浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第六十五話

 俺は朝起きてすぐに、病院に向かった。

 昨日の晩、成音から連絡を貰ったからだ。

 どうやら……狩野遥が昏睡状態から目覚めたらしい。

 

「まだ来ないか」

 

 美咲にも連絡したが、まだ返信がない。

 成音とヴィーダ、そして優香が集合してから、俺達は遥の病室に全員で入室した。

 

「失礼します」

「全員揃って来たのか……六角美咲は?」

「実は連絡がつかなくて。取り敢えず、話す事は何とか出来そうですね」

 

 俺達は近くの椅子に座る。

 

「ママ、オキテル……!」

「良かったね、ヴィーダ」

 

 嬉しそうにしているヴィーダに、成音が微笑む。

 遥はバツが悪そうに顔を逸らす。

 

「感動の再会って感じ……ではない系かな」

 

 優香も二人の様子を見て判断する。

 

「聞きたい事がいくつかあります。何故、蘇我高校の生徒に〇×女子高を支配させようとしたんですか?」

 

 遥は目を閉じてから言う。

 

「私が蘇我高校の生徒を使って、他校を支配しようとした理由……それはある突然変異体を探す為だ」

「突然変異体を?」

「ああ。私はその突然変異体に、自分の幼馴染を殺された」

 

※※※

 

 一方、美咲は裕太顔の黒フードから話を聞いていた。

 

「俺はある人に、狩野遥の幼馴染の殺害を指示された。そして……俺は命令通りこの手にかけた」

「……」

 

 罪悪感に満ちた表情をしている彼に、美咲は掛けるべき言葉を探すが見つからない。

 

※※※

 

「死体を見た時、彼の身体にはどう見ても突然変異体が能力を使用したものとみられる痕跡が見つかった。死亡したのは私の地元である滋賀、そして風の噂で聞いた『滋賀にいる超人的戦闘能力を持つ少女』という情報を頼りに、滋賀にある高校を調べるつもりだった」

「その少女が美咲だと思ったんですね?」

「いや、少し違う。まずそもそもの能力が違うしな。それでも邪魔する以上無視しておけないのは事実だったが、その噂の少女でない事に気付いたのは、あの黒フードに襲われてからだな」

 

※※※

 

「狩野遥が復讐の道を選んだのなら、それは俺の責任だ。責められて当然だし、お前の敵になるのも必然だ」

「貴方……」

「この顔も、福沢裕太と入れ替わり、狩野遥やそれに協力する者を殺す為に得たものだ。だから、俺はその為にしか存在出来ない」

 

 黒フードは俯く。

 昨日の昼まで、処刑人のような雰囲気を漂わせて戦っていたのに。

 今は何かに怯えているようだった。

 

「その生き方に、貴方は満足してますの?」

「満足……どうだろうな。分からない。俺は自分の意思で今まで戦い続けてきた。だがこれも作られた感情なのだとしたら、それは自分の意思と言えないのかも知れない」

「……」

「だから満足したとしても、それが俺の本当の意思かなんて分かるわけがない」

「要するに、満足はしてませんのよね?」

「え?」

「自分の生き方に満足しているなら、そんな迷いのある顔で答えませんわ」

「だが俺は……」

「戦いから逃げているわけじゃありませんの。ですが、私も今の貴方とは戦えない。迷いのある貴方を倒しても、それは私が貴方に勝った事になりませんわ」

「……」

「貴方はどうしたいんですの?」

「俺は……」

 

「答えなど出させるわけがないだろう?」

 

 不意に聞こえた男の声、そして飛んでくるボムビット。

 

「危ないですわ!」

 

 美咲は黒フードを突き飛ばしてから、ボムビットを受ける。

 周りの客がそれに気づき、悲鳴を上げて逃げ出す。

 

「……」

 

 爆死した美咲はその場で蘇生。

 無傷の美咲が、声の主に目を向けた。

 

「何者ですの?」

「さあな……。どこかで会った事あるような気もするが」

「あれは……」

 

 声の主は……美咲も驚きを隠せなかった。

 ボムビットが飛んできた時点で察するべきだったが、そこにいたのは。

 所々配色が変わった、黒い仮面ライダーボマーだった。

 

 




次回予告

美咲「裕太さんが二人……」
初「これワンチャン裕太も改造人間説あるだろ」
美咲「でも裕太さんはあまりおかしい所はありませんでしたわ」
初「いや鈍感かお前は」

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