浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第七十五話

 

「裕太さん、貴方も行きなさいな」

「す、すまん。あとは頼んだ」

 

 変身を解いてから、裕太はその場を離れる。

 

「すぐに片を着けますわ」

『SCAN DRIVE』

 

 ハイドロフォームのカードを取り出し、読み込ませる。

 

『COMPLETE HYDRO DRIVE READY?』

 

 両腕を腰の高さまで広げ、全身に力を込めて叫ぶ。

 

「超変身ですわ!」

 

 ボマーがハイドロフォームへと変わり、アクセルドライブを使う。

 

「はあッ!」

「ふっ……」

 

 二人は姿を消しながら、バットと剣を振るう。

 ハイドロボマーの実力は、剣の怪人以上の筈だが、剣の怪人もそれについてきている。

 

「くっ……」

「どうした、ハイドロフォームの力ってのはその程度か?」

 

 剣の怪人が姿を消す。

 

「そこですわ!」

「ぬおッ!」

 

 ハイドロボマーは見抜いてから、剣の怪人に向かってバットを振るって吹き飛ばす。

 

「お前も中々やるな」

「貴方だけは許せませんもの……とっとと蹴りをつけますわ」

 

 ハイドロボマーがバットを回してからもう一度姿を消す。

 

「そうこなくちゃな」

 

※※※

 

 戸間菫は一人、自室代わりにしている教室で研究を続けていた。

 

「さて……どうしたものか」

 

 言うまでもなく、先に送った黒いボマー――通称仮面ライダーアトミックに変身した実験体の改良だ。

 一号を一瞬にして気絶させ、ハイドロボマーもボムビットで爆破させはしたが、それはあくまでアトミックドライバーの性能に過ぎない。

 三号の素体も突然変異体の遺伝子からコピーし作った点は、今行動中の一号や二号と変わらないが、この三号はその二体とはある点が決定的に違う。

 天然で生まれる突然変異体が一つしか能力を持てないのに対し、三号は最初から複数の能力を備えている。

 だがどの能力もまだ実戦で使える程度ではない。

 これで戦闘に勝てたとしても、それでは遥の研究品を盗んで勝っただけだ。

 この三号を強化し、兵器運用が可能なレベルになれば、科学者として上の地位に立てる。

 それで遥さえ消せれば、自分は科学者として頂点に。

 

「菫」

「……何だい。僕も忙しいんだよ、一号」

 

 菫は眉を潜めながら、教室に入ってきた一号を見る。

 

「僕は君に六角美咲を倒すよう指示したのに、君は彼女と仲良く朝食を食べていたそうだね。三号から聞いたよ」

「……」

「君は僕に従順で仕事人気質な所が取り柄だったのに、そんな裏切りをするなんてね。見損なったよ」

「……」

 

 一号は身体を震わせる。

 

「不服そうだね。僕の言った事が間違っているとでも?」

「……菫、もうやめにしないか?」

「何だと?」

「俺は菫と一緒にいたい。けどこのまま誰かを傷付け続けたら、それも出来なくなる。だから……頼む。もうやめてくれ」

 

 一号は床に頭をつけて土下座する。

 

「君は僕の望みを知ってるのだろう?」

「……ああ」

「なら何故こんな事をする。僕が狩野遥に負けるとでも? それともこの三号でも、六角美咲に負けるとでも?」

 

 俺は知っている。

 菫が誰かの笑顔のための発明をしたいと言った事を。

 

「ち、違う。俺は誰かの笑顔の為に研究に取り組む菫が好きなんだ! だからこんな事をやめてくれ! ……あれ」

 

 ――何故だ? 何故俺の口から、こんな言葉が?

 

「そうか、もうそこまで思い出せているんだね」

 

 悪い笑みを浮かべる菫。

 

「どういう事だ。俺は菫の実験体として生み出された筈……。それに俺はそんな光景を一度も……」

「それは僕が君の記憶を消したからさ」

「消した? それはどういう事なんだ」

「一号、僕は前にこう言ったよね。僕の為に生まれる事を選んでくれた事を感謝している……と」

「ああ」

 

 その言葉と、いくつもの言葉が引っかかり、自分が何なのかが理解出来なくなっていた。

 

「君のしつこさに敬意を表して、特別に教えてあげよう。君の人格は僕が一から生み出した存在じゃない。君が僕に忠誠を誓うようにプログラムしたのは事実だが、それは君が元々持っていた感情を強くしたに過ぎない」

「……まさか」

 

「――そう。君は僕を好きで仕方なかったただの青年。僕が君の脳波を取り出し、記憶を消してその身体に入れたのさ」

 

 




次回予告無しです

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