浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第二百七十六話

「愛してる人、なあ……。お前は強ええが男を見る目はねえみてえだな」

 

 掴んだ拳を払い、剣を振るい吹き飛ばしてから秀奈が返答する。

 

「それで結構ですわ。私も自覚してる事ですの」

 

 そう呟いてから、再び二人は消えるように動き出す。

 秀奈が振るった拳を受け止め、ムラマサは何とか蹴とばす。

 

「道具をそこまで愛せるお前……寧ろ尊敬してやるぜ。良いぜ……六角美咲。今からお前をあいつのいる所まで送ってやる。それがお前の望みなんだろ?」

 

 秀奈はそう言って、ムラマサ目掛けてもう一度駆け出した。

 駆けながら、秀奈はその姿を変えていく。

 黒い爆弾型の頭に、黒い長ラン……ベルトこそ違うが、アレは……。

 

『仮面ライダーアトミック……何故、またあの姿に!』

「くっ!」

 

 アトミックが振るう剣の怪人・改の剣を両手で何とか受け止める。

 

「姿だけだけどな。テメエの本当の姿よりも、こいつの方が百倍マシだしな」

「マシ……どういう意味ですの?」

「言ったろ? 弱いって言われた、この世界は第一印象で全て決まっちまう世界だってよ」

 

 アトミックは少しだけ俯いて、さっきの戦いで吐露しなかった事を話し始めた。

 

「俺を否定した奴は言った。女の俺に、自分は倒せない。俺はそいつと戦い、一度負けた。俺は行く先々でなめられた。腹立たしくて仕方なかったさ。けど自分の身体は……女として、いや人間の俺の身体には限界がある。だから、こいつに魂を売ってでも自分の行きたい世界へ行くって決めたんだ」

「秀奈さん……」

「それならお前でも分かるだろ。俺がどうしてお前に勝つ事に拘ったか。二度とチャンスを与えないと言ったか。俺にもチャンスは与えて貰えなかった。だから、一度負けたらそこで終わりだ。お前が愛してる奴みてえに、戦いで負けた奴は二度と戦う権利を失う。お前みてえな奴は甘えんだよ」

「!」

 

 美咲はアトミックの攻撃を受け止めながら考え続ける。

 彼女は先ほどから、執拗に裕太を責め続けていた。

 さっきの戦いでは、そんな様子一切なかったのに。

 

「秀奈さん、無駄ですわよ」

「いきなりなんだ? 人格混ざって頭でもおかしくなったか?」

「貴女、私に殺して貰いたくて……わざと裕太さんの悪口を言ってますのね?」

「……どうしてそう思う」

「さっきの戦いの時に、そんな言葉は一切発していない。私を怒らせる事で、死のうとしている。そうですわね?」

「半分正解で、半分不正解だ。単純な話だ。キレた方が、強くなんだろ?」

「……言った筈ですわ。私は裕太さんを愛している。誰がなんと言おうと、それを曲げる事はありませんわ!」

『美咲……』

「そうかい、そうかよ。なら代わりに俺がキレてやるよ」

「……!」

 

 アトミックが身体を震わせる。

 彼女はその姿を、ハイドロフォームの時の姿へ変えた。

 

「早く殺すつもりで戦えよ。俺はそれを待ってんだよ」 

 


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