浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第八十二話

 

 最初に動き出したのはグングニル。

 右手の槍を構えながら、消えるような速度で移動する。

 

「セイッ!」

「気合十分だなあ、お嬢ちゃん。だがこの前の俺とは一味違うぜ!」

 

 ムラマサの方が一枚上手だ。

 高速移動も刀も、グングニルの槍捌き以上に扱いこなしている。

 

「ウワアッ!」

 

 グングニルが斬撃で吹き飛ばされた。

 

「少しは腕を上げたようだが、俺の刀捌きには及ばねえな」

「マケナイ……マケタクナイ!」

 

 グングニルは槍を構え直し、もう一度ムラマサに立ち向かう。

 

※※※

 

 戦いが始まって数分が経つ。

 しかし未だに、相手の優勢が続いている。

 

「ヴィーダ……」

 

 戦う様子を一番心配そうに見ていたのは成音だ。

 そわそわと落ち着かない様子を見せていたが、美咲がその腕に手を添える。

 

「今はヴィーダさんに任せますの。裕太さんにした事も許せませんが、ヴィーダさんは母親を殺されかけたのですから」

『今戦ってるのはヴィーダか?』

 

 まだ通話中の遥が問う。

 

「ええ。遥さんの為に戦ってる」

『私の為に……か? いや、今は理由は良い。状況はどうなんだ?』

「ヴィーダがおされてるわ。これじゃあとても勝てない」

『それなら、グングニル自体のスペックを上げるしかない』

「そんなのどうやって……」

『グングニルドライバーは、他のドライバーを取り付ける事でフォームチェンジが出来る』

「そんな機能があったんですの?」

 

 美咲はグングニルと戦ったあの時を思い出す。

 しかし、その時にはその機能を使っている様子はなかった。

 

『ああ。だが私のロードドライバーでは出来なかった』

「どうして」

『恐らくあの時のヴィーダでは力不足だったのだろう。仮面ライダー用のベルトは非対応故、もし出来るとしたら……山内成音、フレイムシャワードライバーをヴィーダに渡せ』

「これを?」

『ああ。まだ他のドライバーを試していないが、今出来るとしたらそれしかない』

「……分かった」

 

 少し俯いてから、顔を上げる。

 

「ヴィーダ!」

 

 成音の呼び声に、グングニルが振り向く。

 

「これを使って!」

 

 フレイムシャワードライバーの端末部分を、グングニルへ投げる。

 

「させるか!」

 

 ムラマサが邪魔しようとするが、そこをヴィーダが何とか防ぎ、端末を受け取った。

 

「ナリネ……アリガトウ!」

 

 グングニルはドライバーの左側、槍型のガジェットを挿していない方に端末を挿入する。

 少しばかり緊張しながら。

 

「……」

 

 成音が祈る。

 

『フレイムシャシャシャ……』

「アッ……アアッ!」

 

 だがそんな成音の期待に反して、ドライバーがバチバチと火花を立てて端末を吹き飛ばす。

 

「そんな!」

 

 何とか立ち上がるグングニル。

 

「ふぅ、どうやら無理みてえだな」

 

 安心したムラマサがもう一度斬りかかりに行く。

 何とか槍で防ぎ、ムラマサを弾いた。

 

「ヴィーダニハ、ムリナノ……?」

 

 グングニルが顔を下げる。

 

「ヴィーダ……」

『やはり無理なのか……』

 

 成音と遥が諦めかける。

 しかし。

 

「ヴィーダさん!」

「ミサキ……」

 

 美咲がグングニルへ叫ぶ。

 

「無理かも知れないと考えてる場合ではありませんのよ! 貴女は自分で自分の母親を傷付けた者を倒すと決めんですのよ! それなら、出来ると信じなさいな!」

「……!」

 

 グングニルがもう一度端末を拾う。

 

「デキルト……シンジル……!」

「ヴィーダ! 頑張って!」

「成音さん……」

「ナリネ……」

 

 二人の言葉を聞いたグングニルが、ムラマサを見る。

 

「ママヤユウタ、ミサキ……そしてナリネノタメ二、ヴィーダハオマエヲユルサナイ!」

 

 端末を左側に差し込む。

 

『フレイムシャワー!』

 

 何とか負荷に耐え、グングニルは叫ぶ。

 

「ダイヘンシン!」

 

 右手で槍を押し込んでから、斜め左上まで右腕を伸ばす。

 

『CHANGE FLAME THROWER』

 

 グングニルが光に包まれ、姿が変わっていく。

 白と水色中心だったカラーリングに、オレンジが加わり、複眼の色も赤く変わる。

 左手に火炎放射器が握られ、背中にはブースター、そして槍の刃も発炎する。

 

「コレガ、アタラシイチカラ……」

 

 




次回予告

初「ついにグングニルもパワーアップしたのか」
美咲「ヴィーダさんと成音さんの絆、そして遥さんに対するヴィーダさんの強い想いが生み出した奇跡のフォームですわ!」
美咲「次回はその活躍が出ますわよ!」
初「そりゃあ楽しみだ」

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