浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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足利明人とアイドル剣士 第二話

 

 秀未は兄と共に、既に料理が並べられている食卓へと足を運んだ。

 今日の夕食はカレーだ。

 三栄と秀未の大好物で、秀未に至ってはこの日をいつも心待ちにしていると言ってもよい。

 

「「「「いただきます」」」」

 

 四人で手を合わせてからそう告げ、秀未はスプーンを手に取りカレーを口へ運ぶ。

 明智家のカレーは中辛だ。

 丁度良い辛さのルーが口の中に溶け、柔らかいお肉と共に踊っている。

 三栄も口元に笑みを浮かべていた。

 それを見ると、秀未はいつもこう思う。

 

 ――母上が作るようなカレーを、私も作れるようになりたい! と。

 

 ただ残念ながら秀未の料理は兄以外の者には受けが悪い。

 自分で作ったお弁当を他の門下生と共に食べた事があるが、食べた者はその後すぐに早退した。

 兄には今の所そんな事は起きていないが、自分の料理の腕では母のカレーと同じものを作る事は出来ないだろうし、最悪の場合とんでもなくマズいものが出来る可能性がある。

 それなら兄に食べさせる事はまだ出来ない。

 今は作りたい欲望を抑え、このカレーの味を研究しようと言い聞かせ、秀未はカレーを食べ進める。

 

「今日の皆はどうだった? 三栄」

 

 父……元師範が三栄に問いかけた。

 

「皆非常によく成長していると感じられました。そろそろ昇段試験を受けようとしている者もいますし、あの調子で努力を続けて欲しいものです」

「そうか」

 

 三栄は門下生達の前では厳しい態度を取るが、一人一人の実力をきちんと把握し、こうして見えない所で成果を報告している。

 内心は色々不安もあるかも知れないが、兄は師範に就任した十二歳の頃から、ずっと立派な師だ。

 家督を継げない以上、秀未は免許皆伝をしたら恐らく、平凡な剣道選手として生きるか、普通に就職して生きる事になるだろう。

 ああして報告したり、門下生に厳しく指導したりしているのが自分だったら……と思う事もあるが、それを羨んでも仕方ないと気付いたのが最近だ。

 兄は先に生まれたからというだけでなく、師範に相応しい実力を幼い頃に備えていた。

 昔は兄も人間なのだから、自分も頑張れば追いつけると思っていたが、ある日を境にそう思わなくなった。

 自分はどうだろうか。

 泣いてばかりで、剣の腕はその歳の頃の兄になど到底及ばない。

 そんな弱い自分には、その内明智家での居場所は無くなってしまうだろう。

 

「秀未は今日も無敗だったらしいじゃないか、よくやってるな」

「はい、お褒めいただき光栄です。父上」

「どうした? あまり元気が無いように見えるが」

「あ、いえ。そんな事はありませんよ」

 

 秀未はそう言いながら残ったカレーを食べ進める。

 三栄がそれを気にして見ていたような気がして、食べ進めてから誤魔化す為に話題を変えた。

 

「そ、そうです兄上! 最近何か事件とかはありましたか? 明智近影を抜くべき相手には出会えましたか?」

「秀未、あまり軽々しく明智近影が抜かれるなどと……」

「あ、す、すみません……」

 

 父に怒られてしまった。

 これは少し、兄がおかしいだけなのだ。

 明智近影は、代々明智家の人間に引き継がれる明智家の宝。

 その気になればどんな強固な鎧をも切り裂く力を持つ名刀ではあるが、仮に使われるとしたら、それは誰かから血が流れる事を意味する。

 そんな事、ない方が本当は良いのだ。

 父は兄が警察と共に戦う事に関しては、寧ろ良いと思ってくれているようだが、あまり刀を使って欲しくないとは思っているらしい。

 

 しかし兄は違う。

 剣術だけでなく、剣そのものを愛する兄は言っていた。

 剣は飾りじゃない。使われなければ生まれた意味を成さない。

 だから使うべき相手が現れるのを心待ちにしている……と。

 そんな夢を語っていたが、結局は現れずに十年近くが経っている。

 父には悪いが、兄の頑張る姿を見ていると、どうしても兄の夢を応援したくなる。

 応援はしているが、結局今の所叶った事はない。

 

