浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー 作:門矢心夜
最初に動き出したのはグングニル。
右手の槍を構えながら、消えるような速度で移動する。
「セイッ!」
「気合十分だなあ、お嬢ちゃん。だがこの前の俺とは一味違うぜ!」
ムラマサの方が一枚上手だ。
高速移動も刀も、グングニルの槍捌き以上に扱いこなしている。
「ウワアッ!」
グングニルが斬撃で吹き飛ばされた。
「少しは腕を上げたようだが、俺の刀捌きには及ばねえな」
「マケナイ……マケタクナイ!」
グングニルは槍を構え直し、もう一度ムラマサに立ち向かう。
※※※
戦いが始まって数分が経つ。
しかし未だに、相手の優勢が続いている。
「ヴィーダ……」
戦う様子を一番心配そうに見ていたのは成音だ。
そわそわと落ち着かない様子を見せていたが、美咲がその腕に手を添える。
「今はヴィーダさんに任せますの。裕太さんにした事も許せませんが、ヴィーダさんは母親を殺されかけたのですから」
『今戦ってるのはヴィーダか?』
まだ通話中の遥が問う。
「ええ。遥さんの為に戦ってる」
『私の為に……か? いや、今は理由は良い。状況はどうなんだ?』
「ヴィーダがおされてるわ。これじゃあとても勝てない」
『それなら、グングニル自体のスペックを上げるしかない』
「そんなのどうやって……」
『グングニルドライバーは、他のドライバーを取り付ける事でフォームチェンジが出来る』
「そんな機能があったんですの?」
美咲はグングニルと戦ったあの時を思い出す。
しかし、その時にはその機能を使っている様子はなかった。
『ああ。だが私のロードドライバーでは出来なかった』
「どうして」
『恐らくあの時のヴィーダでは力不足だったのだろう。仮面ライダー用のベルトは非対応故、もし出来るとしたら……山内成音、フレイムシャワードライバーをヴィーダに渡せ』
「これを?」
『ああ。まだ他のドライバーを試していないが、今出来るとしたらそれしかない』
「……分かった」
少し俯いてから、顔を上げる。
「ヴィーダ!」
成音の呼び声に、グングニルが振り向く。
「これを使って!」
フレイムシャワードライバーの端末部分を、グングニルへ投げる。
「させるか!」
ムラマサが邪魔しようとするが、そこをヴィーダが何とか防ぎ、端末を受け取った。
「ナリネ……アリガトウ!」
グングニルはドライバーの左側、槍型のガジェットを挿していない方に端末を挿入する。
少しばかり緊張しながら。
「……」
成音が祈る。
『フレイムシャシャシャ……』
「アッ……アアッ!」
だがそんな成音の期待に反して、ドライバーがバチバチと火花を立てて端末を吹き飛ばす。
「そんな!」
何とか立ち上がるグングニル。
「ふぅ、どうやら無理みてえだな」
安心したムラマサがもう一度斬りかかりに行く。
何とか槍で防ぎ、ムラマサを弾いた。
「ヴィーダニハ、ムリナノ……?」
グングニルが顔を下げる。
「ヴィーダ……」
『やはり無理なのか……』
成音と遥が諦めかける。
しかし。
「ヴィーダさん!」
「ミサキ……」
美咲がグングニルへ叫ぶ。
「無理かも知れないと考えてる場合ではありませんのよ! 貴女は自分で自分の母親を傷付けた者を倒すと決めんですのよ! それなら、出来ると信じなさいな!」
「……!」
グングニルがもう一度端末を拾う。
「デキルト……シンジル……!」
「ヴィーダ! 頑張って!」
「成音さん……」
「ナリネ……」
二人の言葉を聞いたグングニルが、ムラマサを見る。
「ママヤユウタ、ミサキ……そしてナリネノタメ二、ヴィーダハオマエヲユルサナイ!」
端末を左側に差し込む。
『フレイムシャワー!』
何とか負荷に耐え、グングニルは叫ぶ。
「ダイヘンシン!」
右手で槍を押し込んでから、斜め左上まで右腕を伸ばす。
『CHANGE FLAME THROWER』
グングニルが光に包まれ、姿が変わっていく。
白と水色中心だったカラーリングに、オレンジが加わり、複眼の色も赤く変わる。
左手に火炎放射器が握られ、背中にはブースター、そして槍の刃も発炎する。
「コレガ、アタラシイチカラ……」
次回予告
初「ついにグングニルもパワーアップしたのか」
美咲「ヴィーダさんと成音さんの絆、そして遥さんに対するヴィーダさんの強い想いが生み出した奇跡のフォームですわ!」
美咲「次回はその活躍が出ますわよ!」
初「そりゃあ楽しみだ」