浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第二百四十七話

「だったら? お前達、臆病者の俺らの指図受けるつもりないんだろ?」

「ああ……そうだ。お前達は自分の勝てる相手としか戦おうとしていない。だからそうやって勝てない相手から逃げようとする」

「んだと……!」

 

 明憲は拳を握りながらそう呟く。

 

「だがお前達は既に俺達よりも多く経験を積み、尚且つその力を認められてここにいる。それは紛れもない事実だ」

「だからなんだってんだよ」

「俺達はその逆だ。勝てる力も、経験値も少ないのに、怒りだけで戦おうとしていた。それでは二号……松永秀奈に勝つ事など出来ない」

「……」

「頼む。お前達が今までの戦いで経験して得た強さ……それを分けて欲しい。俺達が今以上に強くなる為には、それが必要なんだ」

「俺達である必要ないだろ。あいつらだってまだいるんだしよ」

 

 帰ろうとしていた生徒の一人が言う。

 健斗はそれに対して返答出来なかったが、隣に立つヴィーダがそれに答える。

 

「イイノ? ソレデ……」

「ヴィーダ……」

「ヴィーダダッタライヤダヨ。タトエジブンイガイノダレカガデキルコトダッタトシテモ、ヴィーダガソレヲヤリタイ。ダッテ、セッカクソレガデキルチカラガアルノニシナイノハモッタナインダモン!」

「もったい……ない」

「良いか! 俺らはお前らみてえな化け物とは違うんだよ! ただの人が化け物を怖いって思って何が悪いんだよ!」

「怖いと思う気持ちは誰も同じだ」

 

 明人がそう告げて、体育館の入り口近くに現れる。

 

「お前達に足りないのは、自分から進んで戦いたいという気持ちと、恐怖に対する克服だ」

「明人さん……」

「俺達は六角美咲に負け、強者ではなくなった。また強者に戻る為には、どんな相手でも自分が戦いたいという気持ちこそが重要だ。だが……お前達は力だけの者に勝てるだけの経験や技を持ちながら自分達が戦いたいという思いすら放棄した」

 

 明人が何度も伝えようとしていた事だ。

 

「この二人は実力が足りない事を自覚しながら、それでも自分より強い相手と戦おうとする意思を持つ事が出来る強者だ。つまり今のお前達と正反対の存在と言える。お前達でさえ、奴と戦っても勝てないのは事実だ。それは俺でも分かる。だが、そんなお前達が彼らのような力強さを手に入れようと思えば、俺達は再び強者に返り咲けるかも知れない」

 

 生徒達が明人の言葉にざわめく。

 

「俺が今この場でお前達にして欲しい事は、こいつらに教える事だけではない。六角美咲達が何故、お前達に勝つ事が出来たのか……それを学ばせる為にここに連れてきた」

「明人さん……」

「それすらも拒否するようなら、本当に帰れ。強さを求めぬ蘇我高校の生徒など……いる資格などない」

「明人さん!」

 

 生徒の一人が明人の名を呼ぶ。

 

「俺……やります! あの化け物は倒せないけど、少しでもあいつに一矢報いたいっす」

「わ、私もっす!」

「俺も!」

 

 その場にいた全員が奮起する。

 それを見届けた明人が、指示を出した。

 

「全員校庭へ出ろ。特訓を再開するぞ」


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