浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー 作:門矢心夜
黒フードは人気のない路地に隠れてから、菫に連絡する。
「……俺だ」
『どうした? 息が荒いぞ』
「すまない、任務を失敗した」
『そうか』
荒い息を吐く黒フード。
『君ならあの二人を倒せると思ったんだけど、少し期待外れだったね』
「……すまない」
静かに黒フードはこう返す。
『君は僕に尽くす為に生まれた。僕の命令すらまともにこなせないようなら、君に存在価値がない事は分かってるよね?』
「……」
黒フードは唾を飲み込む。
『でも安心したまえ。僕も君をすぐ殺したりはしないさ。君は僕の大事な作品だ。期待に応えてくれるなら、僕も君を見捨てたりしない』
「ああ」
黒フードは少し落ち込んだ声で返事する。
『流石に一人で二人を相手させるのは荷が重かっただろうし、あの二人と合流したまえ』
「明人や蒲生とか?」
『ああ。それなら君でも、二人を倒せる筈だ』
※※※
命令通り蘇我高校へ向かう。
怪人達が守護する廊下を歩き、二人がいる場所までたどり着く。
「ここか」
校長室の扉を開ける。
「また誰か来たんすか?」
「よう兄貴、来たのか」
不満そうな蒲生と、歓迎する明人。
黒フードは目深にフードを被り続けたまま、黙って入室。
「そのフード取れないんすか? 礼儀とかないんすか?」
黒フードの態度にイラついている蒲生が、黒フードに指摘する。
「……お前にそれを命令する権限などない筈だ」
「ムカつくっすね。その態度」
「……」
黒フードは蒲生に背を向ける。
背を向けたまま言う。
「お前達二人の力を借りに来た。菫からの命令だ」
「……はあ?」
「ここの生徒達では、もうライダー達に太刀打ち出来ん。六角美咲や福沢裕太と戦ったが、二人とも俺を倒した」
「福沢裕太? 何のことだよ兄貴」
「あいつも仮面ライダーに変身した。それも一切の強化なしで、俺を圧倒した」
黒フードはまだ傷になっている部分を押さえる。
それを見た明人が言う。
「兄貴が弱いだけで、福沢裕太の方が強いだけなんじゃない?」
「……」
弟の言葉に、黒フードは少し目を細める。
「俺さ、お袋から聞いたんだけど……兄貴って出来損ないなんだろ?」
「それは……」
「人工突然変異体として作られたけど、完璧に力も使いこなせない半端者。それが兄貴の正体だって聞いた」
自然に生まれてくる突然変異体は、基本的に自分の能力に自覚がなくとも、制限なしで力を使用する事が出来る。
黒フードはそんな突然変異体を人工的に生み出す研究で作られた一号機。
突然変異体のDNAを元に生み出されたが、結果的に失敗作として生み出されてしまった。
結果、力を自分の意思で使用出来ていない。
「しかもその上福沢裕太なんかに負けるなんてさ。兄貴、こいつはともかく、俺はアンタと組みたくねえよ」
「俺も別にお前と組みたいわけじゃない。菫に頼まれて仕方なくだ」
黒フードが鋭い目で、明人を睨みつける。
「そこまで言うなら頼まん。俺は一人でも戦う」
外へ向かおうとする黒フード。
「へえ、出来んの?」
「……」
明人の挑発を無視し、黒フードは校長室をあとにする。
※※※
出てすぐに黒フードはサックドライバーを装着する。
『SMASH DRIVE READY?』
「変身」
サック怪人へと変わる黒フード。
その時。
「……ッ!」
一つの光景が見えた。
体育館のような場所で、誰かと二人で外の廊下を歩く二人の女性を見ていた。
片方は狩野遥、もう片方は戸間菫。
「俺は菫さんがいれば頑張れる。そんな気がするんだ」
近くに立つ男が放ったその声と共に、光景はそこで消える。
「これは……」
誰かの記憶だろうか。
しかし……誰のものなのか分からない。
自分の記憶でない事は確かだ。
「今は気にしている場合ではない」
今は菫の為にも、戦って勝つ事だけをイメージするべきだ。
自分にそう言い聞かせ、サック怪人は歩き出す。
次回予告は……ない。
初「まあ美咲いねえし許そう」