浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第四十話

「なっちまったもんは仕方ねえな……ぶちのめすまでだ」

 

 サック怪人の方から、ハイドロボマー目掛けて駆け出した。

 

「……」

 

 ハイドロボマーが青い炎を纏った掌で、サック怪人の拳を受け止める。

 

「なにっ……!」

「はあッ!」

 

 左脇腹に蹴りを入れ、仰け反らせた。

 

「ここからですわ」

『HYDRO ACCELERATOR DRIVE』

 

 通常時のアクセルドライブを超える加速で、ハイドロボマーは何度もサック怪人の身体へバットを叩きつける。

 サック怪人が怯んだ所で、端末のボタンを押す。

 

『FINAL DRIVE!』

 

 バットの周りを、水色に変色したボムビットが集結。

 

「ハイドロインパクト!」

 

 怯んだサック怪人に、強くバットを叩きつける。

 ライダーインパクトを超える爆発は、フィールド全体を覆う程の爆風を起こした。

 

「ぬあッ!」

 

 地面に叩きつけられ、サック怪人の変身が解ける。

 

「まだやりますの?」

 

 黒フードはすぐさま立ち上がり、背を向けた。

 

「どうやら、今のお前相手では分が悪いみてえだな。あばよ」

 

 煙幕を起こし、その場から姿を消す黒フード。

 

「マテ!」

 

 グングニルが叫ぶが、もう遅かった。

 

「……」

 

 同時にハイドロボマーのハイドロフォームが終わる。

 

『HYDRO END』

 

 二人はまだ変身を解かずに会話する。

 

「逃げられましたわね」

「ママ……」

 

 ヴィーダが下を向く。

 

「恐らく戦うチャンスはいつか来ますわ。まずは遥さんが無事である事を祈りますわよ」

「ウン……」

「それに、ここに長居するのは危険みたいですわ」

 

 観客席には未だに、理性を失って暴れている怪人達がウヨウヨしている。

 逃げるか無茶を承知で倒すか……。

 だがボマーの性格上、その二択なら迷わず後者を選ぶ。

 

「戦いますわよ。ヴィーダさん」

「ミサキ……」

「まずは全員倒して帰るんですの。そして遥さんに会いに行きますわよ」

「ウン!」

 

 ボマーとグングニルは武器を構え、観客席に向かって走っていく。

 

「最初から飛ばしますわよ!」

 

 敵の直前で端末を開き、アクセルドライブを発動。

 

『ACCELERATOR DRIVE』

 

 ボマーとグングニルが加速し、バットと槍で怪人達を勢いよく倒していく。

 

「はあッ!」

「ヤアッ!」

 

※※※

 

 やっと会場出口付近。

 体力に限界が近付いていたが、何とか踏ん張り……最後の力を出し切る。

 

「必殺技行きますわよ」

「ウン!」

 

 ボマーは端末を取り出してボタンを押し、グングニルは槍型のアイテムを変身用とは違うスロットに差し込む。

 

『FINAL DRIVE!』『GUNGNIR FINAL DRIVE』

 

 ボマーの周囲をボムビットが覆い、グングニルは上空に魔法陣を出現させる。

 

「ライダーインパクト!」

 

 ボマーはバットを迫る怪人達に叩きつけ、グングニルも魔法陣から槍を射出した。

 怪人達は勢いよく吹き飛び、そのまま倒れていく。

 

「これで終わり……ですの?」

「デモ……」

 

 妙な事に気付く、普通この怪人化は……気絶以前に変身者が深刻なダメージを受ければ勝手に解除される筈なのだ。

 しかし怪人達は気絶しても、人間体に戻らない。

 ベルトを着けずに変身しているせいなのかは分からないが……今のままでは彼らを元の姿に戻す事が出来ないらしい。

 

「遥さんに聞いてみるしかありませんわね」

 

 ボマーとグングニルは変身を解き、取り敢えず脱出を選ぶ。

 

※※※

 

 優香を先に逃がし、俺は怪人達を何とか追い払いながら、優香や山内と合流した。

 山内は俺との合流前に救急車を呼び、遥を病院まで搬送させた。

 まだ来ていないのは、美咲とヴィーダだったのだが……。

 

「来たか」

 

 こちらに向かって、走ってくる二人の姿。

 近付くと同時に息を切らし、俺に報告する。

 

「怪人達が元に戻りませんわ」

「何だって!」

 

 美咲の性格上、恐らく怪人達を倒しながら出てくるだろうとは想像していたが、倒しても人間体に戻らないというのは……。

 

「こうなった以上、遥さんに生きて貰って事情を聞くしかありませんわ。今は退きますわよ」

「お、おう」

 

 俺達は駐車場まで走っていく。

 

『上手く……いったか』

 

 脳裏に声が聞こえる。

 河原で俺が意識を失った時と同じ……。

 

「……ッ! 今は気にしてる場合じゃない」

 

 何とか頭を横に振って誤魔化す。

 

「まだ終わらないのか……」

 

 狩野遥という教師が科学部でベルトを作り出し、それを俺が盗み出した事から始まったこの戦い。

 美咲が蘇我高校から挑まれた勝負に全て勝利し、このまま終わると思っていた。

 だけど……今の俺達は気付かなかった。

 何故この戦いが始まったのか。

 そして……隠された真実を。

 

《第一章 完》




次回予告

美咲「さあ、貴女の罪を数えなさいな」
初「自分の罪数えろボケ」
美咲「謝罪するような事などした覚えがありませんわ」
初「鬼畜かよお前は」
初「それはさておきマジで第二章に続くのかよ」
美咲「不本意ですが貴女にもまだ働いてもらいますわよ」
初「働いてねえだろ」
美咲「金銭貰わなければ働けないなんて、貴女は裕太さん以下ですわね」
初「お前マジで相方が裕太で良かったよな。多分私が裕太ならお前殴り飛ばしてるわ」
美咲「貴女みたいな失礼な人なんてこっちから願い下げですわ」
初「こっちの台詞だボケ」
美咲「あ、時間ありませんわね……次回第二章!」
初「仮面ライダーボマー完」
美咲「うるさいですの!」

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