浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第二百四十話

「一号さん……相当、怒ってますのね」

「……おかしいと思うよな。誰かの指示とは言え人を殺した奴が、人殺しに対して怒りを抱くなど」

「別にそうは思いませんわ。貴方が変わった証拠。それに本当の貴方が優しく、愛する者の為に生きて、けど誰かの為に我慢が出来る人なのは……私が一番知ってますわ」

「我慢が出来る……か。さっきの言葉を聞いても、そんな事が言えるものなのだな」

「……」

 

 美咲はそれに対しては答えず、問いかける。

 

「貴方は……知ってましたのね。二号さんの事」

「……ああ」

「聞いても、良いですの? 貴方と二号さんが、元々どういう関係なのか」

「……」

 

 一号……健斗がこくりと頷く。

 

「俺と二号……松永秀奈は、幼馴染だった。幼稚園の時からの仲……だったかな。上昇志向で、負けず嫌いのあいつが喧嘩を始めたら、俺が止めようとして、それでも出来ない。そんなのを、小学校くらいまで続けてた」

「中学の時くらいだったか、あいつは無謀な喧嘩をして負けて……プライドをズタズタにされて。その後から……あいつは誰と喧嘩しても、例え勝っても満足しなくなった」

「高校も大学も、不思議と俺はあいつと一緒だった。俺は大学に入ってから菫と会って、菫の研究に協力する形で自分の身体を捨てた。恐らく……あいつもだ。記憶が戻った後、改めてあいつを見た時に既視感を感じた。性別や姿こそ違うが、あいつを松永秀奈だと認識出来た」

「そうでしたのね……」

「ああ。考えてみれば、多少のリスクを冒してでも強さを手に入れようとする行動も……あいつが松永秀奈ならあり得る話なんだ」

「……」

「それに、お前に対して言った誰も追いつけない強さが欲しいという気持ち。あれは恐れているんだ。誰かに負けて……弱いと罵られる事を」

 

 美咲は黙って一号の話を聞いてから、問いかける。

 

「一号さん……二号さんが何を思って、ああしてあの人達を殺したのかは分かりますの?」

「……分からない。でも、あいつは負けた相手を二度と戦えなくするのに拘っていた。そういう事……なのかな」

「チガウ……フタリトモ」

 

 そう言って、ヴィーダが現れる。

 

「ヴィーダさん?」

「アイツ、イッテタ。タタカウタメダケニウマレタヤツヲ、タタカエナイジョウタイデイカスナンテシヌヨリツライッテ」

「……」

 

 美咲はその言葉に対して、二号を否定出来るものを見つけられない。

 自分も……もし本当に戦えない身体になったら、生きる意味などないと思うかも知れない。

 その時、相手の意思に関わらず殺して欲しいと思うかも知れない……と感じたから。

 

「デモ、ソレハコロシテイイリユウニナンテナラナイ。ダカラヴィーダハゼッタイニゴウヲユルサナイ」

「俺もヴィーダと同じだ。どんな理由があっても、命を奪っていい理由にはならない。お前が人殺しの俺を仲間と思ってくれたように、俺もあいつらを助けたいと思ったから」

「そう……ですわね。けど、倒す為には強くなる必要がありますわ」

「だから蘇我高校の生徒達と共に……そう言うんだろ?」

 

 美咲は図星を突かれて、言葉が出なかった。

 

「俺も……それにヴィーダも、二号の強さは知っている。今のままじゃ勝てない事も分かるさ。けど……あいつらとの特訓で強くなれるとは思えない」

「一号さん……」

「ヴィーダモ、ドウカン」

 

 二人はそのままその場から去っていく。

 美咲はその足を止める言葉を探そうしたが、今は見つかりそうになかった。


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