浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第二百七十三話

 健斗が姿を消しながら、菫との距離を詰める。

 白い刀を勢いよく振り下ろそうとするが、彼女が生み出した剣の怪人・改の剣に阻まれた。

 

「君……真面目にやってる? あんだけの台詞吐いておいて、あの明人よりも剣が軽い。本当に僕を止めるつもりがあるのかい?」

「……!」

 

 明人とグングニルが間に割って入る。

 二人がかりで菫の剣を押し、隙を作ってから明人が攻撃を入れる。

 

「明人、ヴィーダ……!」

「ようやく見つけられたようだな、お前の本当にやりたい事」

「……ああ」

「なら、絶対に勝て。今だけは、相手を傷付ける事を恐れるな」

「……!」

 

 健斗はもう一度駆け出す。

 今度は左拳を握って、菫の腹に向かって振るう。

 無論、拳は菫の剣に受け止められる。

 

「そんな拳、何度振るっても無駄……」

 

 だが右脚が勝手に動き、菫の脇腹に命中する。

 動かしたのは、美咲だ。

 

『健斗さん、拳がダメなら蹴りですわ! 当たるまで、何度だって振るえば当たりますわ!』

「美咲!」

『隙が出来た今がチャンスですわ!』

「ああ」

 

 健斗は頷いてから、刀を構え直し、高速で移動する。

 怯んだ菫に、何度も刀を振るっていく。

 

「こいつ……!」

 

 菫もまた素早く移動し、もう一度刀を振り下ろす。

 健斗の防御が間に合わない程速い剣筋、それを今度は裕太が防ぐ。

 

「裕太……」

『美咲をよろしくな、健斗。はあッ!』

 

 裕太がその剣を弾いてから、健斗に交代する。

 端末を操作しながら、健斗は呟く。

 

「これで決める……!」

『最終撃!』

 

 白い刀を構え、健斗は大きな声で叫ぶ。

 

「ライダースラッシュ!」

 

 白い光を纏い、菫を何度も斬りつける。

 最後の一撃は、ドライバーに向かって放たれた刺突。

 菫の意識ではもう回避不可能の筈だった。

 しかし……。

 

「やるなぁ、健斗」

 

 菫はその刀身を掴んだ。

 力づくで刀身を折り、瞬間移動並みの速度でムラマサとの距離を詰め、拳を叩きつける。

 ムラマサは大きくその身体を吹き飛ばし、地面へ。

 

「だけど、まだ俺に勝つのは無理みてえだな」

「その声……」

 

 菫の姿を見据える。

 そこにいたのは……菫では無かった。

 だが健斗には見覚えのある姿だ。

 金色の髪に、赤い瞳……それに黒いスカジャンに黒いズボン。

 男のヤンキーを思わせるような姿だが、上半身を押し上げる膨らみが紛れもなく彼女が女性である事を理解させる。

 あれは……。

 

「秀奈……」

 

 健斗の幼馴染……松永秀奈。

 

「おいおい、死んだと思ってたのか? だとしたら心外だぜ」

 

 何故かその場に現れた彼女は笑みを浮かべて、健斗にそう告げた。


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