浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第二話

 運が悪いことに、その爆弾は、広範囲に爆風が広がる事なく、ほぼ彼女自身のみを吹き飛ばした。

 なのに不思議だ。

 爆風が収まり、爆炎のみが残ったそこに……彼女の姿は全く無かった。

 

「……?」

 

 見た感じ、髪の毛一本すらない。

 まるで、最初からそこにはいなかったかのようだ。

 だがあのタイミングで避けられる筈がない。

 

「どうなってんだ?」

「ここにいますわよ」

 

 は……?

 後ろから声が聞こえた。

 そこには。

 

「えええええええええええええッ!?」

 

 全くの無傷で、あの女がそこに立っていた。

 

「ゑ? ゑ? ゑ? どゆこと? お前あの状態からどうやって……?」

「お前お前と言われるのもあれですし、一度名乗りますわよ? 私はこの世の六つの大陸の角美しく咲く花。名前は六角美咲《ろっかくみさき》ですわ」

「ああ……どうも。福沢裕太《ふくざわゆうた》です……ってそうじゃなくて!」

 

 さっきはどう考えても、彼女はあの爆風に巻き込まれていた。

 アレで生き残れる筈が……。

 

「あ、私なら今の爆発で一度死にましたわよ?」

「はい?」

 

 死にましたって何?

 じゃあそこにいるのは……。

 

「ひいいいいいいいいいいいッ!」

「なんですの? 私がゴーストとでも言いたいんですの?」

 

 何言ってるのかは分からないけど、取り敢えずお化けなのかな?

 

「私は見ての通り生きてますわよ。ただ私を爆風で殺す事は出来ませんわ」

「いや! 全く信じられない!」

 

 第一こいつが言ってる事が本当なら、目の前で死者蘇生が行われたって事?

 

「言われましても、私も望んでこんな体質になったわけじゃありませんわよ。まあでも、この能力のおかげで私は爆弾が当たっても生き返れますが」

 

 いや確実に当てようよ……てか爆弾なんて物騒な物を携帯するな!

 

「は、はあ……」

「もう良いですわ。私は生徒会長ですし、遅刻するわけにはいきませんわ」

 

 美咲は溜め息を吐いてから、俺に背を向けて去っていく。

 振る舞いこそ変な奴だが、立ち姿だけは本当に綺麗だ。

 あんな人が職場にいてくれたら……俺の人生はどんなに輝いているか……。

 

「……職場? 遅刻? あああああああああッ!」

 

 すっかり忘れていた。

 俺もそろそろ出勤時間じゃないか。

 

「やべえ遅刻だァッ!」

 

 あんなクソな職場でも、俺は一度も遅刻や欠勤した事がないのだ。

 今更遅刻など出来ない。

 

「うおおおおおおおおおおおおおッ!!」

 

 少しだけ、胃が軽くなった気がする。

 多分着けば元に戻るかも知れないが、あの少女に勇気を貰えたからだろう。

 

※※※

 

 さて……何だかんだ言っても、やはりここに着くと胃が痛い。

 職場に到着だ。

 

「私立蘇我高校……この門で既に吐きそうだ……」

 

 そう。

 俺の勤務先は私立高校。

 それもただの高校ではない。この高校は、この世の地獄と形容してもおかしくない。

 

「おはようございます……」

 

 俺は職員室の扉を開き、タイムカードを押す。

 ギリギリ遅刻は免れた。

 

「……」

 

 まず……この学校の職員室がやばい。

 面接官の殆どにそういう雰囲気が無かったせいで気付かなかったが、まんまここの雰囲気はドラマとかで見る暴力団の事務所っぽい。

 何せ髪を染めたり、強面の男や一部女性がここの教師として働いているからだ。

 まあでも、この人達にそこまで罪はない。

 怖い人達だし、当然嫌な奴もいるが、割と優しい人もいる。

 だが話してる時以外の顔は……やはり怖い。

 これも訳があるのだが。

 

「はあ……」

 

 ここまではまあ、別に怖い見た目の人がいるだけだから問題にはならない。

 この学校の真の恐ろしさは、生徒達にあるのだから。

 

 


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