき事を考える。過去は今更変えられないのですから、今見てるものを大事にすればいいですの」

 

言いながら手首を動かす。

 

「美咲……」

「大体貴方は、自分に自信がないように見えますわ。男ならもっと自信をもって、堂々と生きなさいな」

「う……うん……」

「そうでなければ、私のお供失格ですわよ」

 

 それはいっそ失格にして欲しい。

 

「聞こえてますわよ」

「だから何も言ってない!」

 

 

 


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