浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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足利明人とアイドル剣士 第十二話

 

 あの日から、数日の時が過ぎた。

 第一発見者が兄である三栄、そして三栄も自分が出掛けた理由を警察の依頼をこなしに行くという嘘を吐いてくれたおかげで、この件はお咎めなし。

 問題なく秀未と三栄は弟子と師範、そして妹と兄に戻った。

 明人さんが言っていたいつか戦いたいという約束、秀未もそれを果たしたいと春休みの期間を修行に費やした。

 今は……いくら思い出しても、あの強さに追いつけるイメージがない。

 けど、背中を追えれば前に立てていた目標くらいは越せるかも知れないし、明人さんと並べるかも知れない。

 そう信じるしか、自分に出来る事は無いのだから。

 

 そして、そうしていたらいつの間にか春休みが終わっていた。

 今日は入学式。

 だが秀未のやる事は変わらない。

 朝食前から、道場で一人竹刀を振るう。

 強者と戦う事、命のやり取りをする事も意識しながら。

 心臓が激しく跳ねる音がする。

 あの戦いを経ても、まだ命のやり取りに身体がついていけていないせいだろうか。

 それもきっと慣れる。

 身体と共に心が強くなれば。

 

「強くなるのは構わんが、人の命を奪う事だけは考えるなよ」

 

 竹刀を振るう秀未に、近くを通った三栄が声を掛けた。

 秀未は振る手を止めて、頭を下げる。

 

「おはようございます、兄上」

「あの日から精が出るな」

「いいえ、私は変わりません。明智の人間として、誇りを持てるようになる。その為に、自分の知る強者達の背中を追う。心構えだけです」

「……それで良い」

 

 三栄は笑みを浮かべる。

 そして背中を向けてから告げた。

 

「朝食が出来ている。今日は入学式であろう? 遅れるなよ」

「はい!」

 

 秀未は大きな声で、兄の言葉に答える。

 

※※※

 

 あの後道場を出て、秀未は入学式を迎えた。

 他所の道場の人と試合する時と同じように、保護者席から兄が秀未の姿を見ていた。

 兄が自分を見る、という光景は同じ。

 だけど、不思議と緊張した。

 校長の話を聞いて、退場し終わった時は、初めて兄の前で誰かと試合して勝った時のような達成感を感じた気がする。

 そしてクラスに戻ると、試合が終わって控え席に戻った時のように落ち着けた。

 これから三年間を共にする学友達と馴染めるかどうか、そういう不安もあるが、それは始まってから考えれば良い。

 今はただ……こうして落ち着いていたい。

 

「あれ……もしかして」

 

 机に身体を預けていた秀未に、声を掛ける少女が一人。

 聞き覚えのある声。

 秀未が顔を上げて声の方を見ると、見覚えのある顔があった。

 

「お主は……」

「あの時のバスターミナルで、助けに来てくれた子……だよね?」

 

 忘れもしない、あの日バスターミナルで秀未が逃がした少女。

 あの時秀未は怪人を倒せなかったが、自分の行動で何とかあの場にいた命だけは守り通せたのだけは、秀未は誇りに思う事にしていたから。

 けど、また会えるとは思っていなかった。

 だからか、助けてくれた子と言われた時に、はいというのも照れくさくて。

 

「た……助けてはない。私は結局、怪人には勝てなかったしな」

 

 秀未はそう答える。

 だが少女は首を横に振るう。

 

「ううん、良いの」

「あの時君が助けてくれたから、まひはこうして生きてる。それだけで十分有難いよ」

 

 少女は笑顔でそう言う。

 秀未も不思議と、笑顔になっていた。

 

「そうか」

 

 それ以上の言葉は、考えても思いつかなかった。

 だが少女の方から、手を伸ばしてくれた。

 

「私、雪空真宙(ゆきぞら まひろ)。よろしく!」

 

 こういうのって結構、試合前に他の道場の人とやっても照れくさいのだが、秀未は無理矢理にでも笑って返す。

 

「明智……明智秀未。その……これから三年よろしく頼む」

「うんうん!」

 

 秀未も手を握る。

 そして真尋は言う。

 

