浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第二百七十九話

 菫が秀奈によって命を絶たれてすぐに、彼女の所に歩み寄ったのは……元親友の遥だった。

 大きく目を開け、苦しそうに口を開ける、見るも無残な彼女の顔に触れ……目と口を閉じさせる。

 首から手を離し、仰向けの状態で寝かせてから……遥は人になるべく悟られないよう、声を殺して泣き始めた。

 

『……』

 

 一号……健斗も、自分の中で泣いているのを感じる。

 美咲もまだ涙を堪えて、何とか呟く。

 

「これで、終わったんですのね」

 

 美咲は目を閉じる。

 出来る事なら、彼女ともう一度戦いたかった。

 自分が勝てるまで。

 けど……そう考えているうちに、もう一つの別れが自分の中で近付いていた。

 

『美咲……』

 

 自分の中で、何かが消える感覚がしている。

 紛れもない……裕太の残留思念だ。

 

「もう、お別れですの?」

『……ああ。残念だがそうみたいだ』

『裕太……!』

 

 一号が裕太に近付く。

 

『お前を死なせた事、消える前にもう一度……』

『……良いんだ』

『……』

『自分の命と同じくらい大切なものを、二つも守れたんだからな』

 

 それでも、やはり足りなかったと感じているのか。

 裕太は涙を流していた。

 健斗も同じように。

 

『健斗』

『……』

『美咲の事、これからも頼んで良いか?』

『ああ……絶対にこれからも、美咲を守る』

『……』

 

 裕太は笑ってから、今度は美咲を見る。

 

『美咲』

「……はいですの」

『お前、確か俺達の身体を救うために科学者になりたいんだったよな』

「もう……そんなの良いですわ。貴方がいないなら、その夢は!」

『なら、見せてくれよ。俺に』

「え……?」

『俺を救うための力を、それ以外の誰かを救う為に使ってくれ』

「……そんなお願い、しないで欲しいですの。貴方にお願いされたら……やるしかないじゃないですの」

『……俺もお前が好きだ。だから』

「え?」

『いや、なんでもない。ただの独り言だ』

「馬鹿……」

『お願いしても良いか、美咲……仮面ライダーボマー』

「……ええ。この戦いで得たもの、そして貴方が守ってくれたものを無駄にしない為にも、これからも頂点目指して戦いますの。私はこれからも、仮面ライダーボマーですわ」

『ああ……』

 

 そう呟いた瞬間、裕太の残留思念が一気に消滅を始めた。

 眩い光を発して、まるで頭の中から大事な何かが消えるように。

 美咲はそれが終わってから、眼を開ける。

 残った健斗と共に……美咲は空を見上げて大粒の涙を流して。

 

『「うわああああああああああああああああッ!!」』

 

 二人で、声を荒らげて叫んだ。


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