浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー 作:門矢心夜
「一号さん……相当、怒ってますのね」
「……おかしいと思うよな。誰かの指示とは言え人を殺した奴が、人殺しに対して怒りを抱くなど」
「別にそうは思いませんわ。貴方が変わった証拠。それに本当の貴方が優しく、愛する者の為に生きて、けど誰かの為に我慢が出来る人なのは……私が一番知ってますわ」
「我慢が出来る……か。さっきの言葉を聞いても、そんな事が言えるものなのだな」
「……」
美咲はそれに対しては答えず、問いかける。
「貴方は……知ってましたのね。二号さんの事」
「……ああ」
「聞いても、良いですの? 貴方と二号さんが、元々どういう関係なのか」
「……」
一号……健斗がこくりと頷く。
「俺と二号……松永秀奈は、幼馴染だった。幼稚園の時からの仲……だったかな。上昇志向で、負けず嫌いのあいつが喧嘩を始めたら、俺が止めようとして、それでも出来ない。そんなのを、小学校くらいまで続けてた」
「中学の時くらいだったか、あいつは無謀な喧嘩をして負けて……プライドをズタズタにされて。その後から……あいつは誰と喧嘩しても、例え勝っても満足しなくなった」
「高校も大学も、不思議と俺はあいつと一緒だった。俺は大学に入ってから菫と会って、菫の研究に協力する形で自分の身体を捨てた。恐らく……あいつもだ。記憶が戻った後、改めてあいつを見た時に既視感を感じた。性別や姿こそ違うが、あいつを松永秀奈だと認識出来た」
「そうでしたのね……」
「ああ。考えてみれば、多少のリスクを冒してでも強さを手に入れようとする行動も……あいつが松永秀奈ならあり得る話なんだ」
「……」
「それに、お前に対して言った誰も追いつけない強さが欲しいという気持ち。あれは恐れているんだ。誰かに負けて……弱いと罵られる事を」
美咲は黙って一号の話を聞いてから、問いかける。
「一号さん……二号さんが何を思って、ああしてあの人達を殺したのかは分かりますの?」
「……分からない。でも、あいつは負けた相手を二度と戦えなくするのに拘っていた。そういう事……なのかな」
「チガウ……フタリトモ」
そう言って、ヴィーダが現れる。
「ヴィーダさん?」
「アイツ、イッテタ。タタカウタメダケニウマレタヤツヲ、タタカエナイジョウタイデイカスナンテシヌヨリツライッテ」
「……」
美咲はその言葉に対して、二号を否定出来るものを見つけられない。
自分も……もし本当に戦えない身体になったら、生きる意味などないと思うかも知れない。
その時、相手の意思に関わらず殺して欲しいと思うかも知れない……と感じたから。
「デモ、ソレハコロシテイイリユウニナンテナラナイ。ダカラヴィーダハゼッタイニゴウヲユルサナイ」
「俺もヴィーダと同じだ。どんな理由があっても、命を奪っていい理由にはならない。お前が人殺しの俺を仲間と思ってくれたように、俺もあいつらを助けたいと思ったから」
「そう……ですわね。けど、倒す為には強くなる必要がありますわ」
「だから蘇我高校の生徒達と共に……そう言うんだろ?」
美咲は図星を突かれて、言葉が出なかった。
「俺も……それにヴィーダも、二号の強さは知っている。今のままじゃ勝てない事も分かるさ。けど……あいつらとの特訓で強くなれるとは思えない」
「一号さん……」
「ヴィーダモ、ドウカン」
二人はそのままその場から去っていく。
美咲はその足を止める言葉を探そうしたが、今は見つかりそうになかった。