浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第二百六十九話

 壊れたベルトを握り潰しかねない程の強さで握る二号。

 走って向かってきた美咲を、今度こそ本当に悔しそうな顔で見る。

 美咲は目を閉じて、涙を堪えて言う。

 

「これで勝ったなんて、思ってませんわ。裕太さんや一号さんの協力がなければ、ベルトを壊すという選択をしなければ、私は生きてここにいませんでしたわ」

「……俺を慰めてるつもりか? お前」

「私は、諦めてしまった。貴方という存在を前にして、もう無理だと諦めてしまった。それに……助けるべき人を死なせてしまった。貴方の意思の強さに、私は負けてしまったんですわ」

「……」

「今認めますの。私の負けですわ。貴方は、私に勝つ事を諦めさせた人……とても強い意思と力の持ち主ですわ」

 

 二号は立ち上がる。

 

「ふざけんじゃねえよ。戦う力まで奪われて、お前が生きた状態で終わった。俺は、どうやって本気のお前に勝てば良いんだよ」

「……」

「負けを認めんのは俺の方だ。お前を舐めて掛かったせいで、俺は自分の求める世界を掴めなかったんだ。だからよ……」

「待たせたね、松永秀奈」

 

 二号が手を美咲に翳そうとした瞬間、声が聞こえる。

 

「お前……」

「おやおや、敵と一緒に仲良くお喋りとは……君も人の事を言えなくなったね。秀奈」

「……さあ、何のことを言ってんだか分かんねえな」

 

 戸間菫……だが様子がおかしい。

 

「菫先生……」

「美咲、少し彼女と話がある。どいてくれないか?」

「……嫌だと言ったら?」

「言わせない」

 

 そう言って菫が、一瞬にして美咲との距離を詰めた。

 視認出来ない程の速さで腹を殴り、悶絶させる。

 よくよく腰回りを見ると、美咲と戦った時に使ったベルトがある。

 

「くっ……」

「……お前、何する気だ?」

「僕はね、失敗作は処分する主義なんだ。だって、僕の汚点になるからね。だから……僕は今から君を処分するよ」

 

 有無を言わせず、菫は……。

 

「ぐおっ……!」

 

 二号の胸に、何もないところから生み出した刀を突き刺す。

 どことなく似ている……いや、それはスペクターソードそのものだ。

 二号は血を吐きながら倒れ……呟く。

 

「ははは……立場逆転ってわけか」

「元々君は僕の作り出した道具。立場なんてあると思ったのかい?」

「テメエ……」

 

 菫は突き刺した刀を引き抜く。

 開いた穴から残った血が、流れていく。

 二号は……実に呆気なく死んでしまった。

 

「貴女……」

「そんな顔をする事はない。僕が殺したのはただの人形。この前君が戦ったのも、君が守れなかったものも……ただの人形。僕の役に立てなかった……人形なんだよ。役に立たない道具は廃棄する。そんな当たり前の事をしただけだ」

『美咲、俺に変わってくれ』

「一号さん?」

『どうやらあいつが死ぬ前に俺をここに避難させたらしい。俺に喋らせてくれ』

「分かりましたわ」

『もし痛い思いをさせたら、すまない』

 

 そう呟いてから、一号が表に。

 立ち上がってから、菫に告げる。

 

「菫……君はそんな人じゃなかった。君は研究熱心で」

「その声、健斗か。ああ……熱心だったさ。熱心で、絶対その研究で成果を出したかった。だから君達を実験に使う事に対して何のためらいも無かった」

「ああ……俺もそれを分かっていて君に協力した」

「なら何故僕を裏切った! 僕を愛しているのなら、何故君はそうして僕に刃向かう! 狩野遥もそうだ。僕の友達でありながら、僕への協力を拒んだ。何故誰も言う事を聞かない……?」

「菫……俺は……」

「うるさい! 君達が役に立ちさえすれば、僕はっ……」

 

 菫が苦しみだす。

 菫の身体が、右腕の筋肉が隆起している。

 恐らく……あの薬を使った影響だろう。

 

「こんな痛みを味合わずに済んだんだ……」


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