浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー 作:門矢心夜
食べ終わってから美咲の部屋に行き、一号はベッドの上に座る美咲に告げる。
「実はあの時は言えなかったが、俺が何者なのか分かったんだ」
「本当ですの?」
「ああ。あの人……戸間菫を好きで仕方なかった平凡な青年、らしい」
「なるほど、つまり貴方は元々普通の人げ……え、今戸間菫って言いました?」
美咲が目を丸くして問いかける。
「ああ」
「戸間菫って、私の学校に教師として赴任したあの……」
「そうだ。その人が、俺の生みの親だ」
「やはりそうだったんですのね……あの人は少しばかり不思議な人とは思ってましたが、まさかそんな身近に犯人がいたなんて」
「……」
「菫先生が遥さんの幼馴染や裕太さんを殺してまでしたかった事は、貴方に教えてくれなかったんですの?」
一号は少し黙り込む。
元々の配下である一号でも、そこまでは知らなかった。
彼女が自身の研究で名を立てたいのは態度で分かるが、その為に人を殺す理由がよく分からない。
それに、菫は狩野遥と親友同士だったとも聞いている。
「俺にもそこまでは分からない。俺達を作った理由が研究の為なのは分かるが、何故人の命を奪わなければならないのか。それは分からない」
「そうですのね……ところで、その人間としての記憶はどれくらい思い出せたんですの?」
「それも実は……結構曖昧だ」
曖昧、という表現方法すら怪しいが。
今のところ、自分が元々普通の人間だったという証拠証言は、菫の発言とサックドライバー装着時に一度見えた記憶のみ。
菫の言葉を聞く限り、自分は菫に対し恋愛感情……もしくはそれに近い感情を抱いていたのは明らかだが、自分が本来どんな人間だったのかまでは分からない。
「うーん……なるほどですの。貴方の記憶や、知っている情報に、菫先生の考えを変えさせられる手掛かりがあればと思ったんですがね……」
「まだそこまで……考えてくれたんだな」
「当たり前ですの。例え貴方が諦めたって、私は諦めませんの」
「……」
「それに正体が分かれば、やれる事が一つ思いつきましたわ」
「なんだ?」
ベッドから立ち上がる美咲。
「私が直接説得しに行くんですの」
「……無茶だ! それに俺やお前をまだ殺さずに放置している事にも、何かしら考えがある筈だ」
「全て承知の上ですのよ」
「だが……お前がライダーになったのも、狩野遥があの行動をとったのも、俺の行動が招いた結果。これ以上お前が背負う必要は……」
「違いますわ」
「え……」
美咲は言う。
「蘇我高校との対決を受けたのも、ライダーになる事を決めたのも、全て私の意思ですの。だから私はこれからもこの力を使い続けますわ」
「……」
一号は少しだけ笑顔を見せる。
「俺がこんな事を言うのは、おかしいかも知れない」
「……はい?」
「でも俺は、これに巻き込まれたのがお前で良かったと今なら思える。俺の願いが叶わなくとも、俺はお前が敵であった事を後悔はしない」
一号が少しばかり安心した顔で、美咲にそう告げる。
「一号さん……」
「お前に頼みがある。聞いてくれるか?」
「なんですの?」
本来敵である筈の美咲が自分の夢の為に行動を起こしてくれる事を、一号は心から感謝していた。
そんな美咲に対し、自分が出来る事を少し考えていた。
これがその答え。
「俺が諦めていた願いを、叶えようとしてくれているお前の力になりたい」
「……」
「俺をお前の仲間にしてくれないか?」
「一号さんが、仲間に?」
「ああ」
恐らくは断られるかも知れない。
少し不安だったが、美咲は笑顔で手を差し出す。
「良いに決まってますわ!」
「……」
予想外の答えに、少しばかり呆然とする。
「私も貴方に勝つ事が出来たら、友人同士になりたいと思っていた所ですの。だから貴方の方からそう言ってくれて嬉しいですわ」
「美咲……」
「これからよろしくお願いしますわ」
一号もそれを了承し、美咲の手を握る。
すると、もう一度握り方を変えてから、拳を何度か打ち付けた。
「これが……お前流の握手か?」
少しばかり困惑しながら問いかける。
「私の好きなあるヒーローの真似ですわ」
「そうなのか」
次回予告
初「あの握手なんなんだ?」
美咲「仮面ライダーフォーゼこと、如月弦太朗がよくやる握手ですわよ」
初「ほへー、しかも福士蒼汰か。え、しかも二号これ……吉沢亮か?」
美咲「その通りですわ。仮面ライダーメテオ、朔田流星ですわ!」
初「私吉沢亮割と好きなんだよな。フォーゼ見てこようかな」
美咲「おすすめしますわ!」