浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第二百八十話

 あの戦いから……実に一か月が過ぎた。

 六角美咲はボマードライバーを装着して、ある戦いに赴こうとしている。

 そう、前から約束していた足利明人との再戦だ。

 その舞台は、蘇我高校ではなく〇×女子高校。

 今日行われている体育祭のオオトリだ。

 

「行ってきますわ、裕太さん」

 

 心の中に、まだいる筈の裕太に対してそう告げて……眼鏡を掛ける。

 前までの眼鏡ではなく、裕太が選んでくれた新しい眼鏡。

 これを掛けていると、隣に彼がまだいてくれる気がする。

 美咲はそれから、歩いて舞台の上へ。

 明人も、反対側から現れる。

 

「……」

 

 彼の腰には、既にソードドライバーの姿が。

 彼を見る。

 あの薬品の効果は消え、普通の人間へと戻り、二度と剣の怪人・改への変身は出来なくなったが、それでも彼はあの時以上にこの日の為に修行を重ねたという。

 それを言葉ではなく、雰囲気が語っている。

 

「あまり戦いを見世物にするのは好きではないんだがな」

 

 少し難しい顔をする明人に、美咲は笑って答える。

 

「私はこういうのも好きですわ」

「そうか」

 

 戦う前の明人と言葉を交わす。

 美咲がこの戦いを提案したのは一週間前。

 裕太達への弔いがある程度済んだ頃の事だ。

 明人はそれらの事には顔を出さず、蘇我高校生徒会長としての仕事を全うし続け、一週間前漸く、任期を満了した。

 その後で、彼が美咲に会いに来たのだ。

 

※※※(一週間前)

 

「調子はどうだ?」

「……私は何とか大丈夫ですわ。けど……健斗さんはそうもいきませんわ」

 

 あの後健斗は、ひとまず冷凍保存された身体を治療する方法が見つかるまで、脳波データを小型端末に入れて保存する事になった。

 いざという時にはボマードライバーと通信し、美咲が変身した際に脳波の入れ替えが用意に出来るようにプログラムを組む事で、もし再びシステムを使う時が来ても戦えるようにした。

 そして健斗は美咲が面倒を見る事になったのだが、彼の元気は無かった。

 一応ドライバーを着けた状態で交代すれば味わう程度ではあるが食事も出来るようにした。

 美咲はその上で食事に誘いもしたが、断られ。

 まだ彼は、裕太や秀奈、そして菫の死から立ち直れなかった。

 

「一号……上杉健斗と話がしたい。すまないが……」

「分かりましたわ」

 

 美咲はボマードライバーを着ける。

 美咲の身体を借りて、健斗の人格が表に出た。

 

「上杉健斗」

「……」

「お前は戦いで失ったものに対し、後悔している。そうだな?」

「……当たり前だ。当たり前に決まってる。俺は何一つ助ける事が出来なかった! 俺は大切なものを死なせて生き残ってしまったんだ! いっその事、俺が死ねば良かったとさえ思う。人の命令で命を奪い続けた俺が!」

 

 声を荒らげて叫ぶ健斗を、明人が冷静に諭す。

 

「そう思うなら命を絶てば良い。簡単な話だ」

「……」

「出来ないなら、そこから立ち直る為にどうすれば良いか、考える事だ」

「俺には……」

「忘れるな。失って悲しいのはお前だけじゃない。六角美咲も、お前と同じだ。だが彼らの為にやるべき事が分かっているから、大丈夫だと胸を張って言える。約束したのだろう? 美咲を守ると。お前にその気持ちはないのか?」

「……」

 

 健斗は首を横に振る。

 

「なら、生きろ。自分のやりたい事をしているのなら、胸を張って生きろ」

「……」

 

 涙を流しながら、今度は首を縦に振るう。

 

「すまないな、足利明人」

「……礼には及ばん」

 

 明人が珍しく笑みを浮かべて、そう返答した。

 ドライバーを外し、美咲の人格に再び交代する。

 

「明人さん……」

「さて、これからどうする? 任期満了はしたが、俺は卒業まで、蘇我高生達を導いていくつもりだ」

「私は……しばらく忙しくなりそうですわ。裕太さんが守ってくれたこの命を、これからは他の誰かの命を救う為に使いたい。その為に、まずは今から大学の受験勉強……とかですわね。今からやって、入れるかどうか分かりませんけど」

「そうか」

 

 少し残念そうな顔の明人。

 

「あ、でも……その前に一つ頼みがありますわ」 

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