浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第二百八十一話

 美咲と明人は互いに向かい合い、端末を取り出す。

 

「結構な人ね」

「オキャクサン、イッパイ」

 

 成音とヴィーダが、観客席からそう呟く。

 

「美咲っちも明人っちも頑張る系!」

 

 優香が成音達の隣からそう応援する。

 

『……』

 

 健斗も、今は優香が預かっている端末から見届ける。

 

「これより……試合を始めます!」

 

 舞台の真ん中に立つ審判が、そう告げた。

 その合図と同時、美咲と明人が変身する。

 

『BOMER DRIVE READY?』

『SWORD DRIVE READY?』

 

 美咲が端末を構えて叫ぶ。

 

「変身ですわ!」

 

 二人は端末を取り付ける。

 

『『COMPLETE』』

 

 その音と同時、美咲の頭上からは爆弾、明人には剣が現れた。

 美咲は爆弾を握り潰し、明人は剣を掴む。

 仮面ライダーボマー、そして剣の怪人へとその姿を変える。

 

「いきますわ!」

 

 バットと剣を構え、二人は駆け出す。

 

※※※

 

 一か月前から分かっていた事だが、明人は初めて戦った時よりも遥かに実力が上がっていた。

 しかし、それは彼だけの話ではない。

 美咲も負けじと、彼の剣捌きに対応していた。

 周りの人間には、美咲達の動きが見えずにいる。

 

「す、すごい……」

「なんだあれ、全然見えねえぞ」

「はっ!」

「……!」

 

 二人は武器をもう一度ぶつけあってから距離をとる。

 互いを見合ってから、美咲は端末を操作した。

 

「これでいきますわ」

『ACCELERATOR DRIVE』

 

 アクセルドライブ……ボマーは剣の怪人を上回る速度で加速し、剣の怪人に攻撃を当てようとする。

 

「そこだ!」

 

 明人はバットの動きを見切り、防ぐ。

 何度も当てようとするが、全て見切られてしまう。

 

「どうした、六角美咲。お前はその程度じゃない筈だ!」

 

 今度は明人が高速移動し、ボマーに向かって剣を振るう。

 美咲もそれに何とか対応しようとするが、途中から美咲も動きが見えなくなっていた。

 

「み、見えませんわ。私……さっきまで」

 

 美咲は動揺する。

 明人の剣が防げず、後ろから斬りつけられてしまう。

 

「……!」

 

 ボマーは膝をつく。

 

「六角美咲……」

 

 明人がそれを見下ろす。

 

「私は……」

 

 この日になるまで何度も見ていた夢が、今になってフラッシュバックする。

 裕太と過ごした楽しい日々。

 夢の中では、まだ彼は生きている。

 現実でも、時折生徒会の仕事をしている最中にその名を口にする時がある。

 けど、その言葉に返答する者はいない。

 彼は……心の中にいる。

 そう信じている。

 だが……自分の身の回りの現実が、残酷にも彼が死んだ事を告げている。

 美咲も、無理していただけに過ぎないのだ。

 

『……戦うって決めたのは、お前だろ』

 

 心の中に、声が聞こえた。

 

「裕太さん?」

 

 消えた筈の彼の声。

 美咲はそれを感じ取る。

 

『自分でやるって決めた戦いを放るなんて、お前らしくないだろ』

「……」

『俺との別れ、まだ受け入れられない……そうなんだな』

「当たり前……ですわ。貴方といた時間は……」

『……なんというか、ちょっとだけ嬉しい気がするよ』

「え?」

『俺みたいな奴の事、他の事が手が付かなくなるくらい、辛いって感じてくれたんだろ? そんな奴、お前くらいだぞ』

「そんなこと……」

『お前は馬鹿だな。先が思いやられる』

「そ、そこまで言わないで欲しいですわ!」

『はは……。まあそれはそれとしてよ。楽しみにしてたんだろ? 明人と戦うの』

「……ええ」

『なら、今くらいそれに集中してやれ。好きだろ、頂点を目指して戦う事。好きな事してる時くらい、俺みたいな奴の事なんて忘れろ? 分かったな?』

「……」

 

 美咲は、敢えて首を縦に振らず……笑みだけ浮かべた。

 

「どうやら、終わりのようだな」

 

 美咲は振り下ろされた剣を掴む。

 

「いえ、まだこれからですわ!」

 

 ボムビットを至近距離で飛ばして、明人を吹き飛ばす。

 ボマーは再び動き出して、怯んだ明人に一撃を加えていく。

 

「裕太さん、貴方がそう言ってくれるなら……私はもう迷いませんわ!」


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