浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第五話

 その数日後。

 

 滋賀県立〇×女子高。

 滋賀の公立高校にしてはかなり、いや全国的に見てもかなり異色な、ヤンキー女やギャルが多く集う女子高。

 蘇我高校程ではないが、そこそこ強者がいる。

 

「……」

 

 そんな学校の三年三組に、生徒の代表たる生徒会長の姿がある。

 六角美咲。

 一見真面目にも見えるが、そんな事はない。

 中学時代は元ヤンで、爆弾をよく作っては自分に当たって爆死していた。

 ただ喧嘩は割と強い……それは今でも健在だ。

 

「皆からの信頼を得て、私は頂点に立ちますわよ……ソウジ」

 

 ソウジは中学時代に付き合っていた彼氏の名前だ。

 卒業を機に別れたが、今でも美咲の心の支えである。

 生徒会長になったのも、彼との約束からだ。

 約束を果たして、再び会う為に。

 

「失礼しますわよ」

 

 美咲は生徒会室の扉を開ける。

 新生徒会役員と、新副会長等が既に集まっている。

 美咲は最後だった。

 そもそも今日は本来……生徒会で集まる行事というものは無かった。

 その証拠に顧問の姿もそこにいない。

 そんな今回の議題は……。

 

「んじゃ……前置きは無しにして始めるっすよ。今回生徒会役員に集まって貰ったのは、この果たし状を全員で読んでもらう為っす」

 

 軽いノリの副会長が、ブレザーの内ポケットから果たし状を取り出す。

 ひと昔前の不良漫画とかでありそうなそれだ。

 外の文字も中身も、筆で書かれている感じの字だ。

 

「私が読みますわよ」

 

 そこにはこう書いてある。

 

『〇×女子高生徒会……お前達に五対五での決闘を申し込む。明後日に河川敷に来い。負けたり逃げたりすれば、学校を支配させてもらう。蘇我高校生徒』

 

「至ってシンプルですわね……って貴女方、何を狼狽えていますの?」

「だ……だって、こんな勝負……無理っすよ」

 

 副会長が言う。

 

「はい?」

「蘇我高校……あいつらと喧嘩して無事で帰れる奴なんていない……こんなの無視して警察に……」

「させませんわよ」

 

 美咲は止める。

 

「挑まれた勝負から逃げるなんて……弱い人のする事ですわよ」

「でも!」

「会長……」

 

 近くにいた書記の一人が呟く。

 まだ入って間もない一年生だ。

 

「この一か月間……アンタの仕事ぶりは見てたんだけどさ、自分がやれるからって下に対して強引過ぎない?」

「なんですって?」

「あたしは中学ん時会長やってたけどさ、アンタのやり方は何かと雑なんだよ。アンタに人の上に立つ資格はない」

 

 その言葉に……美咲は拳を震わす。

 

「アンタらもそうだろ? 副会長も……」

「そうだそうだ」

「言う通りだ」

「皆さん……」

「もうアンタにはついてかない。一人で蘇我高校の連中とでも喧嘩して、勝手に一人で怪我でもしてなよ。さよなら」

 

 その書記を筆頭に、美咲以外の生徒会役員が出ていく。

 

「……良いですわ。一人でもやれますわ、私は」

 

 美咲は果たし状を握りしめ、一人そう呟く。

 

 


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