浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第二百七十五話

 ムラマサと秀奈の戦いはまだ続いていた。

 二人とも周りが視認出来ない速度で動きながら拳や剣を交わしている。

 

「お前のメンタルは尊敬するぜ。仲間を殺されても、俺やこいつを殺そうとしねえ。普通なら……こんな奴殺しても罰は当たんねえってのによ」

 

 美咲は目を閉じて後悔の表情を浮かべながら言う。

 

「裕太さんを守れなかったのは、私のせいですわ。貴方を殺したところで、あの人は帰ってきませんの……!」

「そうだな。こいつの魂のコピーは存在しない。福沢裕太は蘇我高校に潜入する為に利用されただけだからな。簡単に言えば使い捨て、俺ら以下の存在だったってわけだ」

「なん……ですって?」

「違うってことはないだろ? 事実こいつも魂をいじられている。お前にボマードライバーを届ける事が出来たのも、無意識のうちに価値観を植え付けられていたからだ。それが無ければ、お前は今こうして戦ってねえよ」

 

 美咲は攻撃を防ぎながら返す。

 

「複雑ですわね。貴方達がいなければ、私にこんな沢山の仲間が出来る事がありませんでしたし、裕太さんにも会えませんでしたわ。けど……裕太さんは貴方達に人生を狂わされた。それだけは腹立たしいですわ」

「使い捨てにも満たねえ奴に、こいつや俺が情けを掛けると思うか? お前が守ろうとしてたのはそういう存在だ。すぐにでも死ぬような奴を助けてえ? 死なせねえ? ハッ……それこそ時間の浪費って奴だ。俺に感謝しろ。お前はこれからの人生を自分の為だけに使えるぞ。俺達の屍を超えた先にな」

 

 秀奈が素早く動いて剣を振り下ろす。

 何とか美咲は、もう一度それを受け止める。

 

「貴女は一つ勘違いをしてますわ。私の人生は、全部私の為に使ってますのよ。これまでもこれからも。裕太さんの為に生きたのも、生きたいと思ったのも私の為! 貴女達がいくら裕太さんを道具扱いしようと、私にとってあの人は……!」

 

 そう言いながら端末を操作し、ベルトに取り付ける。

 端末から、決め技の前振りが発せられた。

 

『最終撃!』

 

 刀を持たないムラマサの右拳に、白いエネルギーが溜まっていく。

 両脚が熱を持ち、そのまま右拳を叩きつけようと飛び上がる。

 秀奈に近付く前、相手に視認出来ない速度で接近してから、彼女の前で姿を現して叫ぶ。

 

「ライダーパンチ!」

 

 白いエネルギーをそのまま相手へと叩きつける。

 だが秀奈は見切り、それを受け止め……問う。

 

「あの人はなんだよ? え?」

 

 裕太自身にも言えなかった事を、美咲は叫ぶ。

 

「あの人は……私が愛してる人ですの!」

 

 


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