浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー 作:門矢心夜
ベルトを着けながらも、遥は後ずさる。
無理だ。
明人でさえ勝てない相手に、遥が勝てるわけがない。
「美咲、すまない!」
そう呟き、健斗は美咲の身体を使って駆け出す。
変身すらせずに菫の前に現れて、菫に向かって体当たり。
言わずもがな、菫には一のダメージすらない。
「何のつもりだい……健斗。変身すらせずに……」
「これ以上菫の手を汚させない。菫……俺は菫が好きだ。菫の願いなら何でも聞いてやる。だからせめて……もう誰も傷付けないでくれ!」
「ふん……君が僕を好きと思うなど当然だ。何をされてもそういう風に感じるように、僕が君を操作したんだからな」
「……そうだな。でも、だからこそ今なら思う。好きだから、好きな人が間違った道に進もうとしてるなら止めたい。それが俺のやるべき……違う。やりたいこと。そしてそれは、例え誰が否定してもやらなきゃいけない。それを美咲に教わったんだ」
『一号さん……』
「いきがるな。ベルトがない君が、どうやっても僕に勝てるわけがない」
「イチゴウ!」
ダメージがある程度回復したヴィーダが、少し遠くで叫ぶ。
振り向いた瞬間、美咲に向かって投げる。
健斗がそれを受け取った。
ムラマサドライバー。
「これは……」
「ヴィーダ、ドンナニスキナヒトニキラワレテモアキラメナカッタ! ダカラ、イチゴウモ!」
「……ああ」
ムラマサドライバーを着ける健斗。
「美咲」
『一号さん』
「俺はお前だけは死なせない。だからもし無理だと悟ったら、お前を守る為に戦いをやめる」
『……私の事は気にしなくて大丈夫ですわ』
「美咲?」
『いざとなれば、私が代わりますの。それに……私も皆さんの事を道具として扱う菫さんが気に入りませんの。絶対に勝ちたいですわ』
「……分かった」
美咲はまだ、涙を堪えようとしているように感じる。
……仕方のない事だ。
「この戦いが終わったら、二人で泣こう」
『……三人だろ?』
「……?」
俺は突如として聞こえたその声に、辺りを見回す。
ここにいる誰の声でもない。
その声は……。
『裕太……なのか?』
『……』
裕太はそれに対して、何も返さない。
『俺がこんな形でいるって事は、俺は死んだんだな』
『……すまない。俺のせいだ。お前が死んだのは、俺のせいだ』
『……お前のせいじゃない。お前の作戦がなきゃ、こうしてお前や……美咲にもう一度会えなかったんだ』
『裕太さん……』
『美咲、悪いな。俺……死んじまったよ』
『馬鹿……私なら別に、庇われなくたって……』
『無茶言うな。俺の前だからって無理に強がるなよ』
『……』
美咲は俯いて、まだ涙を堪える。
それを見た裕太が、次は健斗の目を見つけて告げた。
『健斗』
『……』
『三人で、お前の気持ち……叶えるぞ』
『ああ』
健斗は目を開ける。
「作戦会議でも終わったのか?」
菫の問いかけに、健斗は答える。
「ああ……そんな所だ」
ムラマサドライバーの端末を取り出す。
――貸してもらった美咲の身体、それに裕太が命を使って作ってくれたこの状況。無駄には出来ない。
端末を操作し、閉じる。
『ムラマサ!』
その音の後、健斗は裕太がやっていたポーズをとる。
頭の中で、美咲と裕太も同じポーズをとった。
そして三人で叫ぶ。
「「「変身!!」」」
端末を取り付ける。
『御意! 出陣! 仮面ライダームラマサ!』
上から降りてくる刀は……禍々しい妖刀の色では無かった。
綺麗に光る……白く刀身、それに明るい紫の輝き。
まるで美咲や裕太の願いのように綺麗だ。
健斗はそれを、手を高く伸ばして掴む。
手から腕へ、そして全身を巡り。
健斗の身体は、仮面ライダームラマサへとその姿を変えた。
三つの意識が一つに混ざる。
健斗は美咲が考えた台詞を、ポーズも交えて叫ぶ。
「菫……菫を止められるのはただ一人、俺だ!」