浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー 作:門矢心夜
遥はあの後、一人控え室に戻り。
そこで待っていた美咲に声を掛けられる。
「上手くいったみたいですわね」
「……そうみたいだな」
遥自身もあまり実感がないままだった。
彼ら自身の信念が無ければ、恐らく絶対許される事は無かっただろう。
「しかし……少し私にしては珍しく勢い任せな事を言ってしまったな」
「大丈夫ですの。私は貴女が強くしてますし、私が勝てれば実質貴女が倒したようなものですわ」
「いや、まだハイドロフォームのあいつを倒せると決まったわけではない。残念ながらその油断は捨てた方が良い」
美咲はその話を聞いて問いかける。
「そういえば、この特訓ではハイドロフォームのアトミックではなくボマーと戦ってますけど理由がありますの?」
「単純な話だ。アトミックの戦闘データは存在しない。そもそも変身出来る人物などいないからな」
「いない……そうなんですの?」
「ああ。菫があそこまで精巧な肉体を作れたと知って驚いたが、アトミックへの変身には突然変異体であると同時に、通常の突然変異体よりも強固な肉体を持つ必要がある。勿論……適合出来るのはほぼ人工物に限られるがな」
「ヴィーダさんではダメでしたの?」
「あいつにも一度試したが、肉体が負荷に耐え切れなかった。アトミック変身時にはオールウェポン使用時と同等の負荷が掛かる。お前がハイドロフォームやオールウェポン時に平気なのは、リミッターのおかげだ」
「なるほどですの……」
「だがまさか、自分達に使えないものに苦しめられる事になるとはな。いや……使えたか」
遥が目を閉じてそう告げた。
ヴィーダに負荷を掛ければ、いや新しく命を生み出せば出来ただろう。
出来もしない事なのは分かる。
それを見透かした美咲が、遥に言う。
「使えなかったですわ。使えていれば、ヴィーダさんはあんな風に貴女を守ったりしませんの」
「……だな」
「けど、あれが使える人がもう一人いれば……もう少し倒すのも現実的になりそうなものですわね」
「……」
遥はその言葉の意味を察して言う。
「まさか、お前が使おうなどとは考えていないよな?」
「ば、バレましたわ……ちょっと興味がありますのよ」
「やめておけ。あれは今から作るのはほぼ不可能に近い上に、お前が使えばヴィーダ以上に負荷が掛かる。それにお前らしくもない」
「そ、そうでしたわね。けど、あの黒いライダーのデザイン好きなんですわよね」
「まったく……こんな時にオタク心をさらけ出している場合か……」
「えへへ。それじゃあ、そろそろ寝ますわね。おやすみなさいな」
「ああ。また明日な」
美咲がそう告げて、部屋から立ち去る。