浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第二百五十四話

 近くで見ていた明人が目を閉じて頷く。

 

「自分が死んででも、俺達を利用してやるべき事をしようとした。変身が解けても逃げずにそう立ち向かったのは、そういう事なんだろ?」

「……」

 

 遥は頷けず、俯いた。

 

「よっぽどの覚悟が無きゃ、そんな事出来ねえ……違うか?」

「……違わない、と言っても良いのか?」

「……」

「そうさ。私は許されないつもりで、罪を犯した。罪悪感に心が潰されそうになるのにも抗ってな。だが……どうしてだろうな。心のどこかで、お前達には謝罪すべきだと思っていた。それに……出来るなら許されたいと。都合のいい考え方だよな……」

「ああ。まったくもってその通りだ。けど、謝ったら許されたいと思うのは当たり前の考えだ。だからこの戦いにも手を出して、結果を出せた。力の強さを、意思の強さをお前は示した」

 

 生徒が笑みを浮かべる。

 

「そこまでの覚悟があるんなら、例え腕を斬られてもやるんだろ? そんな奴に俺は勝てない」

「お前……」

「認めてやる。俺はお前の意思の強さに負けた。それに利用された。勝てなかったのは、俺の弱さだ」

「……」

「他の奴はどうだ? 俺達が痛い思いをしたのは、こいつの強い意思を止められなかったからだと……心から認められる奴はいるか!」

 

 何人かは、納得したくない……そんな表情をしていたが。

 ゆっくりと……やがて全員が手を挙げた。

 

「狩野遥、俺達の負けだ」

 

 その生徒が狩野遥の目を見て、そう告げる。

 遥は俯いて、涙を流す。

 

「ママ……」

「あいつの罪は、許されないものだ。けど……その罪を加速させたのは、俺達の愚かさと弱さもある。それを認めなければ、俺達は最強の座に返り咲く事など出来ない」

「……」

 

 明人はその場を立ち去る。

 遥は改めて、全員に告げた。

 

「蘇我高校の生徒達、私の野望の為にお前達を利用した事……改めて謝罪させてもらう。それに、お前達のやり方で許して貰った事に対しても……正直申し訳ないと思う。だから、一つ決めた事がある」

 

 遥はヴィーダや生徒達の顔を見る。

 

「許してくれたお前達の為にも、私は全力で戸間菫を倒す。私には何も出来ないが、それがせめてもの償いの方法だ。だから、それが叶うように協力して欲しい。頼む……この通りだ」

 

 そのまま地に頭を付けて土下座する。

 剣の怪人に変身していた生徒は土下座した遥と同じ高さまでしゃがんでから、顔を上げさせて答えた。

 

「……当たり前だ」

 

 遥はその言葉を聞いてから何度も、すまない……すまないと言い続ける。

 

 

 

 


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