浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第二百六十話

 そうして笑い合ってから、俺は言う。

 

「ありがとな、美咲」

「何がですの?」

「いやほら、もしかしたら俺に用は無かったかも知れないのに……来てくれてさ」

「私も何となく、一人でいたくなかっただけですわ」

「そっか」

 

 しばらく空を見てから、美咲が聞く。

 

「裕太さん」

「な、なんだ?」

「この戦いが終わったら、貴方はその肉体を凍結させて……暫くお別れになるんですわよね」

「……ああ」

 

 俺は俯いてそう呟く。

 

「す、すみませんですわ。こんな話、今すべきじゃありませんでしたわよね」

「いや、良いさ。気にすんなよ」

「私、今どうしたら良いか分からない事が一つだけありますの」

「……」

 

 俺はそう言われて考えてみる。

 いつだって自信満々で、自分のやり方を曲げない美咲が迷ってしまう事。

 

「まさか、今更戦う事を迷ってる……とかじゃないよな? さっき言えなかったけどなんか引っかかる事があって」

「違いますわ! 戦う理由なら大ありですのよ! もしそこを迷ってるなら前回に回しますわよ!」

「お、おう。意味分かんねえけど。で、なんだよ」

「それを今言おうとしてたんですのよ! でも、そういう気分じゃなくなりましたわ」

「はあ? なんでだよ」

「ここまで言って察せない相手に言っても無駄だからですわ」

「……?」

 

 おかしい。

 いつものこいつなら、ゴリ押しでも理解させるーとか抜かす筈……。

 

「体重でも増えたか?」

 

 カチャ……。

 

「おい何で今ベルト着ける?」

「貴方をこの場で始末する為ですわ」

「落ち着け! 俺はお前のお供だぞ!」

「うるさいですわ! 変身ですわ!」

「や! め! ろ!」

 

※※※

 

 何とか落ち着かせた。

 

「まったく……本当に貴方って人は……」

「いつも言うけど、まともから程遠いお前が言うべき台詞じゃねえぞ」

「……あーもう、なんか貴方と将来の話なんてするんじゃありませんでしたわ」

「凍結されるまで生徒会の仕事手伝えって話ならお断りだぞ。それから復活してもお前の仕事は手伝わないしな」

「はあ……」

「はあじゃねえ! お前大人になっても俺をドラ〇もんのように使う気か!」

「もう良いですわ……」

 

 なんで呆れてんだ? 訳が分からないぞ……。

 

「この話の続きは、戦いが終わってからにでもしますわ」

「お、おう」

「今日は寝ますわよ。貴方も酒ばかり飲んでないで寝なさいな」

「うるせえ。お前が話しかけた癖に」

「反論する気力も湧きませんわ」

「湧かれても困るわ。とっとと寝ろ」

 

 そんな会話の後、俺の中にいた健斗が呟く。

 

『気付かぬとは愚かな』

「なんか言ったか?」

『いや……こっちの話だ』


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