浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー 作:門矢心夜
第八十七話
あれから数日が過ぎた。
「……」
美咲は自宅で一人、生徒会の仕事を粛々と進めている。
蒲生達は当然帰ってきておらず、成音が自分の仕事と、プラスアルファで引き受けてくれたが、それでも量が多い。
「全然終わりませんわね、裕太さん」
思わずそう呟く美咲。
しかし、返事が返ってくる様子はない。
それもその筈……。
「裕太さん……」
福沢裕太……正確にはその脳波は今、敵の手にある。
取り返したい気持ちはあるが、敵の正体も分からず、何も出来ずにいた。
「ダメですわ! 私は裕太さんと一号さんを助けると決めたんですもの」
両頬を両手で叩き、顔を上げる。
特訓用に着ている体操着に目を付け、気分転換でランニングに行こうと、美咲は粛々と着替えた。
「今は出来る事をするのですわ……六角美咲!」
そう言い聞かせてから、美咲は部屋を出る。
※※※
丁度六角美咲が家を出たタイミングに、一号が門前にいた。
「一号さん!?」
「……」
明るく挨拶する美咲。
会うのはそこそこ久しぶりだ。何せあの出来事の後すぐに退院し、姿を見せなかったのだから。
勿論連絡などもなく、どこで何をしていたのかも全然分からない。
そんな一号は浮かない顔で問いかける。
「これからどこかに行くのか?」
「ええ。また特訓ですわ」
「そうか」
「一号さんも一緒にどうです?」
一号は少々困惑している。
「俺もか?」
「ええ。何か悩んでいるようにも見えましたし、動けばもしかしたら、気持ちも整理出来ますわよ」
「……そうだな。分かった」
静かに頷くと、美咲が嬉しそうに門を開けて告げる。
「じゃあ決まりですわ! まずは修行場所の公園まで競争しますわよ」
「いきなりか」
「最初から飛ばしていきますわよ!」
「ああ……」
「よーいドン! ですわ!」
少しおかしい掛け声を聞いてから、美咲と共に一号も走り出す。
※※※
公園まで着いてから、ひとまずベンチで一旦休憩。
美咲が一号に飲み物を渡し、隣に座る。
「そういえば、まだあの時の礼を言っておらんな」
「?」
「暴走した俺を止めてくれた事の礼を、まだ言っていないと思ってな」
一号はあの時、捨てられた事への悲しさで胸がいっぱいだった。
だが首を傾げていた美咲が笑い、答える。
「良いんですのよ。私は当然の事をしたまでですわ」
「そうか……」
「それより、退院してから姿を見せませんでしたけど大丈夫でしたの?」
「……何とかな」
退院後、一号はしばらく野宿をして過ごしていた。
福沢裕太の名義で入院していた為、加害者である自分がこれ以上彼に迷惑は掛けられないと、退院する時もまだ身体に痛みが残る状態であった。
美咲の家に向かったのは、礼を言い忘れた事を思い出したからだ。
金も携帯食料もない為、食事もほぼとれていないが問題は……。
――ぐー……。
「どうやら大丈夫じゃなかったみたいですのね」
美咲がそう問いかける。
「す、すまない」
「両親に頼んで、夕飯食べさせて貰えるか聞きますから、今日ばかりは甘えなさいな」
「あ……ああ」
美咲はそう言ってスマホを取り出す。
※※※
結局特訓を中断し、一号は美咲の家で夕食を頂いていた。
「心配したぞ裕太。随分店に顔出さない上に、連絡までしなかったからな」
「えっと……その……」
どうやら福沢裕太は美咲の父に世話になっていたらしく、対応に困ってしまう。
「実は裕太さん、今日まで入院してたんですのよ。退院祝いにうちで食べたいというから連れてきたのですわ」
「そ、そうなのか。大丈夫だったか?」
「あ、ああ」
「うちの娘に見舞いに来てもらえるなんて、お前も幸せ者だな~」
「は、ははは……」
一号は何とか対応に困りながらも、久々にまともな食事を頂いた。
次回予告
初「一号もクールで結構好きだな。まあ、京極先輩のカッコ良さには勝てねえけど」
美咲「貴女が人の顔を語れるとは思いませんけど?」
初「誰がまな板だしばくぞコラ」
美咲「掠ってもないですわよ……」