浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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足利明人とアイドル剣士 第十一話

 

「願い、努力しても、自分の望む物なんて手に入るかどうかは分からないし、そもそもその努力が自分に出来るのかどうかすら、やるまで分からない。努力すら出来ず死ぬ者もいる。ただ一つ言えるのは、現実と向き合わずに他人や周りの環境に八つ当たりをするような者に、望む物など手に入らないという事だ」

「なんだよ……なんだよそれ」

「お前が手に入れた力を、自分を高める為に使えれば、お前が本当に欲しいものが手に入ったのではないか?」

「……」

「それとも、ここで死ぬ事が本望だったのか?」

「……ハハ……ハハハ……。アンタ、やっぱ俺じゃ理解なんて出来ねえや」

 

 青年は笑いながら、涙を拭く。

 

「俺はアンタらみたいに誰かの下とか御免だ。そのせいで死んだのに、誰かの下で満足なんて出来るわけねえだろ」

 

 明人は、秀未を強者と認めてくれた。

 けど……青年の気持ちは理解出来た。

 本当は自分の憧れの人より強くありたい。

 下なんかで満足したくない。

 自分に自信を持ちたい。

 青年は誰かの下だったというだけで一度命を失った。

 自分なら、それでも歪まずにいられるだろうか。

 

「あーあ……最悪な人生だったな。最後の最後まで、俺は強者がマウント取る為の都合の良いザコのままでさ……ホントに……さいあk……」

 

 青年は、そのまま物言わぬ灰へと姿を変えた。

 明人がそれを確認してから、変身を解く。

 

「もし生まれ変われた時は、幸福の為に努力出来る強い人間になれる事を、俺は祈っておく……」

 

 目を閉じて、明人はそう呟いた。

 

※※※

 

 明人の黙祷が終わった後、秀未は明人に近付く。

 

「……」

「ありがとう、ございます……」

 

 そして、もう一度礼を言った。

 

「礼を言うのは、こっちもだ。お前の言葉で、俺も目が覚めた」

「そんな……私なんて明人さんに比べたら……」

「なら、比べる必要がないくらいまで腕を磨けば良い」

「え……」

 

 秀未は思う。

 自分に、そんな事が出来るのか、と。

 だが明人は言う。

 

「お前は掟を破っても自分が強くなる事に拘り、その上戦いの中で大切な事に気付けた。あとはお前が、これからどう考えて進むかだ。もしそれがお前にとって正しい道なら、結果はあとでついてくる。俺に負けた一人の少女は、そうして俺を倒したんだ」

「私が、その人のように……努力すればなれるのですか?」

「それは分からん。あいつの根性も考えも、俺の知る常識を逸脱していて、正直さっきも真似しようとして痛い目を見た」

 

 自分の身体を見て、やれやれという顔をする明人。

 そして真面目な顔に戻り、

 

「一つ助言をするなら、明智秀未。もう明智の人間だからという考えで強くなろうとするな。お前はお前だ。明智の人間すらも超える強者を目指して歩け。目標は高ければ高い程、道を進もうとする気持ちが強くなる。だから、そうやって生きてみろ」

「……けど、私はこれから勘当される身。これ以上強くなる事は……」

 

 出来ない。秀未がそう呟こうとする前に、一つの声が聞こえた。

 

「諦めるのか?」

 

 明人の声ではない。

 誰よりも愛しいと思う、厳しくも優しい響きのその声。

 兄……三栄の声だ。

 

「あ……兄上!? どうしてここに……!」

 

 秀未は動揺する。

 三栄は至って冷静に、秀未に告げた。

 

「どうしても何も、僕は全て見ていた。お前は完璧に盗んだつもりかも知れないが、自分の持ち物が盗まれて気付かないわけがない」

「それならどうして……」

「父には反対されるかも知れないが、僕はお前を試したかった。向上心が高く、負けず嫌いなお前が力を手に入れた時、どういう風に動くのか」

「……」

 

 秀未はやや俯く。

 それなら、きっと兄は思った筈。

 

「それなら、言わなくても分かってます。私には、この刀を振るう資格はまだない。私は兄上や、そこの明人さんの足元にも及ばない。私の力など……」

「確かに、お前の力は完全ではない」

 

 三栄はそう告げる。

 

「試合で勝てるだけの強さでは、生死に関わる戦いを生き残れない。ましてや、それで満足しているなら尚更だ」

 

 三栄が、秀未に言った言葉だ。

 今回の戦いで、それは身に染みていた。

 刀で傷付けてしまうかもと恐怖したり、死んでしまうかも知れないと恐怖したり、悔しいと思ってもそれを覆せない事に絶望したり。

 そんな醜態を晒した自分など、褒められたものではないとよく分かる。

 

「……」

「だが、お前はそれでも自分がやれるだけの事をした。敵を倒す力だけが、生死に関わる戦いで必要なものではない。己の役割を果たし、敵を倒す力を持つ者の動きを学び、これからに活かす。それも必要な力だ。そしてお前は、最後にそれを果たす事が出来た」

 

 秀未は顔を上げた。

 

「明智秀未、よく戦った」

 

 三栄はそう、秀未を称賛する。

 秀未はこの時ばかりは兄に対しての顔ではなく、師に対しての顔をして深く頭を下げる。

 

「大変勿体ないお言葉にございます」

 

※※※

 

 明人はそれを見届けてから、そのまま帰ろうとした。

 だがそれを、三栄が止める。

 

「お前は確か、足利明人だな」

「……」

 

 立ち止まった明人に、続けて言う。

 

「妹を守ってくれた事、礼を言う」

 

 明人は振り向かずに告げる。

 

「……それほどの強者なんだ。死ぬのは惜しい」

「お前もやはり、分かるのだな」

「ああ……分かるさ。お前が強者とは何かを教えてくれたからな」

 

 今でも、明人は三栄の言葉を覚えている。

 自分を倒した三栄が、明人に竹刀を向け言った言葉を。

 

『お前が強くなろうとしているように、お前がこれから戦う相手も日々強くなる。今お前が僕を倒せた所で、その先で僕より強い相手に当たればお前は負ける。お前や僕が目指す場所とは、元より存在しない領域だ。目標は大事だが、終点を自分で決めては強くはなれんぞ』

 

「秀未は最後に、存在しない終点を目指す決意をした。お前と同じようにな」

「……」

「そいつはこれからも強くなる。そしていつか、またその刀で俺と戦うように頼んでくれ」

 

 明人は振り向いてそう頼む。

 三栄は瞳を閉じて、少し笑んだ。

 

「構わない」

「……ふん」

 

 明人も小さく笑む。

 今度こそ、背を向けた。

 そして……約束を交わす。

 

「またいつか、お前に挑みに来る。その時まで、その剣を鍛えておけよ」

 

 再戦を誓った好敵手の言葉は、至って単純だ。

 

「言われるまでもない」

 

 その言葉を聞き、明人は歩き出す。

 明人はこれからも、自分の思う強者を目指す。

 三栄、美咲、そして秀未のように。

 明智秀未がこれからも精進して、三栄と交わした約束を守れれば、いつか戦える日も来るだろう。

 そう思えば、活力になる。

 

 

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