浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー 作:門矢心夜
「俺達に何の用だ」
やはり嫌そうな声が、扉の奥から聞こえる。
「話がある。中に入っても良いか」
「……好きにしろ」
そう言われてから、遥は恐る恐る扉を開けた。
そうするや否や、生徒達全員が遥に視線を向ける。
「……」
「そんで、話ってのはなんだよ」
生徒の一人が睨みつけながら問いかけた。
他の生徒達の顔を見て、許しを乞い辛いとやはり思ってしまうが、それではダメだと自分にもう一度言い聞かせてから言う。
「お前達には、すまない事をした」
「あ?」
「謝って済む事でないのは、私も十分わかっている。だが……」
「だから、要らねえって言っただろう? 俺達は絶対お前を許したりしねえってよ」
剣の怪人のベルトを引き取った生徒がそう問い返す。
「……ああ、そうだな。だがせめて、私の事は許さなくても良い。ヴィーダは私の命令に従っただけだ。彼女の事は責めないでやって欲しい。私の事なら好きにしても良い。気が済むまで殴るなり、罵声を浴びせても良い。彼女だけは許してやって欲しい」
「……」
「俺はそれなら良いと思うぜ」
奥の方にいた生徒の一人が言う。
「あいつは、ヴィーダはこの女に命令された事であっても、皆に迷惑かけた事を謝ろうとした。それに自分だけじゃなくて、狩野遥の事だってちゃんと許して貰おうと頭を下げていた。俺はあいつを認めてる。だから……ヴィーダだけは許してやる」
「……!」
遥が顔を上げる。
「しかしな、アンタを許すかどうかは別の問題なんだ。アンタは自分の幼馴染の為に俺達を巻き込んだわけだが、それは自分の命を懸けられるだけの目的か?」
「ああ……当たり前だ。例えどんな罰を受けてでも、やらなければならないと思った。だから非情に徹した」
「そうか……」
「おい、何が言いてえんだ」
「決まってるだろ。明人さんも言ってたけど、俺達は蘇我高校の生徒なんだ。もし気に入らない事があれば拳で語り合うのが筋ってもんだろ」
「……けどよ、それでこいつを許しても良いのか?」
「謝罪で足りないのなら、それでもいいのではないか?」
遥の後ろで見ていた明人が言う。
「明人さん……」
「話し合いで納得が出来ないと言うなら、力を見せる事で証明する。それなら言い訳は出来ない」
「……」
遥はベルトを着ける。
「誰が行く? 俺はやっても良いぜ」
「……」
剣の怪人のベルトを持つ生徒が手を挙げる。
「俺がやる」
「……」
「俺は絶対負けない。明人さんを傷付けたり、俺らをあんな目に遭わせたりしたこいつは、俺が必ず倒す」
そう告げてから、剣の怪人のベルトを着ける。