「結局会えてないな。まあ……それが良い事なのだろうけどな」

「三栄もいい加減、刀を抜くべき相手を探すなどよしなさい。明智流は人を守る事をモットーとした流派。もし人を傷付ける為に使ったその時は、例えお前であっても師範の資格はないと思え」

 

 父が厳しい目でそう告げた。

 だが三栄は動じず、真っ直ぐな目で父を見つめる。

 それでも刀を抜くべき相手を探したい、そう言いたげな目で。

 

「もう二人とも、ご飯が冷めますよ」

 

 見かねた母が場の緊張を解かんとそう告げた。

 二人は見つめるのを止めて、食事に戻る。

 秀未も安心して、もう一度カレーにスプーンを運ぶ。

 

※※※

 

 食事が終わった後、秀未は皿を片付けた。

 自室に戻る前に、食後の緑茶を飲む三栄に声を掛けてから自室に戻ろうとする。

 その時。

 

『ピンポーン♪』

 

 チャイムが鳴る。

 秀未はすぐさま玄関前まで移動し、戸の前に立つ客人に「はい」と告げた。

 

「すみません滋賀署の者なんですが、明智三栄さんはご在宅ですか?」

「兄に御用ですね。今鍵を開けますので、少々お待ちください」

 

 鍵を開けると、スーツ姿の二人が戸を開いて中へ。

 

「こんばんは」

「こんばんは。今兄をお呼びしますので」

 

 秀未は頭を下げてから、三栄を呼びに行く。

 

「兄上、警察の方がお見えになられています」

「分かった」

 

 茶を飲み干してから立ち上がる兄。

 兄は玄関まで歩いてから、応接室の戸を開きスーツの人達を中に。

 秀未は耳を澄ませて、スーツの人達と三栄の会話を聞き始めた。

 

「今回はどうされました?」

 

 三栄がスーツの人達に問いかける。

 

「はい、実は最近指名手配中の凶悪犯がいまして、警察公認の協力員である三栄さんにも依頼したくて来ました」

「こちらが今回の犯人です」

 

 紙を置く音が聞こえる。

 恐らく犯人の写真のようなものでも置いたのだろう。

 

「灰色の怪物?」

「そうなんです。特撮とかに出てくる感じの怪物が、被害者を灰化させていると通報があって。警官隊を向かわせたりもしたのですが、残念ながら数人が殉職。これ以上刺激するのは危険だと判断が下りまして」

「なるほど……」

「三栄さん、今回の犯人……止められそうですか?」

 

 スーツの人達が三栄に聞く。

 

「分かりました。やりましょう」

 

 三栄は躊躇いなく答えた。

 やはり自分の兄だ、と秀未は内心誇らしく思う。

 だが……。

 

 ――私も兄上のように戦いたい。

 

 自分も戦えれば、と秀未は思う。

 今回に限った事ではない。

 兄に仕事の依頼が来る度に、何度も思った事だ。

 自分が協力出来れば、兄と同じ強さでなくても、例えその内明智の家に居られなくなっても、自分は明智の剣士だと誇りを持って生きられるのにと。

 兄の背中を守るだけでも、自分はその資格を得られる筈だ。

 

「よし」

 

 秀未は小さな声で呟く。

 今度こそ三栄にお願いしよう、と秀未は決意する。

 自分だって明智流をある程度極めている。

 兄の足手まといになどならない筈だ。

 秀未はそう心に決めて、戸を叩く。

 

「はい」

 

 三栄が戸の奥で問いかける。

 

「秀未です、入っても大丈夫でしょうか?」

 

 三栄は少し黙り込んでから、二人に確認を取る。

 許可が取れたのか、少ししてから三栄は告げた。

 

「どうぞ」

 

 三栄の合図の後、秀未は入室する。

 

「すみません、こちらは私の妹の

「刑事さん。兄の仕事、私にも任せていただけないでしょうか」

 

 そして真っ直ぐな目で、刑事を見つめた。

 

 

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