「ねえねえ、その……秀未さ」

「なんだ?」

 

 もじもじしている真尋は、何とかこう告げた。

 

「秀未はその、アイドルとか興味ない?」

「アイドル……? その、歌って踊るというアレか?」

「うん!」

 

 秀未はあまりテレビを見ない方だが、アイドルの存在くらいは分かる。

 あと……。

 

「すまないが、私には向いていないと思う……」

 

 歌も踊りも未経験の自分が、いきなりアイドルなど出来るわけがないという事も分かっている。

 オーディションを受けたら落選間違いなしだろう。

第一、 秀未自身自分をそんなに可愛いと思った事はない。

 

「んーと、やってみたいとも思ってない感じ?」

「そうは言ってないが、私に出来るとは思えないし、それに……私にはやるべき事が」

 

 明人と交わした約束の為にも、これから一生懸命特訓を続ける必要がある。

 そんな自分がそれを放棄するなど……。

 

「今のアイドルは、選ばれてなるものじゃない。なって魅せる事が出来た者が、選ばれるものだよ!」

 

 真宙がスマホの画面を見せる。

 アマチュアアイドル。

 確か最近流行り出したという、スポーツとして歌と踊りのパフォーマンスをするという競技。

 芸能活動というよりかは、一種のスポーツという認識が強く、誰でも始められる上、大きな大会で良い成績を残せれば芸能界へという話もあると聞いた。

 確かにこれなら、なるだけなら可能だ……しかし。

 

「それでも、私にはやる事が……」

「なら、たまにでも良いよ。それでも、ダメかな?」

 

 真宙は懇願する。

 断れなさそうな雰囲気、中学の時までこんな誘いを受けた事が無かったから、正直困惑していた。

 けど事件がキッカケとは言え、初めて対等に話せそうな友を作れる機会。

 今まで修行漬けで休む暇を用意した事も無かったが、息抜き程度でも良いというのならば……。

 

「仕方ないな」

「ホント? 良いの!?」

「息抜きで参加する程度であれば、別に良い。だが……私はこの十五年剣のみしかやってこなかった身だ。お主と同じように出来るかは正直分からんぞ」

「まひも自信は無いよ。だからまずは、自信を付けられるように頑張りたいの」

 

 真宙の言葉は前向きだ。

 剣の道とアイドル、ジャンルは違うが、上を目指す事への前向きな気持ちという点では変わらない。

 真尋からも、意志の強さを感じた。

 

「一人じゃ不安だなって思ったけど、まひを助けてくれた秀未が傍にいてくれれば、きっと勇気が湧いてくるかもって思ってさ。だからその……まひは秀未となら上手くいくって信じるから、秀未もまひとなら上手くいくって信じて……くれる? その押し付けっぽくなっちゃったけど」

 

 真尋は照れた顔で言う。

 

「私がいる事でお主の役に立つなら、それは付き合う。それに……私は何も分からない。もしこれから始めるのだとしたら、お主だけが頼りだ。頼むぞ」

「勿論!」

 

 真尋は手を引っ張る。

 

「さっ、行くよ」

「い、いきなりか」

「こういうのは勢いが大事なんだよ! 早く行くよ!」

 

 こうして、二人は友となった。

 明智秀未、そして雪空真宙。

 彼女ら二人が、アイドル『Rhododendron』として活動する日々は、また別の話……。

 




新作予告

『今日からアイドルを始めたい! 五周年記念作品』

杉谷寿奈「――私が、アイドル?」

かつて天才的なサッカーセンスと、アクロバットとの合わせ技で中学サッカーの頂点に立っていた少女『杉谷寿奈』。
ある事故が原因で〇×女子高に入学した少女は、上級生である服部正子にアイドル部へとスカウトされる……。
五年前の青春が、ここに生まれ変わる。
『(新)今日からアイドルを始めたい!』 今年製作決定!!

という事で、今日からアイドルを始めたい!が五年の時を経てリブートが決定しました。
今年中にはカクヨムで投稿する予定なので、是非今日からアイドルを始めたい!の方もよろしくお願いします!

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