浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第六十四話

 

 あれから数時間、人気のない場所で朝まで眠り。

 

『君か。僕の命令は予定通り

「教えてくれ」

 

 黒フードは起きてすぐに、菫に問いかけた。

 

『どうした? そんなに動揺した声をして……君らしくもない』

「聞きたい事は沢山ある。何故俺の身体の中に、いない筈の福沢裕太の記憶がある? 何故俺の頭に、知らない誰かの記憶が見える? 答えろ……答えてくれ! このままでは菫の期待に応えられない!」

『そうか……やはりそうみたいだね』

 

 何かを察したように笑う菫。

 

「何がおかしいんだ……」

『君がそれを聞いてどうするんだい? 君は僕の子供とは言ったが、同時に君は僕の発明品でしかない。道具である君がそれを知って、どうするつもりなんだい?』

「しかし」

『僕に逆らうのかい? それは君の存在意義に反する行いだと思うけど?』

「……」

『言っただろう? 利用価値がある以上、子供である君を簡単に殺したりはしないと』

「俺は……」

『死ぬのは怖いだろう? それなら結果を残したまえ』

 

 黒フードは、生まれた時から菫に尽くさなければと考えて生きてきた。

 プログラムされた結果そういう思考回路になったと言われてからも、彼が菫に対し抱く気持ちは変わらない。

 だから……黒フードは恐れている。

 自分のミスで、彼女に捨てられて死ぬ事を。

 

『それに君には感謝しているんだ。僕の為に生まれる事を選んだ君に』

「え……?」

 

 ――生まれる事を……選んだ?

 

『もうこのくらいでいいかな? では、今度こそしくじらずに任務をこなしたまえよ』

「……」

 

 通信はそこで途切れる。

 

「……」

 

 今の黒フードには、どうしたらいいか分からない。

 このまま美咲に立ち向かった所で、自分の中に未だ残る福沢裕太としての自分が、拳を止めてしまうだろう。

 

「こんな所にいましたのね」

 

 私服姿の六角美咲が、黒フードの前に現れる。

 まだ朝早いというのに。

 

「わざわざ殺されに来たのか?」

「私は今でも、貴方と戦う準備は出来てますわ」

 

 ボマードライバーを取り出す美咲。

 

「悪いが、今の俺はそのような気分ではない。放っておいてくれ」

 

 そこで唐突に、お腹の音が鳴る。

 そういえば、昨日から何も食べていない。

 

「腹減ってますの?」

「気にするな」

「気にしますわ。貴方は私がいつか倒す相手。その時に、悩んだままの貴方を倒したくはありませんわ」

「……」

「とにかく、何かしら食べに行きますわよ」

 

 美咲は黒フードの手を握って、無理矢理引っ張っていく。

 

「お、おい……」

 

 敵である自分に殺されるかも知れない。

 そんな事すら考えず、美咲は走っていく。

 でも何故だろう。

 黒フードも不思議と、嫌な感じはしなかった。

 

※※※

 

 美咲が連れて行ったのは、行きつけのカフェ。

 取り敢えずモーニングセットを二つ注文し、黒フードと共に食事していた。

 

「美味しいですの?」

「……ああ」

 

 長い間何も食べてなかったのだろう。

 黒フードはかなりの勢いで、サンドイッチを平らげている。

 フードは被ったままで表情は見えないが。

 

「フード……取りませんの?」

「俺の顔を見たら、恐らくお前は驚く。それでも良いのか?」

「私元カレに超イケメンがいますのよ。今更驚いたりなんて」

 

 黒フードは辺りを見回してから、フードを外す。

 驚かない……そう言ったが。

 そこにある顔は、それを出来なくするものだった。

 

「……え?」

「これが……俺の素顔だ」

 

 黒フードの顔は、福沢裕太と同じものだった。

 

 




次回予告

初「てかお前行きつけのカフェあったんだな」
美咲「たまにろーれらいの方にも顔出してますわよ」
初「あそこは今回友人に許可とってないから流石に出せねえよな」
美咲「遠藤さん元気にしてますの?」
初「まあ取り敢えずな」
美咲「そうですの」
美咲「あ、異世界道具店で仮面ライダー関連ありませんの?」
初「どうすんだよそれで」
美咲「別のライダーに変身しますの!」
移動!
美咲「カブトのライダーベルト……本物ですわね!」
初「買うと思った」
美咲「変身しますわ!」
美咲「来てください、カブトゼクター!」
しーん……。
美咲「来てくれませんの!」
初「……」

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