浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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足利明人とアイドル剣士 第九話

 

 明人は、今自分と戦っているカイザの戦力を冷静に分析していた。

 だが少し剣を交えただけで分かった。

 あのデバイスの性能は相当高い……と。

 恐らく今の自分では、苦戦……どころか敗戦は免れない。

 

「……」

 

 明人は自分の持ち物から、あるアイテムを取り出す。

 ソードドライバーよりも遥かに光輝く、白銀の剣のエンブレムのバックル。

 バックルではあるが、それ単体で変身するものではなく、ソードドライバーに取り付ける形式になっている。

 蘇我高校を卒業して去った二年後に、狩野遥に貰ったもの。

 確か名称は『エクスカリバーアップデーター』。

 

『君の力を最大限に発揮する為のガジェットだ』

 

 同封された手紙にはそう書かれていた。

 明人は受け取ってから、来たる六角美咲との戦いに備えて、その力を使った修行を行おうとした事もあった。

 だが……結局変身は今の所叶っていない。

 狩野遥にも連絡し、一度調べて貰った事もあるが、特に異常もなく。

 この変身を行うには、明人自身の強い心が必要だと告げられた。

 そう言われてから、自分が変身を行えない理由を考え続け、何度も試したが出来なかった。

 足りないものが何なのか、それだけが頭に残ったまま二年が経過して。

 答えが見つからなかった明人は、この街に戻ってきた。

 蘇我高校に入る為だけに引っ越してきた、この街に。

 この街なら初心に帰れる、そういう理由もあったが、この変身を行う上で超えなければならない壁が一つあったのを思い出したからだ。

 六角美咲だけではなく、自分にとっての好敵手はもう一人いた。

 明智道場の師範……明智三栄。

 入学試験の前、明人は三栄に挑んだ事があるが、全く歯が立たなかった。

 今まで大人にすら負けた事が無かった自分が、同い年の者に喧嘩で初めて惨敗を期したのだ。

 だから、いつかは倒さなければと思った。

 これから更なる強さを手に入れる為にも、いつかは絶対に超える必要があると思ったから。

 まだ今の自分は、三栄に勝てるかどうかは分からない。

 だがこの日まで、明人は毎日のように修行を積んだ。

 今なら出来る……そう信じるしかない。

 信じなければ、三栄と戦う前にあの男に負けてしまう。

 

「……!」

 

 明人はベルトに取り付け、バックルにあるボタンを押す。

 が……。

 

「ごあッ!」

 

 バックルはソードドライバーから弾かれ、変身も解けて、自分も近くの鉄柱に叩きつけられた。

 

「おーおーおー、それなーに? アンタの新しい力か?」

 

 カイザが明人を煽る。

 変身していない状態の明人に向けて、カイザが銃剣の光弾を放つ。

 ベルトの携帯電話も取り出して、コードを入力。

 

『BURST MODE』

 

 携帯電話の上画面を傾け、まるで拳銃のような形に変形させ。

 アンテナ部分からも光弾が放たれる。

 銃剣と合わせ、二丁拳銃状態のカイザの光弾を、明人は何とか避けていく。

 そして、避けながらもう一度アイテムを拾う。

 

「くっ……頼むぞ」

 

 バックルをもう一度ソードドライバーにはめ込み、ボタンを押す。

 

『ERROR』

 

 その音声が無慈悲に流れ、明人は吹き飛ばされる。

 

「ぬあッ!」

 

 地面に叩きつけられる明人。

 もう一度手を伸ばそうとする。

 それを見たカイザが、明人の手に光弾を放つ。

 

「くっ!」

 

 手を貫通する光弾。

 手の甲が無慈悲に焼け、それを見たカイザが呟く。

 

「いやー、もしかしたら負けちゃうかもなんて思ったけど、これなら楽勝そうっすね」

「……」

 

 明人はカイザに目を向ける。

 

「分かっただろ? 弱い奴の気持ち。俺はその立ち位置で辛い思いをして生きて、たった一度の失敗で殺されて死んだんだ」

 

 追い打ちを掛けるように、カイザの銃撃が腕や脚を貫く。

 

「アンタにそれを分からせる事が出来て嬉しいよ……」

 

 カイザは笑う。

 だが明人は、それを否定する。

 

「ふん……これで分からせたつもりか」

「あ?」

「お前は……強くなどない。本当に強い者は、弱者をいたぶって笑わん。更なる強者を常に求め、前へと進む意志を持てる者だ……」

 

 傍から見れば、苦し紛れの言葉だ。

 だがカイザは、それを聞いて怒りを覚えたようだ。

 

「ちっ……やっぱムカつくなアンタ」

 

 今度は頭を撃ち抜こうと、銃剣を自分に向けた。

 

「もうちょいいたぶってやろうかと思ったが、正直イライラする。早く死ね」

 

 自分は……ここまでなのか。

 明人は心の中で、そう思った。

 自分は、三栄や強くなった美咲には勝てなかった。

 あの戦いの時も、自分は何も出来てはいなかった……。

 蘇我高校の元生徒会長、カイザが明人のそんな肩書を見てどう思ったかは分からない。

 けど……今思えば、俺は本当の強者にはどう頑張っても追いつけない弱者。

 背中を追いかける事しか、出来ない……。

 

「……」

 

 明人は歯を食いしばる。

 

「覚悟出来た、そんな所?」

「……」

 

 食いしばって、俺は思う。

 ここで死ぬなど、やはり出来ない。

 六角美咲なら、こういう時でも諦める道など選ばない。

 諦めず、死んでも諦めないなどというだろう。

 自分にはあんな能力は無いが、あの負けず嫌いを見習うくらいは出来る筈だ。

 

「ああ、覚悟は決めたぞ」

「あ?」

「絶対、ここで死なないという覚悟だ」

「ハッ……何馬鹿な事言っちゃってんだ。もう俺が一発撃ったら終わりなんだよ。ベルトとか取ろうにも、ちょっとでも指動かしたら殺すつもりだし、アンタ詰んでんだよ」

「俺の知る強者は、そんな詰みな状況でも諦めたりしない」

「へぇ……なら、やってみろよ」

「ふん……」

 

 明人は、一旦考えるのを止めた。

 変身が解かれている自分と、スーツを纏う青年。

 攻撃を回避する算段などするだけ無駄だ。

 ならば、回避しなければ良い。

 

「……ッ!」

「野郎!」

 

 宣言通り、動いた明人にカイザが光弾を放つ。

 勢いよく放たれる光弾は、明人の急所を狙う。

 何とか急所のみは外して、明人はベルトを取ろうと動く。

 だが、思ったより辛い。

 ミスをすれば死んでしまうし、出血が増えれば自分の体力も削れてしまう。

 早くベルトだけでも、そう思ったその時……。

 

「!」

 

 光の弾が止んだ。

 先まで飛んできていた方向に目を向けると、あの少女の姿があった。

 

「明智……秀未……」

「明人さん、弾は私が受け止めます!」

 

 

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