浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第二百四十五話

 グングニルが槍を振り上げ、ムラマサも明人に向かって刀を突き出す。

 

「……こっちだ」

 

 明人……剣の怪人・改が一瞬にして背後に移動する。

 

「くっ……」

「仮面ライダーアトミックはこれより速く動ける。俺に当てられないようでは、あいつに当てる事など出来る可能性など皆無だな」

 

 そう言いながらも、明人は瞬間移動並みの速度で移動し、グングニルとムラマサに一撃命中させる。

 なんてことない、軽い右薙と左切り上げ。

 だがそれだけで……グングニルとムラマサの二人を大きく吹き飛ばす。

 

「強い……」

 

 健斗が明人と初めて戦ったのは、菫に捕らえられ、二号……松永秀奈のコピーされた人格を植え付けられてすぐの事。

 サック怪人として戦った健斗を、明人は確か……狩野遥の作ったドライバーの一号機たるソードドライバーで圧倒していた。

 二号の妨害が無ければ、あの時健斗は負けていた。

 あの時から、健斗も自分自身を鍛え、そして元々二号が入っていた身体を手に入れ、ムラマサとして戦っているのに、剣の怪人・改として戦う彼はその倍は成長している。

 

「前に俺はお前に言ったな。自分のしたい事の為に戦えているのかと」

「……!」

「あの時、二号に怒りを覚えたのはお前の意思か? それとも……そうしなければならないという義務感か?」

「さあな。少なくとも、俺は怒りを感じた。演技なんかじゃない。俺達を殺したらそれだけで死ぬものを作ったのに、それでも俺は菫に対して怒れない。あるのはただ、彼女と一緒にいたいという気持ちだけ。止めたいとは思うのに、彼女に怒れない自分が分からない!」

 

 刀を振るい、明人に当てようとした。

 だが間一髪で躱される。

 

「それで良い。その気持ちがあれば、お前は成長したと言える。だが……」

「ぐあっ!」

 

 ムラマサに明人の蹴りが命中し、大きく吹き飛ばされた。

 

「その気持ちを叶える為の実力が足りんな」

「どうして……」

「ハアアアアッ!!」

 

 迫ってくるグングニルの攻撃を、明人が掴む。

 

「お前達が俺や美咲、そしてもしかしたら山内成音にすら劣る理由を教えてやる。経験の不足だ。力や脳に植えられた知識だけに頼り、学びがない。だから経験だけは豊富な奴らに教えさせた」

「……」

「だがあいつらにも足りないものがある。それはお前達のように自分が戦いたいという強く熱い想いだ」

「オモイ……」

「強者が集まる蘇我高校。俺は過去に拘る気は毛頭ないが、今のあいつらを見ていると……その肩書を捨てるべきだと常々思う」

「……」

「俺の考えがおかしいのだろうな。今の時代……例え仲が違う事があったとしても、話し合い一つで解決出来てしまうものもいる。俺のように拳をぶつけ合い、戦い合った後にまた再戦を誓い、認め合う。そんな者は彼らから見れば古臭く感じるのかも知れない」

 

 変身を解くと、明人があまり見せない涙を流す。

 

「俺は、六角美咲やお前達のように……戦う事で誰かに思いを伝えたい者と会えて幸せだ。お前達なら、今の肩書だけの蘇我高校の生徒を変えられると思った。だが……それはお前達には厳しい事だったな」

 

 明人は背を向けて、どこかへ去ろうとする。

 

「待ってくれ」

 

 それを健斗が止めた。

 

「今あいつらはどこにいるんだ?」

「ヴィーダ、ヤッパリ……」

「……」

 

 明人が振り向いて、その口を開く。


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