浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第二百四十六話

 明人の指示で、体育館に戻った生徒達数名。

 帰宅の準備を始めようとしている者、何もせず考え込んでいる者、そして今からでも戻ろうかと考えそわそわしている者。

 今剣の怪人として戦っている生徒に対して恐れを口にした者……二年の小早川明憲(こばやかわあきのり)は、二番目に該当していた。

 

「……」

 

 特訓の手伝いを明人に頼まれた時……明憲も勿論他の生徒達と同じく引き受けた。

 単純にあの戦いを見せてくれた美咲の手伝いが出来るなら、と思ったが、狩野遥を見た時に……恐らく皆の心の中にもあった気持ちが溢れそうになった。

 蘇我高校の生徒を復讐の道具に使った挙句、一時は怪物から元の姿に戻れなくした彼女に対する怒りや辛み。

 流石にそれを表に出したりはしなかったが、成音に救出を頼まれた時は拒否する側に回った。

 美咲達が怪我をすれば狩野遥が自分達を利用した原因である戸間菫を倒せなくなると思ったし、そもそも狩野遥など死ねばいいと思っていた。

 戸間菫がした事も最低だが、狩野遥が自分達にした事を考えれば、狩野遥を助ける理由などなくなる。

 あの時だって狩野遥を許したわけじゃない。

 明人や成音の言葉で奮い立たせられたから、戦ったのみ。

 美咲達が戦おうとしている白髪の福沢裕太のような男と対峙した瞬間、息をするように生き物を殺すあいつに恐怖を感じた。

 明憲とて、喧嘩の経験はあっても、殺し合いの経験はない。

 だから……自分が戦うかも知れないなんて考えたくない。

 でも……。

 

「俺は……」

 

 このまま弱い者扱いされるのだって気に入らない。

 それはきっと他の皆も同じだ。

 私立高校である蘇我高校にも、一応受験のようなものは存在する。

 だが力こそ全てという古風な強者が揃うあの高校では、受験などただの飾り。

 入ってから先輩達に力を試され、もし蘇我高校の生徒が持つ力として相応しくないと判断されれば、周りから陰口を叩かれ、自主退学さぜるを得なくなる。

 自分にはそんな経験は無かったが、今は憧れの足利明人にそうさせられているようにも感じた。

 

「おい」

 

 俺達が決断をする前に、一つの声。

 福沢裕太のものだ。

 だが恐らく……彼のではない。

 彼の中にいる、もう一つの人格の方だろう。

 振り向くとヴィーダと共に、彼が立っていた。

 

「なんだよ……フクの顔してる癖に偉そうな態度とりやがって。俺達に何か用かよ」

「用が無ければお前達の所になど来ない。あいつもお前達にはトラウマがあるしな」

「……」

「一応聞いてやる。本当にこのまま帰るつもりか? お前達」


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