浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー 作:門矢心夜
「くっ……」
吹き飛ばされた秀未の手から、明智近影が転がっていく。
拾おうとしたが、一瞬にして距離を詰められて脚を掴まれた。
「ああッ!」
「よくやったけどよ、殺す気のないお前の剣じゃ、俺様は止められないぜ」
「……!」
「明智……今思い出したけど、お前アレか。あの剣術道場の人間か」
怪人がゲスな笑みを浮かべたように見えた。
「そうかそうか、すげえ剣術使う奴らって聞いたけど、こんなに弱かったんだな……ハハハ……」
怪人は笑う。
秀未の中で怒りと……そして悔しさがこみ上げる。
奴が笑ったのは、秀未の事だけじゃないだろう。
兄や父、そしてその前の代の師範まで笑っているのだろう。
自分のせいだ。
自分の気持ちの為に、勝てもしない戦いをしたせいで、兄達まで笑い者にされてしまった。
……完全に自分のせいだ。
「でもありがとよ。これで自信がついたよ。最強と呼ばれてる明智の剣士すらこうして捻れる力が付いたんだからな」
「……」
秀未は泣きそうだった。
そして……心の中で詫びた。
――申し訳ありません、兄上……私のせいで、兄上達は笑い者になってしまわれました……。
そして秀未は、歯を食いしばった。
許せない、先の会話でより強くそう思った。
家族を馬鹿にしたこの男を、許したくない。
「さーて、じゃ、灰にしてやるか……いや、待てよ」
怪人は少し考える。
そして下衆な笑みを浮かべた……ように見えた。
「お前灰にしてやるには惜しいな。良い身体してるし、殺してから使ってやるよ」
その言葉に、秀未の身がゾクリとした。
具体的な事は言ってないが、その言葉に性的なニュアンスがありそうなのは、秀未でも理解出来た。
殺されてしまう上、死んだ後自分の身体を……。
そんな辱めを……。
「じゃあ……お前の心臓を軽く一刺ししてやるよ」
「……!」
怪人は拳を握る。
そして、それは自分に突き刺さる……筈だった。
「ごあッ!」
怪人の呻き声。
そして体勢を崩した怪人の背中には、大きな切り傷が。
間違いない。
怪人にこの傷を作れる者など。
「ふん……やっと来たか」
怪人はすぐにその顔に笑みを浮かべ、その者の名を呼んだ。
「足利明人!」
足利明人が、剣の怪人の姿で……秀未達の前に現れる。
※※※
「あ、明人さん!」
秀未の喉から、何とか声が出た。
「……無事のようだな」
そう呟く明人。
呟いてから、今度は怪人に目を向ける。
「待ってたぜ、アンタの事をよ」
「手を引けない、というわけだな」
明人はそう問いかける。
そして答えを待たずに告げた。
「そうなら、もう容赦はしない。例えお前の命を絶ってでも、ここで止めるのみだ」
「命を絶つ? はあ……悪いけど、絶たれんのはアンタだよ」
先ほど明人に切り刻まれた割には、随分と自信満々な態度の怪人。
明人は警戒しながら剣を構える。
怪人は青年の姿を取ってから、近くに置いていたアタッシュケースを開く。
そこにあるベルトのようなものを腰に巻いてから、携帯電話のようなアイテムを操作。
『STANDING BY』
待機音のようなものが流れ、青年は変身の構えを取る。
「変身」
携帯電話をベルトに差し込むと、電子音声が流れた。
『COMPLETE』
青年の身体の上を、金色の線が走る。
そしてその線以外の部分の肉体と顔を、黒い鎧が包んでいく。
まるでその姿は、特撮ヒーローのようにも見えた。
「カイザ……これが新しい俺の力だ」
そう名乗る青年。
青年が変身したカイザは、携帯電話の上に取り付けられた小さな部品を取り出すと、手にしていた銃に填めた。
『READY』
電子音声と共に、銃から金色の光……刃のようにも見えるものが飛び出る。
それを逆手に構えたカイザが、明人へと斬りかかった。
「はァッ!」
「……」
明人は声すら上げず、剣で攻撃を見切って防いでいく。
「ハッ! セイッ! ヤアッ!」
キン、カン、ジジジと何度も刀身をぶつけ合った後、二人は競り合う。
「……」
「やっぱり流石蘇我高の生徒会長ってこったな。それくらいはやるか……だが」
カイザは銃剣で強く弾いて、明人の体勢をやや崩す。
そしてわざと銃を明人の足元に放ち、集中を逸らした。
「こっちだぜ」
銃撃で生み出された煙の中から、カイザは蹴りの体勢のまま現れる。
明人は何とか剣で防ぐが、カイザは余裕だった。
ベルトの携帯の『ENTER』を押すカイザ。
『EXCEED CHARGE』
音声と共にベルトから、スーツの金色のラインに沿って、脚へと向かっていく。
脚に取り付けられた、双眼鏡のようなアイテムから、金色の光が放たれる。
槍の如く明人の身体を刺した光が、明人の動きを封じた。
「ふんッ!」
カイザは大きく飛び上がり、片足を突き出す。
足の裏から、黄金の光が放たれる。
「はあああッ!」
飛び上がったカイザは、明人の身体を刺した光に吸い込まれるように突き刺さった。
明人の身体をドリルのように穿とうとしている。
「くっ……!」
だが明人は、寸での所で回避して隙が出来たカイザに斬りかかる……が。
「遅いぜ!」
ダメージを負った明人の隙を、反対にカイザが突く。
カイザの拳が、明人の胴に突き刺さり、大きくその身体を吹き飛ばした。
「ふん……」