浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第三十四話

 

 生徒の指し示した方に向かい、俺と優香は体育館の観客席に。

 

 ――蘇我高校! 蘇我高校! 蘇我高校!

 

 山内戦の時と違い、今度はこちら側が完全アウェイ。

 

「蘇我高系! 蘇我高系!」

「冗談でも便乗しないでやれ……」

 

 縁起でもない。

 

「さて、相手はどういう奴が来るんだ?」

「これに書いてある系じゃん」

 

 どうやら優香がどこかで選手表みたいなものを貰ったらしい。

 見せてもらうと。

 

「あれ……?」

 

 〇×女子高側には、美咲と山内の名が書かれている。

 だが蘇我高校の選手名に、足利明人の名がどこにもない。

 怪我が治らなかったのだろうか……しかし。

 

「あの……」

 

 勇気を出して前の席の生徒に声を掛ける。

 

「なんだよ」

「明人はいないのか?」

「明人さんなら行方不明だよ。だから狩野遥先公が選んだ名前の奴が、〇×女子高の代表二人を纏めて相手するみたいだぜ」

 

 生徒はそう告げて前へ向き直った。

 確かに蘇我高校側に書かれている人物の名は一つのみ。

 その名前は。

 

「ヴィーダ?」

 

 少なくとも日本人の名前ではなさそうだ。

 それにこの学校に外国人がいた記憶もない。

 俺が辞めた後に転校でもしてきたのだろうか。

 

「おっ、そろそろ始まる系!」

 

 優香に言われ、俺もフィールドを見る。

 体育館の入場口から、美咲と山内……そして。

 

「あれがヴィーダ?」

 

 アッシュブラウンの髪に、水色の瞳。

 制服姿ではなく、水色のワンピースを着た……女子高生でもなく、幼女。

 年齢を高く見積もっても、小学校高学年くらいだろう。

 どことなく、雰囲気が遥に似ている。

 

 ――おい、子供?

 ――誰のだよ。

 ――あんなのが俺達の代表?

 ――ふざけてんのか!

 

 流石の蘇我高サイドからも、ブーイングの嵐。

 

「静かに」

 

 フィールドにもう一人現れる。

 科学部顧問……狩野遥だ。

 

※※※

 

「ヴィーダを見た目だけで判断されては困るな。悪いがこいつは、お前達の誰よりも強い」

 

 遥は光のない眼でそう言い切る。

 観客席からのブーイングが止み、遥が少し離れた位置へと移動した。

 

「変身用意!」

 

 審判の指示に、美咲と山内、そしてヴィーダが従い……ベルトを装着する。

 美咲は爆弾の紋章型の端末がついたボマードライバー。

 山内は火炎放射器の端末のフレイムシャワードライバー。

 そしてヴィーダは……少し二人とベルトの形が違う。

 黒い武骨なバックル。

そしてその右側面に、何かの差し込み口らしきものがある。

 実際ヴィーダが、そこに差し込んで使うのであろう……奇抜な槍の形をしたアイテムを握っていた。

 二人が試合開始前に会話していた。

 

「二対二の筈……聞いてませんわよ」

「まあ良いじゃない。これで勝てば終わりよ」

「二対一は気乗りしませんの」

 

 あくまで平等な条件での勝負を好む美咲は、少し不満げな表情。

 しかしヴィーダは違う。

 あんな幼い子供の見た目をしていながら、二人を真剣な眼差しで見つめる。

 

「行きますわよ山内さん」

「分かってる」

 

 二人は端末を取り出し、DRIVEボタンをクリック。

 

『BOMER DRIVE READY?』『FLAME THROWER DRIVE READY?』

 

 美咲は端末を閉じてから、右手を顔の左側で構える。

 山内は静かに端末だけ閉じてから言う。

 

「「変身(ですわ)!」」

 

 二人は端末を取り付ける。

 山内を炎のエフェクトが包み、美咲の頭上から爆弾が一つ降ってくる。

 美咲は爆弾を右手で握り潰し、爆風が生まれた。

 炎と爆風の中から、二人の戦士が現れる。

 火炎放射器怪人、そして仮面ライダーボマー。

 

「ヴィーダ……ママノテキ、ヤッツケル」

 

 片言の日本語で、ベルトのスイッチらしきものを起動するヴィーダ。

 

『GUNGNIR ON』

 

 バックルの中から、待機音が流れる。

 ヴィーダは一度目を閉じてから、槍型のアイテムを上に投げ、もう一度キャッチ。

 

「ヘンシン」

 

 挿入口に差し込む。

 

『CHANGE』

 

 どこからともなく、上空から魔法陣が出現し……そこからアイテムと同じ形をした槍が現れる。

 ヴィーダはその柄に向かって手を伸ばし、掴み取った。

 

「……」

 

 ヴィーダの姿が、掴んだ手の部分から変わっていく。

 水色と白を基調としたライダースーツに、水色の複眼の顔。

 美咲とは違うが、怪人というよりかは仮面ライダーよりの姿だ。

 

「ヴィーダ……グングニル。カメンライダーグングニル」

 

 ヴィーダも片言で、自分の戦士としての名を名乗る。

 

 




次回予告

美咲「そろそろネタが尽きましたわね」
初「いよいよまともに次回予告する時が来たのか」
美咲「いや次回予告がまともに出来てないのは貴女のせいですわ」
初「次回浅井三姉妹のバカな日常」
美咲「隙あらば乗っ取ろうとするのやめなさいの!」
初「だって本来私出る必要ねえのにわざわざ呼ばれてんだぞ、やる気なんて起きるわけねえだろ」
美咲「やる気出しなさいの」
初「無茶言うな。次回浅井三姉妹のバカなにchi
美咲「しつこいですわ!」
ヒューッ! ドン!
初「……次回もお楽しみに」

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