浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第七十四話

「ああッ!」

「おいおい……俺の動きで学習出来たのかと思えば、てんでダメじゃねえか。どうやら強いのはドライバーだけみてえだな」

「野郎……」

 

 俺はあれから一撃も与えられていない。

 相手の攻撃を受け止めるどころか躱す事も出来ていない。

 このままでは……。

 

「私が相手になりますわ」

「美咲!」

 

 つい先ほどガス怪人を倒したボマーが、バットを剣の怪人に向けながら立っていた。

 

「初めましてだな、六角美咲」

「明人さん……」

「おいおい、こいつの名前を出すなよ。俺には二号っていうれっきとした名前……じゃねえけど番号があんだよ」

「……」

「最近は俺の兄貴が世話になったみたいじゃねえか」

「兄弟というのは……あの黒フードさんの事ですの?」

「そうだ。そこのムラマサにも勝てねえ……弱っちい出来損ないの兄貴の事さ」

「出来損ない……」

 

 ボマーはバットを握る手を震わせる。

 

「なんだ? あいつを馬鹿にされて怒ってんのか?」

「ええ……怒ってますわ。明人さんの身体を勝手に使っている事、それに黒フードさんを馬鹿にした事に」

 

 剣の怪人はやれやれと笑いながら言う。

 

「おいおい、あいつはお前の敵だった筈だろ? なんで仲良くなっちゃってるわけ?」

「違いますわ。私は彼の敵として、彼の願いを尊重しただけですわ」

「んだと……?」

 

 ボマーは顔を上に向ける。

 

「私は戦う相手には、常に本気でいて欲しい。迷いを全て捨てて、全力で立ち向かって欲しいんです。だからこそ、私は今の彼を守ります。貴方達に蒲生さんも明人さんも、そして黒フードさんも弄ばせませんわ」

 

 バットを構え、戦闘態勢に入る。

 

「随分言うねぇ。まあ、どうせお前じゃお袋には止められねえだろうがな」

 

 剣の怪人が武器を構えた。

 

「良いぜ、こいつを倒す前に俺が遊んでやるよ」

 

※※※

 

 一号は美咲の家から飛び出して、菫のいる〇×女子高を目指す。

 

「……」

 

 裕太が消えてから、自分に出来る償いを自分なりに考えた。

 美咲はこうしている間にも、自分の為に命を懸けている。

 だから、菫と距離が近い関係の自分に出来る事をやろうと思った。

 

 説得。

 それが今の一号に出来る、最善の行動だ。

 命令に背いたと思われれば、殺される事もあり得るが、今はそれを考えている場合ではない。

 むしろ美咲のように言うなら、殺される状況になろうとも生きて帰るくらいの度胸は必要だろう。

 だから、一号は生きて帰る。

 自分の願いを叶えつつ、美咲の為に出来る事をする。

 

 一号はフードの下の瞳を窄めながら、目的地への足を早める。




次回予告

美咲「次の相手は明人さんの身体を乗っ取ってる人ですの」
初「……」
美咲「どうして黙ってますのよ」
初「いやさ、この作品だと明人は強いのかも知れないけど……浅井三姉妹の世界だと……」
美咲「ここは私のステージですのよ! 同じ世界だからといってこっちまで侵攻されては困りますわ!」

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