浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー 作:門矢心夜
病室。
まだ遥の話は続いている。
「私の幼馴染を殺した犯人が、あの黒フードに依頼した者か、あの黒フード自身なのは間違いないだろう。だが幼馴染を殺すだけに飽き足らず、私や私の発明品まで破壊しようとするとはな……」
「犯人の正体に、心当たりはありますか?」
「今の所はない。そもそも突然変異体自体、かなり希少なんだ。滋賀で多く発見されているとは言え、そう簡単に見つかるわけがない」
「そうですか……」
やはりあの黒フードから直接聞くしかないのだろう。
「犯人が分からないなら、まずはあの怪人達だけでも何とかするしかないわね」
「そうだな」
「遥先生、蘇我高校の生徒達を元に戻す方法はありますか?」
「勿論ある。黒フード達が先手を打っていない事が前提ではあるが、科学部の部室には元に戻す為のワクチンが用意してある筈だ」
「ワクチンですか?」
「ああ。あの怪人化はスイッチだけのものではなく、私が決戦前に学校中に撒いたガスが影響している」
「ガス……」
遥が言う。
「そもそもお前達に、怪人化の仕組みを説明していなかったな。私が作ってきたベルトには、学校中に撒いたガスと同じ成分が入っている。突然変異体の因子が含んだガスがな。そのガスを体内に取り込む事で、人の姿を怪人に変えつつ、突然変異体と同等の身体能力を得る。ボマードライバーやグングニルドライバーは因子の活性化が目的で、少し特殊だがな」
「なるほど……いやあのすみません」
「なんだ?」
「ガス自体に突然変異体の因子が含まれているのは分かったんですが、ガスが無くても突然変異体と同等の身体能力は得られるんですか?」
「そうだな。その通りだ。本来あのベルトを作るのに、怪人化するガスなど不要だ」
「じゃあ何で怪人化するガスなんてものを……?」
遥は目を閉じる。
「人に言うのは少し恥ずかしいが……自分が戦っている理由を忘れない為だ。私の幼馴染がライダーや怪人という類のものが好きでな。怪人達を見る事で、自分が戦う理由を忘れないようにしていた」
「そうですか……」
「六角美咲はあの姿になってすぐに、仮面ライダーを名乗ったそうだな」
「はい」
「私の幼馴染が生きていたら、良き友になっていただろうに」
泣きそうなのを堪えながら言う。
「話が逸れてしまったな。科学部の部室に保管されたワクチンには、ガスを中和する効果がある。そのガスを生徒に向かって放射すれば、怪人化した生徒達を元に戻せる筈だ」
「ヴィーダ、ヤル!」
話を聞いていたヴィーダが立ち上がり、遥にそう告げた。
「……」
しかし遥は返事すらせず、ヴィーダにはバツが悪そうに目を逸らしている。
「ママ……」
「……遥さん」
「……」
「どうしてヴィーダの目を見て、話してあげないんですか?」
「……!」
「ヴィーダは遥さんの事を嫌っていない。むしろ、もう傷つけたくないと思っているんですよ」
「今の私に……ヴィーダの目を見て話してあげる資格はない」
「遥さん……!」
その時だ。
「グギャアアッ!」
病室内に、怪人が侵入する。
「皆、来たぞ!」
次回予告はないです。