浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第七十三話

「お、俺は何を……」

「はやく行って。ここは危険よ」

「お、おう」

 

 火炎放射器怪人の方も順調だった。

 銃の効果で怪人化と洗脳を解き、あともう少しという所まで来ていた。

 

「あとは会長達がいた所の奴らね」

 

 銃を構えながら、火炎放射器怪人はもう一度駆けていく。

 

※※※

 

 黒フードは美咲の家にいた。

 福沢裕太の人格が残っているおかげか、初めて入った筈なのに懐かしさを感じる部屋の中で、黒フードは三角座りをしている。

 これで良かったのか……そう考えながら。

 

「……」

 

 美咲は……最早殺されて当然の生涯を歩んできた自分を守る為にも戦うと言って、自分から足利明人や洗脳された蒲生の事を聞き出して、全員救う事を約束して出て行った。

 自分よりも遥かに高い戦闘能力の持ち主たる彼女の実力に、不足はない。

 けど何より、敵である自分の事情や気持ちを気遣ってまで戦う理由が思い浮かばない。

 あの時も、庇わず見殺しにしても良かったのに、自分の能力を使って守った。

 こんな人殺しを救う理由が、どこにあるというのだろうか。

 

『あいつにそんな都合は関係ない』

「……お前、やっぱりまだいたのか」

 

 福沢裕太の声に、一号がそう答える。

 

『自分の望みの為に本気で生きたいと思う奴がいるなら、例えそいつが悪だろうとそいつを応援するし、もし自分にとって気に入らない事なら全力で立ち向かう。それが六角美咲だ』

「……」

『あいつは精一杯生きようとしてる奴の味方なんだ。お前をそういう奴だと思ったからこそ、お前も救おうとしてるんじゃないか?』

「俺はあいつやお前を殺そうとしていたのにか?」

『あいつはむしろ、そういうのを相手にすると燃えるタチだ。だから俺が止めた。あいつや……お前を守る為にな』

「俺を守る? どういう事だ?」

『それは……』

 

 一号の頭が少し痛む。

 

「うっ……」

『どうやら、もう俺もここに永くいられないみたいだな』

 

 一号の中から、福沢裕太の記憶が消えていく。

 元々不完全な存在だった脳波が、ゆっくりと自分の中から消えようとしているのだ。

 

「……」

『悔しいな。もしお前が美咲に手を出す選択をしたとしても、もう止めてやる事が出来ないのか』

「福沢裕太……」

『もし菫と生きる選択肢を選びたいのなら、美咲を信じてみろ。そして一緒に戦うんだ』

「……良いのか? 人殺しの俺が、幸福になる道を選んでも……誰かに救ってもらう道を選んでも」

『俺には分からない。けど、もし選ぶのなら……その人生を使って償う事も必要かも知れないな』

「償い……か」 

『大丈夫だ。俺がいなくても美咲がいる。美咲なら、お前と一緒にその方法を考えてくれる筈だ……じゃあな』

 

 そう言い残し、福沢裕太は一号の中から消えていく。

 

 




次回予告は今回無しです。

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