浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

262 / 311
第二百六十一話

 残っていた酒を飲み干し、また一人になってから、俺はまた明日の戦いの事を考えていた。

 何とかイメージトレーニングだけでも出来ないかなと健斗に話しかける。

 もしかしたら美咲もそれくらいはするかも知れないし。

 

「なあ、健斗」

『なんだ?』

「明日の戦いのイメトレしないか?」

『イメトレ……そうだな。予め予測しておくのも大事な事だ』

「してみるか」

 

 俺は健斗と一緒に明日の戦いを想像して、お互いの意識に考えた事を共有する。

 まるでメールの文章を携帯で送り合うような感覚で。

 便利なもので、イメトレした結果を口で言い合うより客観的で分かりやすい。

 何せ二つの意識が肉体の中で共存してるから、それを行き来させるなど簡単だ。

 けど……だからこそ分かってしまう。

 俺や健斗では、結局強くなり過ぎた美咲や明人にはついていけない。

 ヴィーダにすら、ついていけないと。

 それは、あの人型が襲って来た時に剣を交えた健斗がよく分かっている。

 あの時よりちょっと強くなったくらいで勝てる相手ではない。

 結局、美咲達に全て任せるしかないのだ。

 それすら出来なければ……。

 

『一つだけ、絶対に秀奈を倒せる方法があるぞ』

「本当か?」

『ああ』

 

 健斗が俺に、その方法を共有させる。

 俺はそれを見て……少しだけ健斗に怒った。

 

「ふざけんなよ……こんな方法、俺にやれってか?」

 

 健斗が提示したのは、実に簡単な方法だ。

 俺達を狙ってアトミックが攻撃する瞬間、健斗が脳波制御能力でアトミックの身体を乗っ取り、動けない二号に攻撃を当てるというもの。

 確かにこれが上手くいけば、確実に勝つ事が出来る。

 だがこれでは……。

 

『だが、確実に勝ちたいんだろう?』

「でもよ、この方法じゃ最悪お前は……」

『確実に勝てるって自信があれば、こんな方法など選ばずに済んだんだ。だが、いくら強くなろうと……俺に自信がつくことなんて無かった。俺には自信がない。俺も含めて全員が思う通りにいく未来を勝ち取れる自信がな』

「……」

 

 健斗の感情が伝わってくる。

 数日前に感じた怒り、それに菫に対する愛情。

 自分の思う未来を諦めなければならないという悔しさ。

 

『残念だ。明人に認めて貰えたというのにな……』

「まだだ。まだ明日どうなるかなんて分からない。万が一を考えるのは、大事かもだけど……この未来じゃ、お前だけじゃない。仲間を想う美咲の気持ちも救えない。あいつの気持ちを踏みにじらない為には、絶対に生き残らなくちゃいけないんだ」

『裕太……』

「二人で生き残ろう。菫や二号に勝って、いつの日か、俺やお前が望む未来を勝ち取る為に」

『ああ……そうだな』

 

 健斗がそう呟く。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。