浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第三十三話

 

「か……はっ……」

「……」

 

 段々と締め付ける力が強くなっていく。

 頭から血が引き、寒気が支配する。

 美咲は何とかしようとするが、身体に力が入らない。

 

「会長!」

 

 それを見かけた山内が近付き、火炎放射器怪人へと変身する。

 

『COMPLETE』

 

「お前もか……」

 

 美咲の首から手を離し、火炎放射器怪人に相対した。

 

「フルバースト」

 

 高速移動し、裕太の背後に回る。

 威力を弱めて、うなじを軽く叩く。

 

「くっ……」

 

 裕太を気絶させる事に成功し、変身を解く。

 

「大丈夫? 会長」

「借りが出来てしまいましたわね」

「そうね」

「山内さん」

「何?」

「何故私から距離を取りますの?」

「え? だって、アンタ鬼でしょ? この隙にタッチとか

「そんな卑怯な事しませんの!」

 

※※※

 

「うう……」

 

 うなじが痛む……。

 確か俺は、鬼ごっこで美咲と遭遇して……。

 

「起きましたのね」

「……」

 

 俺は上体を起こす。

 

「鬼ごっこはどうなったんだ?」

「私が裕太さん以外を全員タッチして終わりましたわよ」

「そうか……ん? 俺以外?」

 

 そういえば。

 

「俺はどうして寝てたんだ?」

「覚えてないんですの?」

「え?」

「項垂れたと思ったら急に私の腹に拳をぶち当てて、私を殺す気で暴れだしたんですのよ?」

「そ、そうなの?」

 

 思い出そうとしてみるが、そんな記憶はない。

 急に意識が閉じてからの記憶がない。

 

「すまない、思い出せない……」

 

 取り敢えず美咲に頭を下げる。

 

「良いですのよ。結果死ななかった事ですし」

「……」

 

 俺は黙り込む。

 黒フードに会ってから、俺は自分が分からなくなり始めた。

 そして今も、俺が知らない間に美咲を殺しかけていた。

 気にするなと美咲に何度も言われたが、今回ばかりは出来そうもない。

 

「私なら大丈夫ですの。もし次暴れだしたら、私が力づくで止めますわ」

 

 自信満々な顔で、俺にそう告げる。

 

「ああ、そうしてくれ」

「さあ、夕飯の支度をしますわよ。また買い出しを頼みますわ」

「え、あ、うん」

 

 俺は言われるがまま立ち上がる。

 そのまま車まで向かおうとするが、一旦美咲に呼び止められた。

 

「これだけは言わせなさい」

「な、何?」

 

 口元を少し緩める美咲。

 

「やれば出来るじゃないですの」

「ほ、褒められても困るな……」

 

 ※※※

 

 結局あの力もしばらく発現せず……修行の日々が続き。

 美咲と明人の戦いから丁度二週間後。

 ついに約束の日がやってきた。

 

「……いよいよ決着の時ですわね」

 

 蘇我高校。

 懐かしいような、もう二度と来たくなかったような、複雑な気分でいっぱいな学校の門を再び潜る。

 また胃痛に襲われそうになるが、美咲が肩に手を乗せて来た。

 

「私がいますわ。もっと堂々としてなさいの」

「お、おう」

「へー、ここが蘇我高校ねえ」

「ウチも初めて来た系」

「優香も来てたのか」

「もう関わった以上、ウチも部外者じゃない系じゃん?」

「そう……なのか?」

「細かい事気にしちゃダメ系ダメ系」

 

「ようフク」

「ギクッ!」

「女連れか? 観客席はあっちだぜひっひっひっひっ……」

「裕太っち大丈夫系?」

「やっぱり無理系だなこれは」

 

 俺の前に立ち、その生徒に美咲が問う。

 

「控室はありませんの?」

「お前が仮面ライダーだっけか。あっちだぜ」

「分かりましたわ。山内さん行きますわよ」

「ええ」

 

 美咲は山内と共に、控室に向かう。

 

「負けなるよ、美咲!」

 

 ギロッ!

 

「ううう……」

 

 生徒に睨まれた。

 

 

 

 




次回予告

美咲「ふう、いよいよ決戦ですわね」
初「やべえ裕太じゃねえけど胃が痛くなってきた」
美咲「何故ですの!?」
初「だってこれ本編知らない人からしたら、頼もしい生徒会長ライダーかもだけど、普段のお前を知ってる私からしたらお前自爆テロ(笑)の常習犯だから、そんな奴に学校を任せたくねえ」
美咲「私は六つの大陸の角で美しく咲く花ですわ! 私に負けの二文字はありませんわ!」
初「除草剤撒いて良いか?」
美咲「浅い井戸に初めて頭突っ込む女って呼びますわよ」
初「お前段々厨二臭くなってんぞ」
美咲「てか予告しますわよ予告!」
初「やべ時間ねえ! 次か

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