浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第二百七十七話

 アトミックハイドロフォームの姿となった秀奈。

 本物と比べれば大した事はないが、それでも秀奈自身の戦闘技術……それと怒りが、確実に美咲達を追いつめていた。

 

「さっさと殺す気でやれよ! テメエ死ぬぞ!」

「……もう余計、そんな事は出来ませんわ」

 

 美咲は何とかムラマサの拳一つで、様々な武器を生み出すアトミックに立ち向かう。

 

「貴女も、私や裕太さん達と同じ。自分の過去や弱さと向き合い、戦ってきたんですわ。私達と方法は違えど、自分の欲の為に、自分のプライドも犠牲にして」

「……!」

 

 動揺するアトミック。

 

「何度でも言いますわ。あの時貴女が殺した人形さんもヴィーダさんも裕太さんも一号さんも、そして貴女も……菫さんの為に作られた道具じゃない! 皆必死に悩んで、それでも自分のしたい事の為に生きようとしていた! 裕太さん達だって、死にたくもないのに悩んで、私の為に命を懸けてくれた! 私が弱いから、そうする選択しかさせてあげられなかった。だから彼が救ってくれた命を、これから守るべき者を守れる程強くなる為に使いますわ! 貴女の心にも、向き合って」

「お前……!」

 

 美咲がそう告げた瞬間、ムラマサの姿にも変化が現れる。

 ブレインドライバーとは違うムラマサドライバーにはないはず。

 なのだが、ムラマサはその姿を変えていく。

 緑の長ランに、緑の爆弾型の頭、赤いライダースーツ。

 そして……折れた筈の刀が再び再生する。

 ムラマサの色合いをしたボマーとなってから、その刀を構えた。

 

『美咲……』

 

 裕太が告げ、中にいる一号が何も言わずにそれを見る。

 

「悩む人の心に寄り添い、自らの信念の為に戦い、壁があるなら何度でも『爆破』していく。それが、私……仮面ライダーボマーですの!」

「誰の手の届かない強さを手に入れて、過去の弱い自分を『消し去る』。それが俺、仮面ライダーアトミックだ」

 

 そう告げてから、アトミックがドライバーを操作した。

 

『FINAL DRIVE!』

 

 音声と同時、アトミックがゆっくりと宙を舞う。

 背後に剣の怪人・改の剣を何本の出現させてから、ムラマサに向かって全て飛ばす。

 

「消え去れ!」

 

 向かってくる剣を、ムラマサは全て刀で弾く。

 だが、それでもアトミックは諦めない。

 もう一度端末を操作する。

 

『FINAL DRIVE!』

 

 出せない筈の黒いボムビットが、アトミックの周囲に出現した。

 

「ライダーボムキック……! はあッ!」

 

 宙に浮いた状態から、ムラマサに向かって急降下するアトミック。

 重いキックが、ムラマサの腹目掛けて放たれる。

 

「くっ……!」

 

 先にボムビットが、ムラマサの身体へと直撃していく。

 裕太の命を奪ったそれを、美咲は何とか耐え忍ぶ。

 

「こんな所で、死ねませんわ!」

「はあああッ!!」

 

 叫びながら放たれるキックに、ムラマサは刀で競り合う。

 

「終わりだァッ!」

「!」

『美咲……! うおおおおおッ!!』

 

 何と裕太が、美咲の人格を押しのけて現れる。

 刀でキックを押し返し、怯んだアトミックに一太刀浴びせた。 

 

「テメエ……!」

『美咲、あとは頼む……』

「裕太さん……ありがとうございますわ!」

 

 そう言って、美咲は端末を操作する。

 

『最終撃!』

 

 美咲はボタンを押してから、刀を構える。

 刀にエネルギーを溜め、そのまま勢いよく飛び出す。

 

「ライダースラッシュ!」

 

 ムラマサが刀をアトミックに向かって振るいに行く。

 隙が出来たアトミックに何発か命中し、最後の一撃で突きを放つ。

 

「くっ!」

 

 アトミックが反射的に放った拳が、ドライバーに命中してしまう。

 命中したドライバーから、ビリビリと音が鳴り、技が中断させられた。

 

「まだですわ、私はここで終わりませんわ!」

『最終撃!』

 

 壊れかけた端末をもう一度操作し、今度は飛び上がる。

 だが飛び上がった瞬間、ドライバーが断末魔の如く稲光をまき散らし、完全に壊れてしまう。

 刀が、消えていく。

 そこから段々と力が抜けていくと思われたが、それでも美咲は諦めない。

 

「まだ、この力があればいけますわ!」

 

 右脚を伸ばし、段々と力を失いつつある身体にむちかって、諦めずに急降下。

 

『『「ライダーキック!!」』』

 

 三人で、そう叫んでアトミックのベルトに直撃する。

 

「はあああああッ!」

 

 美咲は叫びながら、そのままアトミックのドライバーを破壊。

 アトミックは爆発しながら、戸間菫の姿へと戻っていく。

 

「くっ……」

 

 だがその時の菫……いや秀奈の顔は、不思議と穏やかだった。

 


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