浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第八十四話

 

 〇×女子高空き教室。

 

「またゆっくり話せる日が来て嬉しいぜ。お袋」

「僕もだよ、と言いたい所だけど……君がそんなボロボロの状態で戻って来たのはしくじったせいだからだろう?」

 

 菫が美しくも怖い笑みを浮かべる。

 

「悪いな。でもよ、この方が俺も楽しいんだ」

「君は本当に、言う事を聞かない奴だ」

「言いたきゃ言えよ。どうせ殺しちまえば同じなんだから」

「……」

「ところで兄貴はどうすんだ?」

「ああ、どうせ君が殺すのだろう? もう絞れるものは絞りつくした。奴は廃棄だ。永遠に」

 

 そう言って、菫は手元のボタンを押す。

 

「福沢裕太ももう必要ない。どうせ今は彼に動く程の意思はないのだろう。今の内に処分を」

「おいおい、お袋。ちょっと待ってくれ」

「……」

「こいつなんだけどよ、ちょいと俺の玩具にさせてくれ。この通り」

「どういうつもりだ?」

「俺、ちょっと見てみたいもんがあんのさ」

 

 そう言って二号はニヤリと笑みを浮かべた。

 

※※※

 

 あの後、気絶している一号を病院まで運んだ。

 特に大きな怪我などもなく、少し時間が経ってから目覚めた。

 

「ここは……」

 

 美咲が戦ったおかげか、それとも何かが起きたのかは分からないが、洗脳は解けていた。

 

「気が付きましたのね」

「六角美咲……。俺は、一体何を……」

 

 一号が辺りを見回して問いかける。

 

「気にする必要はありませんの。貴方が貴方に戻ってくれた。それだけで十分ですわ」

「……お前と戦ったのか。あの人の命令で」

「命令かどうかは分かりませんが、私と戦ったのは確かですわ」

「そうか……」

 

 一号は涙を流していた。

 

「一号……さん?」

「俺は今度こそ、完全に捨てられたのだな……」

 

 何かを察したように、そう告げる。

 

「……」

「美咲……」

 

 一号は美咲に顔を近づける。

 

「頼む……俺を殺せ」

「……」

「これ以上生きても、俺はあの人の為にはもう生きられない。だからもう良いんだ……」

 

 そう言って大粒の涙を流す。

 

「……」

「美咲……俺の願いを聞き入れてくれるんじゃないのか?」

「聞き入れますわ。貴方は私のライバルと決めた人」

「なら……ッ!」

「それが貴方の本当に望む事なら、ですわ」

「……!」

 

 美咲は外を見る。

 

「私も今は、どうすれば良いか分かりませんわ。貴方の願いを叶える事もそうですが、私も……共にいたいと願った者を失いましたもの」

「……」

 

 一号は拳を握った。

 

「ですが絶対に、貴方にも裕太さんにも、笑顔でいてもらえるように尽力しますわ。それが貴方のライバルで、裕太さんをお供に選んだ私の責任ですもの」

「美咲……」

「……」

 

 ――裕太さん、貴方をここに連れ戻すまで……私は戦い続けますの。

 

 夜空を見ながら、美咲はそう心で呟く。

 

 

 




次回はヴィーダ回になる予定!

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